10月10日OEK第354回定期公演PH

10月10日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第356回定期公演PH
指揮:アロンドラ・デ・ラ・パーラ、クラリネット:チャールズ・ナイディック
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ミストレス・アロンドラ・デ・ラ・パーラとチャールズ・ナイディックさんによる「情熱のラテン舞曲」と題するコンサート。聞いたことのない曲が多く、興味津々。 オ−ケストラ・アンサンブル金沢は、現代曲には定評がある。これに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

   プレ・コンサート1曲目は、ピアソラ:「リベルタンゴ」弦楽四重奏曲版。バンドネオンが入らないのは寂しいが、弦楽四重奏曲版も結構いける。2曲目は、 ガーシュイン:「アイ・ゴット・リズム」弦楽四重奏曲版。チェロの大澤さんは最後までピッチカートでの演奏。リズムが印象的。
 コンサート1曲目は、ファリヤ:バレエ音楽『三角帽子』。第1曲「序奏(午後)」はティンパニーで快活に開始。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。ハープも加わ る。ミストレス・アロンドラ・デ・ラ・パーラは身長が高く、腕も長い指揮者。キリットして明確な指揮である。ファンダンゴのリズムも心地よく、第2曲は「 粉屋の女房の踊り」。ファゴットが大活躍。Codaではソロも有る。第3曲は「ぶどう」。第4曲は「近所の人たちの踊り」。トランペットが開始を告げる。第5曲「粉 屋の(亭主の)踊り」を挟み、第6曲「終幕の踊り」。終幕に相応しく金管楽器が華やかさを演出。銅鑼も入って堂々と終了した。
 2曲目は、コープランド:クラリネット協奏曲。金属部分が金色のクラリネットを持ってチャールズ・ナイディックさんが登場。第1部はAdagioか。弦の通奏低音で 開始。チャールズ・ナイディックさんがこれに協奏して静かに演奏。中間部での第1ヴァイオリンとのDuoが綺麗。第1部終了前のカデンツァで、彼は鮮やかなテクニック を披露。低音から高音への移行が早く、的確で素晴らしい。第2部はAndanteか、活気が出てくる。中間部でピアノも加わり、コントラバスの弓で弦を叩く音が効果的。やや ジャズ的になりPrestoで終了。彼によるモーツアルト:クラリネット協奏曲を聞きたい気もしたが、今宵はラテン。我慢しよう。アンコールは、ナイディック:「ト レノス(Gk. Threnos、哀歌)」。武満徹的なペーソス溢れる曲。彼の緩急どちらも上手い演奏を聞くことができた。

 休憩を挟んで3曲目は、マルケス:「ダンソン(キューバに起った舞踊)」。哀愁漂うイントロからジャズっぽいupテンポ。一転してピアノとヤングさんの Duo。これに加えてパーカッションがアクセント。やがて、トランペットが咆哮し、タン・タタンタのリズムで盛大に終了。徐々に会場は盛り上がってくる。続いて、 ピアソラ:「タンガーゾ」。Tangazoとはスワヒリ語で、英訳するとAdvertisemennt(広告)らしい。チェロとコントラバスのユニゾンで開始。ピアソラの曲と思えな い抒情的。しかし、ピアノが入ると一転してピアソラ的フルートと弦楽のDuo。中間部長いホルン・ソロ。続いて、オーボエ、クラリネット・ソロ。コントラバスの胴を叩く音、 木琴が華を添える。最初のチェロとコントラバスのユニゾンに戻りppで終了。力作であった。
 4曲目はヒナステラ:「エスタンシア【Estancia(西), 住居、牧場】」。第1曲「農園で働く人々」は、5人に増えたホルンとパーカッションによる重量感溢れ る演奏。第2曲は「小麦の踊り」。pで終始し、フルートが小麦を表現。ヤングさんソロも綺麗。第3曲は、ホルンによるイントロで始まる「大牧場の牛追い人」。圧 巻の第4曲は「終曲の踊り(マランボ)」。Malamboとは、アルゼンチン版タップダンスらしい。5, 6人であったか、パーカッションが壮大に盛り上げ、更にトランペット、 ホルンも加わりウインドオーケストラ並みの迫力。OEK設立以来の熱演であった。

 アンコールは、前曲であるヒナステラ:「エスタンシア」組曲Op. 8aより「終曲の踊り(マランボ)」。今度はミストレス・アロンドラ・デ・ラ・パーラが聴衆に起 立を促し、一緒に踊れとのこと。金沢の聴衆も「のりのり」。即ち、興奮の坩堝と化し大団円。こういうコンサートもあることを新たに認識した瞬間であった。帰り 道、興奮を鎮めるかの如き、もてなしドーム上の十六夜の月であった。


Last updated on Oct. 10, 2014.
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