11月21日OEK第369回定期公演PH

11月21日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第369回定期公演PH
指揮:シャオチャ・リュウ、メゾソプラノ:谷口睦美
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 金沢初登場マエストロ・シャオチャ・リュウがオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指揮する「アンダルシアの誘惑」と題するコン サート。台湾出身のマエストロ・シャオチャ・リュウとアンダルシアの関係は?これを解明しようと、石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレコンサートは、電車到着の関係で遅くなり、聴けず。残念。
 コンサート1曲目はメンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」。OEK弦楽5部は8-6-4-4-3の対象配置、ピアノが加わる。不気味なイントロで開始。フィンガルの洞窟を訪れたことはないが、雰囲気は出てい る。中間部におけるコンマス・ヤングさん率いるヴァイオリン、及びクラリネット・ソロが綺麗。マエストロ・シャオチャ・リュウはオペラ指揮に長けている所為か、盛り上げるのがうまい。Codaも決まり、 OEK一流オーケストラへの着実な歩みを確信させる演奏となった。
 2曲目は、メゾソプラノ:谷口睦美(黒いドレス)さん登場の、ファリャ:バレー組曲「恋は魔術師」。これが「アンダルシアの誘惑」である。@序奏と情景はスペイン的か、トランペットでのイントロ。金管、木 管楽器によるラテン的な楽章。一転してA洞窟のなかで(夜)は緩楽章。三角帽子にも似た旋律があり、やはりファリャ。B悩ましい愛の歌(Cansion del Amor Dolido)で谷口睦美さんの歌が開始。メゾソプラノだけ にOEKの伴奏が少々大きかった箇所もあったが、メゾソプラノの魅力いっぱいの歌唱。D恐怖の踊りは将にオーケストラで恐怖を演出。G火祭りの踊り(悪霊祓い)は乱舞を表現。一転して間奏曲的H情景を挟み、 再度谷口睦美さんの歌唱Iきつね火の歌。今度はOEKもpで終始し、谷口睦美さんのfが冴える。彼女の「ハバネラ」が聞きたいと思う間もなく悲しきJパントマイム。ここでは、オーボエ、ヤングさんのソロが綺麗。 K恋の戯れの踊りを挟み、鐘の音と共Lフィナーレ(暁の鐘)。短いフィナーレであったが、谷口睦美さん歌唱による妖艶な雰囲気が漂い、「アンダルシアの誘惑」に相応しい「恋は魔術師」に仕上がった。

 休憩を挟んで3曲目はストラヴィンスキー:「弦楽のための協奏曲。別名「バーゼル交響曲」。ストラヴィンスキーの指示では、第1Vn, 第2Vn各8、ヴィオラ6、チェロ6、 バス4らしい。しかし、OEKは、8-6-4-4-3のまま。 OEKのボリューム感は増しているとはいえ、少々減量気味。OEKも弦楽5部10-8-6-6-4程度を目指すべきか。さて、第1楽章Vivaceはテンポの変化が目まぐるしい難曲。OEKはこれを難なく演奏。ヴィオラ・ソロが珍しい。短い第2楽章Arioso. Andantinoは、一転して古典的。OEKの弦が綺麗。Attaccaで続く第3楽章Rondo. Allegroは、奇妙なイントロ。しかし、フィナーレでは高揚感の内に終了。OEKの弦の綺麗さを再確認させる演奏であった。
 4曲目は、OEKによるTVコマーシャルでお馴染みのベートーヴェン:交響曲第8番。第8番と第9番では人が違ったかの感が有るのだが、10年以上もの間をおいた結果らしい。人間は10年間でかくも変わるもの かと思わせる交響曲第8番第1楽章Allegro vivace e con brioは、TVコマーシャル当時よりスピード感は格段上。OEKは進化している。中間部のクラリネット・ソロが綺麗。フィナーレにおけるpの「タンタタタタタン」 も決まる。第2楽章はAllegretto scherzando。スケルツォのリズムが心地良い。第3楽章Tempo di Menuettoは、トランペット、ホルンが綺麗。ホルン・ソロでは少々テンポが遅かったかもしれないが問題なし。 怒涛の第4楽章Allegro vivaceは、将にVivace。フィナーレも堂々と終了。圧巻のベートーヴェンであった。

   アンコールはシューベルト:「ロザムンデ」間奏曲。これも綺麗。さて、今日はメンデルスゾーンに始まり、ファリャ、ストラヴィンスキー、ベートーヴェン、シューベルトと、中華思想を反映したのか、多彩。 私ならストラヴィンスキー、ベートーヴェンを止めて、ラロ:「スペイン交響曲」とする。アンコールはファリァ:バレエ「三角帽子」から「終幕の踊り」とするのだが、そこは若いマエストロ・シャオチャ・リュウ。 今回のプログラムも趣向である。彼の今後に期待しよう。所で、現在私が読んでいる、道元、水野弥穂子校注:『正法眼蔵(三)仏道』岩波文庫では、「世俗にほむるところをきく時は、真賢うることなし。真賢をえんとおもはば、照後 観前の智略あるべし」とある。即ち、「私が褒めても前代の事例を照らし合わせ、冷静に将来の見通しを立てよ」との教え。このレビュー、私は褒め過ぎたかな。色即是空。空即是色。


Last updated on Nov. 21, 2015.
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