130613

6月13日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第338回定期公演PH
指揮・ピアノ:レオン・フライシャー、ピアノ:キャサリン・ジェイコブソン・フライシャー
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 右手の2本の指が動かなくなり、その後プログラムによればボトックス療法で右手の機能を取り戻したレオン・フライシャーさんがオ−ケストラ・アンサン ブル金沢(OEK)を指揮振りする。これに期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートはモーツァルトのオーボエ四重奏曲第1、2、3楽章。OEK加納律子さんのオーボエが又上手い。躍動感溢れる演奏で雰囲気が盛り上がる。
 コンサート1曲目は、ラヴェル:組曲「クープランの墓」。第1曲はPrelude。オーボエによる導入部が素敵、将に洒脱。OEK弦楽5部は8-6-4-4-2らしい。但し、チェロとコントラバスは舞台向かって左手に配置。レオン・ フライシャー・マエストロは座って指揮。少々お遅めかとも思われたが、めくるめくような曲想の変化で解消。第2曲Forlaneは、フルートによる妖精の踊りを表すような曲想。第3曲Menuetは、オーボエで始まる。中間部のクレッ シェンドで壮大に盛り上がる。第4曲はRigaudon。ffのイントロの後、第2主題は再びオーボエ。オーボエが忙しい。変奏の後オーボエによるテーマが戻り終了。フランス音楽の真髄を聞いたような感じで、この曲を1曲目にした のは正解であった。
 2曲目はモーツァルト:2台のピアノのための協奏曲ヘ長調K.242。この曲は、プログラムによれば3台のピアノのための協奏曲を刈り込んだ(?)曲とのこと。従って、従前のちらしにあったK.365とは違う曲なのだ。それと共 に、2台のピアノは縦に配置。即ち、指揮振りのレオン・フライシャー・マエストロは舞台を背に、キャサリン・ジェイコブソン・フライシャーさんは観客席に向いて演奏。従って、誰が演奏しているのかよく分からないという状態。 第1楽章Allegroは、モーツァルトらしい弦楽でスタート。まずは綺麗である。続いて2台のピアノが始まる。レオン・フライシャー・マエストロの右手は回復していることは確か。キャサリン・ジェイコブソン・フライシャー さんのピアノも上手らしいのだが、どちらが演奏しているのかは詳細不明。第2楽章はAdagio。この楽章も弦楽の綺麗な出だし。楽章の終了前にカンデンツァがある。派手なカデンツではなく落ち着いた曲想。第3楽章Rondo( Tempo di Minuet)は、奥さんのピアノが冴え渡ったようだが、これも詳しいことは分からずじまい。しかし、コーダーでは盛り上がり、フィナーレはpでスーと終了。曲の終わりが分かりにくい協奏曲であった。

 休憩を挟んで、ベートーベン:交響曲第1番。よく聞いた曲である。第1楽章はAdagio - Allegro con brio。ピチカートによるファンファーレの妙。すぐ、アレグロになる。レオン・フライシャー・マエストロは座って指揮 をするも、ff部は立ち上がって指揮。従って、OEKの演奏も力感的。但し、硬くは無い。第2楽章Andante cantabile con motoは、アンダンテ・カンタービレの雰囲気たっぷり。第3楽章は短い楽章で、Menuetto.Allegro molto e vivace - Trio。導入部の後、交響曲第7番に用いられたと思われる力強い曲想。第4楽章Finale.Adagio - Allegro molto e vivaceは、珍しいアダージョで開始。すぐにヴィヴァーチェで活気づくが、硬くなく、柔らかみのある 音楽。レオン・フライシャー・マエストロの指揮力が適切であったと思われる。コーダの後分かり易く終了。これまでに聞いたベートーベン:交響曲第1番の中でベストな演奏であった。

 アンコールは、無し。さて、新しいマエストロの登場であり、指揮振りも指揮も上質ではあったが、モーツァルトの協奏曲K.242とK.365の違いは大きい。2台のピアノのための協奏曲であればK.365が正しいと、私は思う。次回は きっちりK.365を演奏して欲しいものである。


Last updated on Jun. 13, 2013.
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