10月10日OEK第354回定期公演PH

10月30日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第357回定期公演PH
指揮:サー・ネヴィル・マリナー、フルート:工藤重典
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

English
スマホ版へ

 祝90歳!巨匠マリナーが放つ、超ど級のモーツァルト。即ち、「オール・モーツァルト・プログラム」である。オ−ケ ストラ・アンサンブル金沢にどのような解釈のモーツァルトを演奏させるのか。これに期待して石 川県立音楽堂へ出掛けた。

   ロビー・コンサートはコントラバス2人による、グノ−:「小さなスケルツォ」、グリーン・スリーブズ、バッハ:「主よ、人の望みの喜びよ」、聞いたことがあるが曲名不明曲、グリーク:「ペールギュ ント〜山の魔王の宮殿にて」の4曲。コントラバス奏者2人の熱演であり、特にバッハ:「主よ、人の望みの喜びよ」の3連符をコントラバスで演奏するのは大変。彼らの演奏には感心した次第であった。
 コンサート1曲目は、モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」。第1楽章Allegro con spiritoは力強く始まる。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。90才のサー・ネヴィル・マリナーは細かな手の動き でオーケストラを掌握。ピリオド奏法ではなく、オーソドックスなモーツァルトである。中間部ではヤングさん率いる第1ヴァイオリンの颯爽たる演奏が華を添える。第2楽章(Andante)は、イントロ の第1ヴァイオリンが綺麗。尚、客席からカメラのフラッシュ。これは止めて欲しい。ffからpへの「ため」は急降下ではなく、穏やかな「ため」。マリナー効果か。短い第3楽章Menuettoは、間の取り方が絶妙。 第4楽章Finale. Prestoは、迫力が加わる。中間部ではオーボエが存在感を示し、フィナーレでは一旦ffに高揚し、最後はpで終曲。OEKはモーツァルトが得意なのだが、マリナー効果で更に優雅に、しかも爽 やで、Bestな演奏となった。
 2曲目は、モーツァルト:フルート協奏曲。第1楽章はAllegro maesoso。OEKの管楽器はホルン、オーボエ、フルートのみ。イントロの後、工藤重典さんのフルートが開始。彼の最初の立ち姿は両足をそろ えた端正な姿。尚、後半には興に乗り足幅を開いて、安定を意識した姿勢に変わる。さて、工藤さんは四連音符を鮮やかに演奏。余り派手ではないカデンツァも好演。第2楽章はAdagio ma non troppo。工藤さ んのAdagioソロも中々良い。この楽章終わりに短いカデンツァがあり、ここで工藤さんは速い、テクニックを要する演奏を披露。緩・急どちらも秀。Attacca気味の第3楽章はRondo. Te mpo di menuetto。8連符、12連符もあり、色彩豊か。工藤さんの熱演であった。アンコールは、ドヴッシー:「パンの笛」。洒脱感溢れるフランス音楽。これも素敵であった。フィナーレでは、工藤さんが演奏を 休止しても余韻がホールを充満。音楽堂の音響の素晴らしさを再認識した瞬間でもあった。

 休憩を挟んで3曲目は、モーツァルト:交響曲第39番。第1楽章はAdagio - Allegro。イントロはティンパニーによる開始。この曲はオーボエが加わらず、最後列にクラリネット、ファゴット、トランペットと 並ぶ。Allegroに変わると、第1ヴァイオリンが冴え渡る。コンサート・ミストレスがストラディヴァリを奏するオーケストラはやはり違う。第2楽章Andante con motoは、艶やかにして、流麗。弦楽による和音 が綺麗。第3楽章はMenuetto. Allegretto(Allegroよりもやや遅く)。中間部ではクラリネット・ソロ。オーボエより音が柔らかい。モーツァルトは有名なクラリネット協奏曲を書いている如く、彼はオーボエより クラリネット好みなのだ。第4楽章Finale. Allegroは、Presto気味。第1楽章の対比か、ティンパニーが入る。2度の一旦停止も上手く決まり、穏やかに終曲。モーツァルトの曲は、単純なメロディーを効果 的にオーケストレーションしていることが良く分かる。これも好演であった。

 アンコールは、モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲。最後に序曲も趣向。 さて、総括すると綺麗さに加えて、若きモーツァルトの颯爽たる人生観を感じさせるサー・ネヴィル・マリナー指揮の演奏会 であったといえる。巨匠の指揮で更に進化しつつあるOEKには、ザルツブルグのフェスティバルに招待されるよう更なる飛躍に期待したい。


Last updated on Oct. 30, 2014.
2014年コンサート・レビューへ