121018

10月18日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第328回定期公演PH
指揮:高関健、ピアノ:ハオチェン・チャン
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ヴァン・クライヴァーン国際ピアノコンクールで辻井伸行さんと同時優勝したハオチェン・チャンさんがラヴェルのピアノ協奏曲を弾く。彼のトレモロと高関健マエストロ指揮するオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)に期待して、石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはモーツァルト:弦楽四重奏曲第19番「不協和音」。ブレンディスさんが第1ヴァイオリンで、綺麗な演奏。楽章は不明だが、第3、第4楽章だったかもしれない。
 コンサート1曲目は、ロッシーニ:歌劇「セビリャの理髪師」序曲。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2で、舞台向かって左からコントラバス、第1Vn、チェロ、第2Vn、ビオラという配置。コン・ミス はヤングさん。尚、ティンパニーに久し振りトーマス・オケーリーさんが客演として加わる。高関健マエストロは、尾高マエストロのような丁寧な指揮を披露。OEKの演奏も快活で、未だ金沢で公 演されていない歌劇「セビリャの理髪師」公演を期待させる演奏。序曲のフィナーレ近くトーマス・オケーリーさんのティンパニーが冴え渡り、終了。尚、本日のプログラムは4曲と盛り沢山な のだが、その意味は次のストラヴィンスキー:バレー音楽「カルタ遊び」に「セビリャの理髪師」序曲の主題が出てくる為なのである。
   2曲目はストラヴィンスキー:バレー音楽「カルタ遊び」。「カルタ」とは古い表現。「カード遊び」が現代的。さて、第1順の序奏「カード切り」は、トロンボーン、チューバが加わった金管 による少々風変りな旋律。但し、ボリューム感は有る。第2順はトランペットも加わり白熱。バレー曲だけに音楽だけで聞いていると単調な部分もある。しかし、高関健マエストロはff部分で盛り 上げる。第3順では、「セビリャの理髪師」序曲の旋律が挿入される。トランペット・ソロも堂々とし、フィナーレ。尚、最後の部分「支配人がカードを揃えて持ち去る」は音楽だけでは良く分か らないまま終了した。初めて演奏する曲としては中々の出来栄えであった。

 休憩を挟んで、3曲目はモーリス・ラヴェル:ピアノ協奏曲。ハオチェン・チャンの登場である。第1楽章Allegramenteにおけるイントロのムチの音は立派。続いてハオチェン・チャンのピアノ が開始される。最初は抒情的な演奏であったが、中間部以降力強い演奏も披露、フィナーレ近くで彼のトレモロを聞けた。流麗な演奏であった。第2楽章Adagio assaiは、彼のカデンツァで始まる 緩徐楽章。中間部でのオーボエとのDuoは綺麗。第3楽章Prestoはアップ・テンポ。ハオチェン・チャンはテンポの速い、ジャズっぽい曲も上手い。大太鼓の「ドン」で終了した。ハオチェン・チ ャンさんの熱演であった。アンコールはドビュッシー:前奏曲集 第1巻「亜麻色の髪の乙女」。聞き応えのあるアンコールであった。
 前述のごとくプログラムが盛り沢山の為午後8時半を回ってから4曲目が始まる。ベートーヴェン:交響曲第2番である。第1楽章Adagio molto - Allegro con brioは、少々抑え気味に開始。メ ンデルスゾーンに影響を与えたと思われる部分になると高関健マエストロの指揮に呼応しOEKも快活。第2楽章Larghettoは非常に綺麗。特に、弦楽が好調。第3楽章Scherzo.Allegro - Trioは軽快。 フルート・ソロが綺麗。第4楽章Allegro moltoは、当時としては革新的と思われる曲想をOEKが好演。あまり聞けないベートヴェントの交響曲第2番は、少々の乱れはあったものの熱演にて終了した。

 アンコールは無し。プログラムの4曲は多過ぎ、時間がオーバーした為だろう。さて、高関健マエストロの指揮は若々しく、盛り上げ方が上手いと感じられた。しかし、ffの前にpへ落とすメリ ハリは不足していたように思われる。今後の更なる精進に期待したい。


Last updated on Oct. 18, 2012.
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