130718

7月18日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第340回定期公演PH
指揮:井上道義、バス:森雅史
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 岩城宏之メモリアルコンサートと題したコンサート。オ−ケストラ・アンサン ブル金沢(OEK)の基礎を築いた故岩城浩之マエストロに現在のOEKの演奏を聞かせたいと思いつつ、石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートは、メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第6番第1楽章。第4楽章のような楽章で、メンデルスゾーンの交響曲への橋渡しは綺麗に終了。
 舞台右手には故岩城浩之マエストロの遺影が飾られ、コンサートに先立ち第7回岩城浩之音楽賞の発表がある。竹中理事長より本日のソリスト森雅史さんへ賞状が手渡された。どのような歌声を聞くことができるのか期待は高まる。  コンサート1曲目は、メンデルスゾーン:交響曲第3番『スコットランド』。第1楽章Andante con moto - Allegro un poco agitatoは短調。イントロの哀愁を帯びたメロデーは故岩城マエストロへのレクイエムに聞こえたのは私だ けか。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置で、ホルンは4人。久し振りの井上道義マエストロの指揮は落ち着いた感じ。しかし、これも第4楽章で興に乗るといつもの大きなゼスチャーの指揮ぶりは復活した。attacca気味に一転し て快速の第2楽章Vivace non troppo。コーダのヴィオラとフルートの回想が綺麗。第3楽章Adagioは、再び短調。但し、フィナーレ近くでは堂々たる行進曲風も挿入される。第4楽章Allegro vivacissimo - Allegero maestoso assai は、コーダのpでの回想が素敵。フィナーレはトランペットが咆哮し、プログラムのごとく「気宇壮大」。ホルンには客演奏者もいた所為か、少々のミスはあった。しかし、圧倒的な『スコットランド』であった。

 休憩を挟んで、バスの森雅史さん登場。第1曲はモーツァルト:歌劇『ドン・ジョバンニ』から「カタログの歌」。聞いてみると、日本人的バス。バリトンに近いバスか。もう少し体重が増えれば欧米並みのバス歌手に匹敵するの では。でも低音は随分低いところまで出せるようだ。第2曲:モーツァルト:歌劇『魔笛』から「ザラストロのアリア『この聖なる殿堂では』」。この曲のほうがバスは立派に聞こえる。低音の質も良い。第3曲はフレンニコフ: 「酔っぱらいの歌」。聞いたことのない作曲家の曲だが、酔っぱらった感じがよく出ていた。尚、本人は酒は飲めないらしい。最後は短い、プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』から「外套のアリア」。森雅史さんの低音が充分活かさ れた曲であった。しかし、短過ぎた。もう少し聞きたいと思ったが、コンサート前のセレモニーの為時間が足りなかったのかアンコールは無し。
 コンサート最後は、メンデルスゾーン:交響曲第4番『イタリア』。第1楽章Allegro vivaceは、明るく、快活。ホルンは2名となり、OEK本来の陣容に戻る。第2楽章はAndante con moto。イントロのfは曲想の展開と共にpなる。 即ち、音量は小さめだが、OEK本来の演奏で綺麗。第3楽章Con moto moderatoでは、ホルンの繰り返されるファンファーレが上手く決まる。第4楽章はSaltarelloのイントロはffで強烈なリズム。Saltarelloとは軽く飛ぶイタリア・ アブルッツイ地方の農民舞踏らしい。各楽器の競演により曲想は華麗に展開し、コーダ前はトランペットの華やかな演奏。『スコットランド』のテーマが僅かに挿入され、『イタリア』は堂々と終了。珠玉のOEKであった。

 終了は午後9時を過ぎた所為か、アンコールは無し。さて、岩城宏之メモリアルコンサートだが、今日のOEKの華麗さの礎を作ったのは故岩城浩之マエストロ。これを偲んだ岩城浩之音楽賞の継続により、OEKの更なる発展を祈るもの である。


Last updated on Jul. 13, 2013.
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