7月24日OEK第366回定期公演PH

7月24日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第366回定期公演PH
指揮:広上淳一、ピアノ:小山実稚恵
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 金沢でもお馴染みになったマエストロ広上淳一がオ−ケストラ・アンサンブル金沢を指揮する、「スカンジナビアの旋律」と題する コンサート。グリーグ、シベリウス、およびラーションという知らない作曲家の曲がラインアップ。オーロラが見られるフィンランドを音楽で感じようと、石 川県立音楽堂へ出掛けた。

 ロビー・コンサートは、ヴァイオリンとチェロによるヴィヴァルディ:協奏曲集「ラ・ストラヴァガンツア」より。第10番の第2楽章に似ているが、詳細は不明。素敵なDuoであった。
 コンサート1曲目は現代スウェーデンの作曲家ラース=エリック・ラーション:「田園組曲」。第1曲は「序曲」。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。透明感溢れるイントロに続き、現代作曲家らしいアップ テンポ。第2曲「ロマンス」は、マエストロ広上淳一が言うように単独でも演奏されるという濃厚なマーラーを思わせる曲想。コントラバスによるppが印象的。第3曲は「スケルツォ」。フルートによるイントロ からベートーベン的スケルツオ。マエストロの的確で、時に力強い指揮により終了。
 2曲目は、緑色のドレスがシックな小山実稚恵さんのピアノによる、ノルウェイの生んだ偉大な作曲家エドアルト・グリーグ:ピア協奏曲。第1楽章はAllegro molto moderato-Cadenzo-Tempo T。OEKにはホ ルン2人、トロンボーン3人加わる。劇的な序奏部は、「ノルウェイの代表的な風景として知られるフィヨルドを切って落とす雪崩の轟き」のイメージ。これを小山実稚恵さんは力強く、しかも優雅に熟す。プ ログラムに挿入されていた小冊子「小山実稚恵デビュー30周年記念」に記載されている「彼女が力任せに弾いているのでは、もちろんない」が当てはまる演奏。「雪崩の轟き」であればもっと力強くても良か ったかもしれない。さて、中間部の金管楽器の咆哮も決まり、ピアノが旋律の美しさを誇る。カデンツアの後半に第2主題が戻り、第1主題で壮大にフィナーレ。OEKの重厚さにピアノの華麗さが光る楽章であっ た。第2楽章Adagioは、回想するかの如きイントロ。ホルンとピアノのDuoが綺麗。Attacca で続く第3楽章Allegro moderato molto e marcato-Andante maestosoは、軽快な旋律。中間部のフルート・ソロが綺麗。Codaでの小山実稚恵さんによる第1楽章の回想が印象的であり、フィナーレは荘厳・華麗に 終了した。アンコールは、ショパン:「マズルカ」45番。枯れた晩年の趣を連想させる、リズムが難しそうな曲。洒脱な演奏であった。

 休憩を挟んで3曲目は、フィンランドが生んだ偉大なる作曲家ジャン・シベリウス「トゥオネラの白鳥」。トゥオネラは「フィンランド神話の黄泉の国であり、黒い水をたたえ、急流をともなう大河に とりま かれ、水の上には トゥオネラの白鳥が 気高く浮かび もの悲しい声で歌っている」処らしい。弦のユニゾンにカンタさんのチェロ・ソロが加わり綺麗。続いてオ−ボエが白鳥の鳴き声を表現。これも綺麗。 カンタさんのチェロが静かにフィナーレを告げ、余韻を残し終了。北欧的情緒溢れる一品であった。
 4曲目はシベリウス:組曲「白鳥姫」。私が持っているCDでは4曲抜粋である。しかし、今回は全曲。第1曲は「孔雀」。孔雀が羽根をきらきらさせて、ちょこちょこ歩いている様子。カスタネットも加わる。第2曲 「ハープ」は弦のピッチカートに続き、文字通りハープが華麗に歌う。第3曲「薔薇の乙女たち」は、「薔薇を持った乙女たち」であり、薔薇の感じをそれとなく感じる趣向。第4曲は「聴け、駒鳥が歌う」。 駒鳥はフルートか、ハープか。弦も明るく歌う。第5曲は「王子は一人」。王子はどうしようかと悩んでいる情景か。第6曲は「白鳥姫と王子」。クラリネットが効果的。フィナーレのホルンも的確。第7曲は 「賞賛の歌」。文字通り「ほめたたえよ」との重厚なCoral。コーダでは鐘もなり、壮大に終了。OEKが得意とするジャンルだけに、超最高。これは、マエストロ広上淳一が所謂「シベ2」を選択せず、組曲「白雪姫」 を選んだのが的中したコンサートであったといえる。尚、「白鳥姫」あらすじは長いので、リンクを参照して欲しい。

 アンコールはグリーグ:「過ぎにし春」。フィナーレのpppが印象的であった。さて、本日の「白鳥姫」で2014-15シーズンが終了した訳だが、私が会員であるフィルハモニー・シリーズ定期公演でのBest3を 発表したい(演奏会順)。○クリスチャン・ヤルビー指揮、グリーグ:劇音楽「ペール・ギュント」。○井上道義指揮、シューベルト:交響曲第8(9)番「グレート」。それに「とり」を飾った本日の○広上淳一 指揮、シベリウス:組曲「白鳥姫」である。2015-16シーズンにおけるOEKの更なる熱演に期待したい。


Last updated on Jul. 24, 2015.
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