5月26日歌劇「フィガロの結婚〜庭師は見た〜」、指揮:井上道義、演出:野田秀樹
ソプラノ:テオドラ・ゲオルギュー、小林 沙羅、
カウンターテナー:マルテン・エンゲルチェズ、
バリトン:ナターレ・デ・カロリス、大山大輔、庭師:廣川三憲
合唱:金沢フィガロ・クワイヤー、管弦楽:オーケストラ・アンサンブル金沢
金沢歌劇座

酢谷琢磨

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フィガロの結
婚・プログラム表紙
 歌劇「フィガロの結婚」は、オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)で一度観たような記憶がある。しかし、 今回は野田秀樹さんの新演出である。これに期待して金沢歌劇座へ出掛けた。

 序曲の前に庭師登場。オペラ歌手ではない廣川三憲さんが剪定作業を開始。マエストロ井上道義入場後序曲が始まる。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2だったようで、歌劇座のオーケストラ・ ピットはまだ余裕があった。OEKの切れ味鋭い序曲後、第1幕。小林沙羅さんのスザンナと大山大輔さんのフィガロによるDuettino。続いて、カウンターテナーのケルビーノ役マルテン・エン ゲルチェズさんによるアリア"Non so piu cosa son, cosa faccio...(自分がどんな人間で、何をどうすればよいのかわからない...)"。フィナーレは、フィガロの有名なアリア"Non piu andrai, farfallone amoroso,(もう飛び回ることも出来ないぞ、かわいい蝶々よ)"。尚、最初は日本語の台詞であったが、伯爵役ナターレ・デ・カロリスさん登場後イタリア語となる。音楽堂と同じ、 幕は降りずに第2幕。スザンナのアリア"Venite inginocchiatevi(おいで...お膝をまげて...)"が秀逸。尚、第2幕では野田演出による歌舞伎の「ツケ」が登場。即ち、日本人向け脚色と いうことになる。第2幕で一旦休憩だが、幕が降りないため「休憩」と書いた巻物が現れる。学生席の学生諸君も大喜びであった。

 25分の休憩を挟んで、第3幕。伯爵夫人役テオドラ・ゲオルギューさんが切切と歌うアリア"Dove sono i bei momenti(どこにあるかしら、甘くそして恋に生きた楽しかった日々は)"は 白眉。続く、スザンナと伯爵夫人のDuettinoも好演。第4幕は、伯爵がスザンナに変装した伯爵夫人をあずまやへ誘い、フィガロは伯爵夫人に変装したスザンナに情熱的愛を告白する。フ ィガロの行為は知ってのことであると了承して貰う。だが、妻の不貞を邪推した伯爵は、本物の伯爵夫人が正体を表したことにより、自分の失態に気付き許しを請い、大団円。3時間半の 歌劇「フィガロの結婚〜庭師は見た〜」は終了した。

 総括すると、舞台照明が明るい時は字幕が読み難かったこと、及びフィナーレの筋書きをプログラムに記載しなかったため少々内容が分かり難いという問題点もあった。しかし、モーツ ァルトが観たらびっくりするであろう野田演出。保守拘泥が良い訳ではない。革新が現れてこその芸術。革新の先駆者はベートーヴェンだったことが思い起こされる歌劇であった。Bravi。


Last updated on May 26, 2015.
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