130107

1月7日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第331回定期公演PH
指揮:井上道義、ソプラノ:中嶋彰子、テノール:吉田浩之
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

English
スマホ版へ

 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のニューイヤーコンサート2013。本年も良質の演奏を聴けることに期待して、 石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートは、モーツァルト:協奏交響曲第3楽章。第1ヴァイオリン2、第2ヴァイオリン1、ヴィオラ1、チェロ1、コントラバス1の6重奏。新春を飾るに相応しい華麗な 曲であった。
 コンサート1曲目は、聞いたことのない作曲家コルンゴルト:バレエ「雪だるま」序曲。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。今日は、井上道義マエス トロの指先がしなやかで、ワルツになると踊りも入って華やか。2曲目は、カタラーニ:歌劇『ラ・ワリー』から「さようなら、故郷の家よ」。ソプラノ:中嶋彰子さんが歌う。濃いブルーのドレス で、心に沁みる歌声を披露。次は再びコルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲第2楽章。ヴァイオリンはコン・マスであるサイモン・ブレンディスさん。第2楽章だけだが、綺麗な曲で、ヴァイオ リン・ソロも極上。4曲目はコルンゴルト:歌劇『死の都』から「私に残された幸せは」。ソプラノ:中嶋彰子さんとテノール:吉田浩之さんのDuet。吉田さんのテノールはホセ・カレーラスの 日本人版とも思える艶のある歌声を披露。但し、県立音楽堂の特性を余り意識し過ぎたのか、pで歌う箇所では良く聞こえない箇所もあった。しかし、全体的には抒情的で、綺麗なDuetであった。

シェーンブルン宮殿
5曲目は、同じくコルンゴルト:「シュトラウシアーナ」。チャイコフスキーに「モーツァルティーナ」という曲がある。即ち、この曲はシュトラウス風であり、ピチカート・ポルカに始 まり、シュトラウス風ワルツが小気味よく演奏される。フィナーレも堂々の盛り上がりで終了。尚、プログラムにある「パスティーシュ」は、フランス語"pastiche"で、 「模倣曲」という意味である。

 休憩を挟んで、6曲目は、ツェラー:喜歌劇『小鳥売り』から「私は郵便配達のクリステル」。中嶋彰子さんは黄色のドレスにお色直し。前曲の歌劇と違い、オペレッタの歌唱も中々 上手い。7曲目は、レハール:喜歌劇『微笑みの国』から「君はわが心のすべて」。吉田浩之さんの堂々たる歌唱。8曲目はシュトルツ:喜歌劇『お気に入り』から「あなたはわが心の王様」。 原題はドイツ語で"Der Favorit"であり、男性名詞、すなわち王様なのだ。シュトレツの喜歌劇はレハールと違って抒情的。これを中嶋彰子さんが熱唱。続いて、OEKの演奏でスッペ:喜歌劇 「詩人と農夫」序曲。圧巻はカンタさんのチェロ・ソロ。これも極上であった。曲想は種々変化、即ちスッペらしいウィンドオーケストラ曲的中間部、ワルツも挟まれ、フィナーレも颯爽と終了。 10曲目は、 同じくスッペ:喜歌劇『ボッカチオ』から「恋は優し野辺の花よ」。ご存じ浅草オペラ。中嶋彰子さんは、日本語で、しかも正統調で歌い、浅草オペラの厭らしさを感じさせない綺麗なアリア に仕上げる。次は、再びOEKの演奏でシュトラウスU:ポルカ「狩りにて」。スピード感有り、銃声も入り、臨場感満点。12曲目は、レハール:喜歌劇『メリー・ウィドウ』からDuet「唇は語ら ずとも」。Duetの伴奏であるヴィオラが印象的であり、歌詞も日本語で分かり易い。13曲目は、OEKの演奏でシュトラススU:ワルツ「南国のバラ」。テンポが目まぐるしく変化する曲で、導入 部には違和感があった。しかし、フィナーレは、「美しき青きドナウ」に匹敵する盛り上がりで終了。この曲は、時間的にも21時近くだったので、入れなくても良かったと思われた。何故な らばフィナーレは同じく、Duetで、ジーツィンスキー:「ウィーン、わが夢の街」だからである。「ウィーン、わが夢の街」は勿論ドイツ語で歌われ、フィナーレに相応しい曲。シュテフ ァン大聖堂、シェーブルン宮殿等を思い出させる熱唱であった。

 アンコールは、カールマン:『チャルダーシュの女王』から「踊りたい!」。続いて、響敏也:「栄光の道」。松井秀樹の応援歌らしい。少しだけであったが、面白そうな曲。全曲を演奏し て欲しかった。さて、ニューイヤーコンサート2013のフィナーレで聴いた「ウィーン、わが夢の街」について一言。ウィーンもいい。しかし、ここは金沢。そこで提案だが、「金沢望郷歌」をオペラのアリア風に編曲し、これを歌ったらどうだろうか。著名な編曲者に委嘱して欲しいものである。


Last updated on Jan. 07, 2013.
2013年コンサート・レビューへ