130718

9月17日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第341回定期公演PH
指揮:ウラディーミル・アシュケナージ、ピアノ:辻井伸行
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 辻井伸行さんは、オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と共演は行っているが、定期には初見参。 しかも、前N響音楽監督ウラディーミル・アシュケナージ・マエストロと共演する日本ツアーのプレミエである。曲目も渋く、ショパンのピアノ協奏曲第2番である。これに期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートは、ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第5番第3楽章アンダンテ・カンタービレ。アンダンテ・カンタービレはチャイコフスキーだけでは無い。ベートーヴェンのアンダンテ・カンタービレは明るく、中間部で大澤さんの チェロの先導もあり、フィナーレで主題が戻り終了。全曲聞きたい弦楽四重奏曲第5番であった。
 コンサート1曲目は、メンデルスゾーン:序曲「フィンガルの洞窟」。池部晋一郎さんがプレトークで言っていたように、本日もリハーサルを行ったようだ。従って、イントロは非常に滑らか。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の通常配置。ア シュケナージ・マエストロは前に乗り出すように、しかも一音一音ずつ丁寧な指揮。OEKもこれに応えて丁寧。ピアニストが本業のアシュケナージ・マエストロ、指揮も中々のものだ。その理由は、OEKの音質はヤングさんが加わった所為で もあるが、より上質に聞こえた。スコットランドの洞窟を思い浮かべる情景描写音楽はpで終了。出だし好調。
   コンサート2曲目は、辻井伸行さんをソリストに迎えたショパン:ピアノ協奏曲第2番。アシュケナージ・マエストロは辻井伸行さんをエスコートして登場。第1楽章Allegro maestosoは、OEKのおとなしいイントロ。辻井伸行さんの出 の箇所ではアシュケナージ・マエストロが顔を寄せて指示。辻井伸行さんは分かっているとばかり演奏開始。辻井伸行さんの演奏は首を右左に振りながら演奏。可愛い。彼のピアノは、池部晋一郎さんが言っていたように綺麗。 その理由は、コロコロと音を転がす装飾音符風アルペジオ奏法における音の強弱とテンポにある。つまり、途中でディミヌエンドし、しかもリタルダント気味に演奏する上品さが要因と思われる。第2楽章Romance. Larghettoは、夢心地。終了前のピア ノ・ソロは綺麗。第3楽章Rondo. Vivaceは、Vivaceらしく活気に満ちた演奏。辻井伸行さんはブーニンのように「バタン」と演奏することも無く、優雅でしかも上手い。コーダ前のホルンはfとpが完璧に決まり、トロンボーン、トランペッ トはファンファーレで終了前を暗喩し、辻井伸行さんのピアノのソロ気味の演奏と共に終了。珠玉の演奏であった。Bravo! bis!に応えてアンコール。ショパン:ノクターン(夜想曲)第20番遺作である。これもまた綺麗。ソロも極上である。

 休憩を挟んでシューマン:交響曲第2番。OEKはコントラバス1人、ホルン1人、トロンボーン3人が加わる。第1楽章Sostenuto assai - Allegro, ma non tropponoは、イントロがやや不安定。我が家にあるレヴァイン指揮ベルリン・フ ィルハーモニー管弦楽団によるCDで聞いてみると、この原因はトロンボーン・ソロに協奏するヴァイオリンの音量不足と思われる。修正して欲しい。第2楽章はScherzo. Allegro vivace。堂々として立派。プログラムによる讃美 歌風の主題が印象的。第3楽章Adagio espressivoは、流麗なイントロ。オーボエ、クラリネットのソロ、ホルンのユニゾン、及び第1ヴァイオリンのストリングスが際立つ。第4楽章Allegro molto vivaceは、後の交響曲第3番「ライン」 とよく似た曲想。この楽章が「ライン」第1楽章での動機に繋がったとも思われる。フィナーレの金管楽器は立派で、華麗に終了。渋い第2番シリーズは完了した。

 アンコールはラフマニノフ:ヴォカリーズ。この曲は木管楽器ソロ、歌曲風等種々の演奏があるのだが、オーケストラによるヴォカリーズも趣向。綺麗な演奏であった。さて、アシュケナージ×辻井×OEK日本ツアー2013は10都市で開催され るようだ。これを機会にOEKの更なる躍進に期待したい。


Last updated on Sep. 17, 2013.
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