7月25日OEK第353回定期公演PH

7月25日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第353回定期公演PH
指揮:秋山和慶、ヴァイオリン:郷古廉
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「管・弦・打」と題するコンサート。井上道義マエストロ健康上の理由により秋山和慶マエストロがオ−ケストラ・アンサンブル金沢を指揮する。ブラームスのヴァイオリン協奏曲もさることながら、ストラヴィンスキー、バルトークにも期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートは、バルトーク:44の2重奏曲とのこと。トランシルヴァニア地方の舞曲で、短いが、ハンガリー的情緒溢れる曲。これをヴァイオリン2人のduoで演奏。素敵なプレコンサートであった。
 コンサート1曲目は、ストラヴィンスキー:管楽器のための八重奏曲。フルート(1)、クラリネット(1)(B♭管、フィナーレでA管に持ち替え)、ファゴット(2)、トロンボーン(2)、トランペット(2)構成。 第1楽章Sinfornia lento - allegro・moderatoは、静かな出だし。従って、秋山和慶マエストロの動きは小さいが、的確。尚、曲が進むに連れて彼の指揮ぶりもだんだん大きくなっていく。さて、曲は 中間部に行進曲風を含み終了。第2楽章はAndantino。舞曲で、明るい変奏が続く。第3楽章Finale Tempo・giustoは、フルートが存在感を示し、高揚感の後コーダ。静かに終了。短い曲で有り、ウィキ ペディアによれば、「ストラヴィンスキーが夢の中でこの編成による演奏を聴いたことに由来するという」この曲は、難解な哲学の様。勿論、奏者もストラヴィンスキーの意図に迫ろうという意欲を感じ させる演奏であった。
 2曲目は、郷古廉(Goko Sunao)さん登場のブラームス:ヴァイオリン協奏曲。第1楽章Allegro non troppoは、OEKによる「のどかな牧歌調の第1主題」で始まった。OEKの弦楽は8-6-4-4-2で、チェロとヴィオラの位 置を交替させた通常配置。さて、イントロの後、郷古廉さんのヴァイオリンが演奏開始。例の、最初は批判があった力感あふれる箇所を彼は力強く演奏。中間部は一転して抒情溢れる曲想。彼のヴァイオリン は中々良いと思い、読み忘れていた彼のプロフィルを確認すると、彼は「ストラディヴァリ」を使用していたのだ。曲後の休憩時友人と「ヴァイオリンが良くても、わしが弾けばあんなに綺麗には弾け ない」と語りあった。即ち、彼は名器を充分弾き熟していた訳だ。楽章終了前のカデンツアも難曲。しかし、彼は力感あふれる演奏を披露。第2楽章はAdagio。イントロのオーボエによる主題が印象的。中 間部はプログラムによる将に夢幻境であった。第3楽章Allegro giocoso, ma non troppo vivace - Poco piu prestoは、一転して、聞いたことのある速いテンポの楽章。彼の「ストラディヴァリ」は衰 えを知らない。変奏の後、第1楽章のフィナーレより慎ましく終了。 郷古廉さんのヴァイオリンとOEKの演奏との歴史的一頁となった。アンコールは、バルトーク:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2楽章フ ーガとのこと。難曲を衒いもなく演奏。これも秀逸であった。

 休憩を挟んで3曲目は、バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽。OEKの弦楽は4-4-4-4-2に見えたが、定かではない。弦楽部門、チェレスタ、ハープ、及び打楽器奏者3名という布陣。打 楽器が主役の曲である。第1楽章Andante tranquilloは、プログラムの通り「不思議な静寂」。クレッシェンドの後ppで終了。第2楽章Allegroは、愈々チェレスタ、打楽器が登場。中間部にはチェロ、コ ントラバスのピッチカートとチェレスタとのTrioが綺麗。第2楽章終了後ハプニング発生。第2ヴァイオリン奏者の弦が切れたらしい。一旦舞台裏に退場し、弦を張替、チュニングの音が聞こえる。秋山和慶マエ ストロと聴衆は静かに待つ。3,4分であったか外人の奏者は日本人的一礼をして登場。会場からは朗笑が漏れる。さて、第3楽章はAdagio。これも不思議なイントロ。途中入った柝の音が効果的。第4楽章は Allegro molto。舞曲であり、中間部は重厚。コーダ前には、コントラバスの弓で弦を叩く音、ラベルの鞭の音を連想させるに演奏の後、高揚し、分かり易く終了。交響曲と違い、しいて言うならば故岩城宏之 マエストロ好みの選曲は却って新鮮。これに打楽器奏者を始めとするOEKが華を添え、会場ではスタンディング・オーベーションもあり、圧巻のバルトークであった。

 アンコールは、演奏終了が21:00を過ぎた所為であろう、無し。さて、 井上道義マエストロ健康上の理由により登場した秋山和慶マエスロ。短期間であったろうが、立派な演奏を引き出してくれたと思う。 秋山和慶マエスロに敬意を表すると共に、この演奏プログラムを企画したと思われる井上道義マエストロの早期回復を祈りたい。


Last updated on Jul. 25, 2014.
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