6月22日OEK第364回定期公演PH

6月22日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第364回定期公演PH
指揮:井上道義、ヴァイオリン:五嶋みどり
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢五嶋みどりさんによるシューマン:ヴァイオリン協奏曲ニ短調。ウィキペディアによればシューマンの 自筆譜のままでは演奏不可能とのヨアヒムの指摘で演奏されなかった協奏曲。修正版としてクーレンカンプ版、ユーディ・メニューイン版があるらしい。どちらにしても余り聞けない曲。興味津々で石川県立音楽堂へ出掛けた。

 ロビー・コンサートはブラームス:クラリネット五重奏曲第3,4楽章。クラリネットと第1ヴァイオリの掛け合い、ヴィオラ、チェロ・ソロもあり、中々の熱演であった。
 コンサート1曲目はロッシーニ:歌劇「シンデレラ」序曲。プログラムにもある通りシンデレラはイタリア語では、"Cenerentola(チェネレントラ)"。では、何故日本では「シンデレラ」というのであろうか。 どうも"cinder(燃え殻)”と"Ella(エラ、女性名)"を合成した英語"Cinderella(シンデレラ)"に由来するようだ。それはさて置き、OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。トロンボーンが一人加わる。舞台上部の反響 板を上げ、パイプオルガン全容顕示の舞台での演奏。OEKの音量が増大している証拠である。いかにもオペラの幕開けを告げるかの如きSinfoniaは、中間部では舞踏会、フィナーレはマエストロ井上道義もノリ ノリで、華麗な序曲に仕上がった。
 2曲目は、五嶋みどりさん登場のシューマン:ヴァイオリン協奏曲。五嶋みどりさんは深緑のシックな衣装で登場。第1楽章はIn kraftigem nicht zu schnellem tempo。OEKのイントロの後、五嶋みどりさんの ヴァイオリンは艶やかに開始。彼女のヴァイオリンは、グァルネリ・デル・ジェス「エクス・フーベルマン」とのこと。ストラディヴァリウスに比して音は柔らかい。第2楽章Langsamの圧巻は、カンタさんと五 嶋みどりさんによるDuo。これは綺麗であった。曲想も第1楽章の運命を予告するかのような音楽とは異なり、生きる喜びに満ち溢れた楽章。シューマンの心理は揺れ動いていたようだ。attaccaで続く第3楽章 Lebhaft、doch nicht schnellは、生き生きした曲想。ヴァイオリンとしては要テクニック箇所も五嶋みどりさんは難なく演奏。テクニシャンでもある。壮大なフィナーレで終了。オーケストラがffの為五嶋みど りさんのヴァイオリンが聞こえない箇所もあった。しかし、綺麗で、しかもテクニック溢れる演奏は世界の五嶋みどり面目躍如であったと言える。

 休憩を挟んで3曲目は、ブラームス:交響曲第2番。OEKは第2ヴァイオリン8(多分)、ヴィオラ6(多分)、チェロ6、コントラバス4、ホルン4、トロンボーン3、チューバ1という交響楽団並みに衣替え。第1楽 章Allegro non troppoは、ホルンで開始。難なく進行。続くffでの演奏は迫力満点。OEKの第1回演奏会を知る人にとっては将に隔世の感。第2楽章Adagio non troppoは、チェロのユニゾンで開始。カンタさん率 いるチェロは綺麗だ。コントラバス4人は迫力ある低音を響かせる。第3楽章Allegretto graziosoは、舞曲風。オーボエ・ソロも綺麗。中間部では少々違和感もあったが、ほぼ合格点。第4楽章Allegro con spirito は、ffとpの交互配置が効果的。フィナーレの迫力ある音量は雄大。Orchestre Symphonique de Kanazawa誕生の瞬間であった。ただ、コーダでのトランペットはもっと壮大に、即ち起立する等でホール全域に 響かせる演奏をすべきであった。残念。

 時間の所為かアンコールは無し。さて、Symphonic Orchestra of Kanazawaは良かったのだが、大人数になると少々の乱れは発生する。これ位の陣容を常任奏者でまかなえるようなオーケストラに格上げし、常時 意思の疎通を図ることが必要だ。Orchestra Ensemble KanazawaからOrchestre Symphoniche de Kanazawaへ脱皮し、演奏会では必ず室内楽を含むプログラムグ造りをした方が良いと思う。そろそろ、決断の時であ る。


Last updated on Jun. 22, 2015.
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