4月11日OEK第349回定期公演PH

4月11日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第349回定期公演PH
指揮:フィリップ・ベルノルト、ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番と第2番という珍しいプログラム。ドイツ音楽の巨匠ゲルハルト・オピッツさんがオ−ケストラ・アンサンブル 金沢と協奏曲を披露する。これに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートはベートーヴェン:弦楽三重奏曲第2番第1楽章。三重奏曲は珍しいが、OEKメンバー:ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの質の高さを示す中々の演奏。本日の演奏会の劈 頭を華やかに飾った。
 コンサート1曲目は、ベートーヴェン:バレエ音楽「騎士バレエ」。作品番号はWo01。不思議な番号だが、詳細は不明。曲に戻ろう。短い8曲構成。『行進曲』から始まり、『終曲』まで。4曲 目の『愛の歌≪ロマンス≫』が綺麗で、何度も再現される。作曲者はベートーヴェンとのことだが、私には、どうも違うように思われた。OEKは8-6-4-4-2の対象配置で、フィリップ・ベルノルト・ マエストロは、きりっとした指揮。
 2曲目はベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番。ゲルハルト・オピッツさんの登場である。第1楽章Allegro con brioは、長いオーケストラの序奏で始まる。OEK の堂々たる序奏の後、オピッツさんの演奏が始まる。ケンプの弟子とのこと。音は正確、端正で、一つの音を大事に演奏し、しかも姿勢は揺るぎない点そっくりである。カデンツァは堂々たる演 奏を披露。圧巻であった。私には、モーツァルトの影響が感じられると書きたい第2楽章は、プログラムによれば、「モーツァルトの時代にはなかった、ベートーヴェン独自」とのこと。この第 2楽章Largoは、夢見心地。ピアノとオーケストラのpでの掛け合いも軽妙。第3楽章は一転して、Rondo. Allegro scherzando。オピッツさんの早い、しかも抑制の効いた演奏。OEKもこれに応え、 堂々たるフィナーレで終了。オピッツさんとOEKによる絶妙のコンチェルトであった。

 休憩を挟んで、3曲目はベートーヴェン:劇音楽「エグモンド」序曲。良く聞いた曲だが、ホルンが4人に増設されたOEKは、ビオラ、チェロによる重厚さ溢れるイントロを披瀝。格調高い。これなら、 弦楽部門を2人づつ増やせば、マーラー、ブルックナーの演奏も不可能ではないと思わせる内容であった。
 4曲目は、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番。第1楽章Allegro con brioは、プログ ラムにあるような「劇的」な出だし。ピアノ・ソロが開始され、主題を綺麗に演奏。これは絶妙の音楽である。第2楽章Adagioは、夢見心地。中間部のファゴット、クラリネットとのDuoも綺麗。カ デンツァは、流麗な主題変奏曲。将に堂々たる演奏。第3楽章Rondo: allegroは、一転して急。中間部での低音パート:ビオラ、チェロ、コントラバスとピア ノの掛け合いが趣向。フィナーレはピアノが先導し、終曲。ゲルハルト・オピッツさんは2曲の協奏曲演奏で少々疲れも見えたが、終わってみれば立派で、堂々たる演奏であった。

 アンコールは、シューベルト:3つのピアノ曲。第1曲Allegro assai。これは、気を引き締めて臨んだアンコールだけに、秀逸なシューベルトに仕上がった。さて、ベートーヴェン:ピア ノ協奏曲第1番と第3番を聞いた訳だが、日本のコンサートは、序曲、協奏曲ときて最後は交響曲というプログラムが多かった。しかし、今回のように協奏曲を並べるのも趣向である。但し、奏 者は大変そうであるが。即ち、Paradigm Shiftは今後の課題である。尚、2月には金沢大学工学部跡地へ金沢美大が移転するとの報道がなされた。私は、金沢美大に音楽学部(器楽科、声楽科)を増設 し、金沢芸大への前進を要望したい。何故ならば、金沢には合唱団の伝統があり、OEKには器楽科を指導する教授陣が豊富だ。又、最近増えている金沢来住者の楽しみは「今日は兼六園、明日は OEK」らしいからでもある。


Last updated on Apr. 11, 2014.
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