9月15日OEK第367回定期公演PH

9月15日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第367回定期公演PH
指揮:井上道義、ピアノ:辻井伸行
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 金沢でもお馴染みになった辻井伸行さん再登場で、オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と共にモーツァルト最後のピアノ協奏曲 第27番を演奏する。指揮はマエストロ井上道義。シュニトケのモーツ・アルト・ア・ラ・ハイドン(ハイドン風モーツアルト)にも興味津々。2015-2016シーズンに期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレコンサートは、モーツァルト:弦楽三重奏のためのデヴェルティメントK.563第1楽章。この曲の第3楽章は本日の2曲目、モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番第3楽章と同じモチーフが用いられて いると言われる。その第1楽章は7,8連符の多い楽章で、「春の憧れ」を弦楽3重奏で演奏するとどうなるのかと思わせる華麗な楽章。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの3重奏は、優雅でもあり、聴き応え ある演奏であった。
 コンサート1曲目はシュニトケ:「モーツ・アルト・ア・ラ・ハイドン」。本来この曲は、"Moz-art for two violins" という無調室内楽らしい。コントラバス、チェロ奏者登場後舞台暗転。不気味な演奏で 開始。その後、第1ヴァイオリン5名、第2ヴァイオリン5名、マエストロ井上道義登場で、明るくなる。曲は十二音技法で、聞き慣れていない人には気の毒な曲想。中間部にモーツァルト:交響曲第40番の 第1主題が挿入される。しかし、ハイドン風では無い。ここで、マストロのハイドン探しのパフォーマンスが開始。けれども、ハイドンの断片は現れない。結局フィナーレで、ハイドン:交響曲45番「告別」 における奏者一人づつの退場シーンが現出。ハイドン風はこれだったと思わせる趣向。曲自体は超難解な一曲であった。
 2曲目は、辻井伸行さん登場のモーツァルト:ピアノ協奏曲第27番。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。コンマスはブレンディスさん。尚、チェロ部門ではカンタさんが後で、大澤、キムさんが前列配 置。世代交代か。さて、第1楽章はAllegroは、やや長いイントロの後辻井伸行さんのピアノが開始。例の「ころころ」と弾くアルペジオ奏法が綺麗。カデンツァでは力強さも加わる。第2楽章Larghettoは、ピア ノで開始。テンポの遅い曲を彼は丁寧に弾く。中間部ではピアノ、ヴァイオリン、フルートの3重奏、これも綺麗。第3楽章Allegroの主題は、後日歌曲「春の憧れ(Sehnsucht nach dem Fruhlinge)」になった。ア インシュタインはこの歌について、「これが最後の春だということを自覚した、諦念の明晰さである」と記したという楽章。辻井伸行さんには最後の春など無関係。テクニック溢れるカデンツァで終了。辻井伸 行さんの熱演であった。アンコール1曲目は、モーツァルト:ピアノソナタ第11番「トルコ行進曲付き」第3楽章。2曲目はショパン:ノクターン第20番嬰ハ短調(遺作)。2曲目はスペイン的で、誰の曲か と思っていたらショパン。アンコールも最高の出来であった。

 休憩を挟んで3曲目は、モーツァルト:交響曲第40番。第1楽章Molto allegbroは、出だしのテンポがやや遅かった。これを最後まで引きずったのだが、演奏自体は上品で問題なし。第2楽章Andanteは、OEK の音量が反響板を天井まで上げても大丈夫を再認識。第3楽章Menuetto. Allegrettoは、力強さを感じさせる演奏。ホルンも重厚さを演出。第4楽章Allegro assaiは、スピード感溢れるイントロ。中間部のクラリ ネット・ソロは流麗。マエストロ井上道義の踊りも加わり、有名な交響曲は第1楽章出だしのテンポを除いて、華麗に終了した。

   時間の所為かアンコールは無し。さて、愈々OEK2015-2016シーズンが開始された。今シーズンのフィルハーモニー・シリーズの特徴は、シューマンの交響曲全曲が目玉か。しかし、楽劇もしくはオラトリオの声楽 を含むプログラムが無い。演奏会形式の歌劇でも結構、是非特別プログラムを追加して欲しいものである。


Last updated on Sep. 15, 2015.
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