3月20日OEK第363回定期公演PH

3月20日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第363回定期公演PH
指揮:井上道義、ピアノ:仲道郁代
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢と仲道郁代さんによるベートーベン:ピアノ協奏曲第4番もさることながら、アルヴォ・ペルトによ る「フラトレス」も興味津々。これ等に期待すると共に、北陸新幹線開業に沸く金沢駅の見学も兼ねて石川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートはヴァイオリンとチェロによるヴィヴァルディ。大澤さんの解説によると、「・・・3番のアリア第2楽章」と聞こえたが、詳細は不明。チェロの通奏低音にヴァイオリンによる「四季」 にも似たメロディーが重畳。ヴィヴァルディらしいトリルも効果的で、風雅であった。
 コンサート1曲目はアルヴォ・ペルト:「フラトレス」。この曲は、ザルツブルグ音楽祭の委嘱で、ギドン・クレーメルとエーレナ・クレーメルによって演奏されたそうだ。ベルリン・フィル21 名のチェリストのための編曲版もあるらしく、弦楽器と打楽器による「フラトレス」はプレミエらしい。弦楽器のみで、ソリストはミストレスのヤングさん。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-3の通常配置。イントロのヴ ァイオリン・ソロはプログラムでは、「永遠を感じさせるゆるやかな時の流れ」と有るが、「秋の落ち葉舞う静寂」とも聞こえる不思議なメロディ。大太鼓と鈴の音も舞台裏から聞こえ、これに会話するかの如きヴ ァイオリン・ソロは、クライマックス後フェ-ドアウトし、静かに終了。最後のヴァイオリンによる高音の余韻がとても綺麗であった。尚、「フラトレス」はギリシア語φρατρια(部族、氏族)由来らしく、 ウィキペディアによれば「親族、兄弟、同士」を意味するとのこと。
 2曲目は仲道郁代さんのピアノによるベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番。第1楽章Allegro moderaroは、ピアノが主題を奏でた後一旦休止し、対象配置に変わったOEKの力強い演奏が始まる。室内オーケスト ラと思えぬボリュームに感心。第2楽章Andante con motoは、ピアノがアンダンテで単調なメロディを歌い、OEKは力強くこれに呼応する。ppからattaccaで明るい第3楽章Rondo. Vivaceが開始。ベートーヴェンは 協奏曲の繊細さのみを提示するのではなく、力強さも意図したことが良く分かる楽章。マエストロ井上道義の踊りも加わり、壮大に盛り上がり、フィナーレ。仲道郁代さんとOEKの熱演であった。

 休憩を挟んで3曲目は、シューベルト:交響曲第9番「グレート」。第1楽章Andante - Allegro ma non troppoは、イントロがホルン・ソロ。これが決まって、ホッ。尚、OEKの楽器配置は舞台向かって右手に金 管群。そこで、コントラバスは舞台正面後ろへ移動。この為、コントラバスの低音が更に響き、コントラバス3人とは思えぬボリューム感を達成。第2楽章はAndante con moto。オーボエ・ソロがいつも通り綺麗。 しかも、コントラバスとの対話の妙も加わり、OEKの切れ味鋭い、しかも重量感に満ちた演奏は賞賛に値する。昔を知っている人には将に隔世の感。第3楽章Scherzo. Allegro voivace - Trioは、ベートーヴェン的スケ ルツォ。但し、中間部はプログラムにある「歌心あふれた可憐なトリオ」。OEKの弦も綺麗であった。第4楽章Allegro vivaceは、ホルンで始まるメロディが2度繰り返され、一旦pに落とし、Codaで念を押し、終了。 「グレート」であった。

 シューベルトの「グレート」終了が9時10分過ぎであったためであろう、アンコールは無し。残念。尚、今夜の金沢市は北陸新幹線金沢開業記念歌舞伎『怪談乳房榎』初日、及びツエーゲン金沢対横浜FC戦と催し物 が重なった。それでも、音楽堂は9分の入りだったようで、金沢市民の文武に対する関心度を確認できた一夜であった。重なっても大丈夫らしい。目出度し、目出度し。


Last updated on Mar. 20, 2015.
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