130613

6月13日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第338回定期公演PH
指揮・ピアノ:レオン・フライシャー、ピアノ:キャサリン・ジェイコブソン・フライシャー
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)による安永徹&市野あゆみと題したコンサート。マルティノフ:「カム・イン! ヴァイオリンと弦楽のため の」という曲は聞いたことがなく、興味津々。これに期待して、石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートはハイドンの弦楽四重奏曲第81番「ロプコヴィツ四重奏曲」第1楽章。大澤さんが言うように通称は「挨拶」と呼ぶらしく、如何にも挨拶を交わしているような第1楽章。第2楽章はどうなるのか、聞き たいと思ったが時間の関係で仕方がない。とにかく優雅な雰囲気を味えた。
 コンサート1曲目は、モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番。市野あゆみさんが登場。第1楽章Allegroは、出だし少々ピリオド奏法のような硬い感じ。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。尚、コントラバスは第1ヴァイ オリンの後方に配置されていたのでその所為かとも思われたが、市野あゆみさんの流麗な演奏の後第1ヴァイオリンの音が盛り返し、硬さは解消された。カデンツァはショパン風。安永徹さんの指揮振りは板についたものであっ た。第2楽章はLarghetto。バイエル風付点の付いた主題の後、オーボエとファゴットの対話が綺麗。第3楽章Allegrettoは、柔らかな出だし。オーボエとファゴット、フルートとファゴットの対話も綺麗。リスト風カデンツァ の後短いコーダで、厳然と終了。

 休憩を挟んで、コンサート2曲目は、金沢プレミアだと思う、マルティノフ:「カム・イン! ヴァイオリンと弦楽のための」。OEKの弦楽5部は6-4-4-4-2らしく、チェロ4人が舞台後方に並ぶという配置。どんな曲かと思っ たら、綺麗な出だし。ウッドブロック(木魚のようなもの)が演奏された後、チェレスタによる通奏低音を伴奏に安永徹さんによるヴァイオリン・ソロが始まる。レクイエムにも似た曲想で、綺麗で、将に天上の音楽である。プロ グラムでは6楽章とのことであった。ウッドブロックが楽章間を接続しているようで、楽章が進むと多少単調感もあった。しかし、第4楽章か第5楽章辺りでテンポの変化も加わり、単調さは解消。第6楽章では 主題が戻り、ウッドブロックのディミヌエンドで終了。正に白眉であり、演奏会に来て良かったと感じた瞬間であった。
 3曲目はハイドン:交響曲第88番。第1楽章Adagio - Allegroは力強い出だし。爽快に進行する。第2楽章Largoは、オーボエによるテーマが導入され、装飾音符も上品。第3楽章Menuetto:Allegretto - Trio - Menuettoは、 ホルンのユニゾンがユニーク。中間部では短調に移行したようで、その後又長調に転換し終了。第4楽章はFinale:Allegro con spirito。力強く、しかも流麗な進行。フィナーレは圧倒的に進行し、終了。元気なハイドンであっ た。

 アンコールは、ウオーロック:キャプリオル組曲第5曲「Pieds-en-l'air(ダンスで重心を片脚にかけた際に、残った空中にあるもう一方の脚の歌らしい)」。これも弦楽のみの綺麗な曲。2曲目のマルティノフも含め、モーツ ァルト、ハイドンの元気さに比して情感的な弦楽曲2曲が織り込まれたプログラムであったといえる。プレミア曲の演奏は楽団員及び聴衆に緊張感を与える。今後もこの種の緊張感溢れるプログラム造りに期待したい。


Last updated on May 31, 2013.
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