2月15日OEK第361回定期公演PH

2月15日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第361回定期公演PH劇音楽「ペール・ギュント」
指揮:クリスチャン・ヤルヴィ、ソプラノ:立川清子、ソプラノT:吉田和夏
ソプラノU:柴田紗貴子、ソプラノV:林ようこ、 メゾ・ソプラノ:相田痲純、テノール:高橋洋介
バリトン:村松恒夫、井口達、語り:風季一成、合唱:オーケストラ・アンンサンブル金沢合唱団
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「ソルヴェイグの歌」で有名なエドヴァルド・グリーク:劇音楽『ペール・ギュント』。普通には組曲版の演奏になるのだが、今回はマエストロ・クリスチャン・ヤルヴィがオ−ケストラ・アンサンブル金沢を指揮して、全曲版を披露する。これは、聞き逃せない。日曜日の午後いそいそと石川県立音楽堂へ出 掛けた。

   ロビー・コンサートはホルン四重奏による、メンデルスゾーン:「森にて」、ウエーバー:「狩人の合唱」、モーツァルト:「アベベルム・コルプス」、ターナー:ホルン四重奏曲第3楽章。難しい楽器で、綺 麗な四重奏。コンサートへの期待が高まる。
 劇音楽『ペール・ギュント』第1幕1. 結婚式の宴の場(前奏曲)は、お馴染みの「朝の情景」、「ソルヴェイグの歌」を鏤めた序曲。OEKの弦楽5部は、8-6-4-4-3の通常配置。マエストロ・クリスチャン・ヤル ヴィの指揮は快活、しかも優雅である。2. 北海沿岸のハリゲン諸島で、風季一成さんの語りが始まる。勿論、日本語での語りであり、分かり易い語り。
ペール・ギュントの乱行を描いた第2幕フィナーレでは、パイプ・オルガンも加わり、圧倒的。

 休憩を挟んで第3幕12. オーゼの死(前奏曲)は、ペール・ギュントの母オーゼの死を悲しみの極地で描く。13. 朝の情景は、フルートによる綺麗な情景描写。続いて、ペール・ギュントの放浪譚。15. アラブ人 の踊り、16.アニトラの踊りと続く。アニトラの踊りでは、メゾ・ソプラノの相田麻純さんと合唱団の好演。19. ソルヴェイグの歌では、ペール・ギュントの帰りを待つソプラノ:立川清子さんによるソルヴェイ グが切々と歌う。組曲版では、「ペールを信じて待ち続けたソルヴェイグの歌を聞きながら、ペールは心安らいで死んでいく」とあり、これでフィナーレ。所が、全曲版では、これからが面白いし、綺麗。即ち、 老いたペール・ギュントはソルヴェイグの歌を避け、森へ行く。24. 夜のシーンではテノール:高橋洋介さん演じるペール・ギュントは「死にたくない」と歌う。しかし、26. ソルヴェィグの子守唄では老いたペ ール・ギュントに、ソルヴェイグは「眠れ("Schlaf")、我が愛しい坊や」と諭す。ドイツ語では"Schlafen"が眠るであるから、ノルウェー語も似ているのだろう。舞台裏手に回った合唱団のベルベット・ハーモニー に送られ、ペール・ギュントは安らかな眠りにつく。乱行そして死という圧巻の劇音楽は終了した。やはり、組曲版より全曲版が面白い。尚、昨日のNHK「らららクラシック」では、プロコフィエフは「ロメオとジ ュリエット」で、組曲版を先行させたとの話が紹介されていた。今回の劇音楽『ペール・ギュント』でも同様、組曲版が先行したのかもしれない。何れにしても、新しい発見であった。

 劇音楽『ペール・ギュント』全曲版は、勿論金沢プレミエである。マエストロ・クリスチャン・ヤルヴィに敬意を表すると共に、OEKには金沢プレミエはいうに及ばず日本プレミエのプログラ ム取り入れに期待したい。


Last updated on Feb. 15, 2015.
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