1200908

9月8日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第326回定期公演PH
指揮:井上道義、天沼裕子、山田和樹、ピアノ:田島睦子、ソプラノ:森麻季、メゾソプラノ:鳥木弥生
テノール: 吉田浩之、バリトン:木村俊光、合唱:岩城浩之生誕80年記念特別合唱団
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「岩城浩之メモリアルコンサート」と題した2012-2013シーズンの開幕コンサート。故岩城浩之マエストロが好んだ現代曲、プーランク、及びベートーヴェンの交響曲第9番をオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が演奏する。故岩城マエストロが生きていたら、現在のOEKのボリュームと質の高さにびっくりすると思いながら石川県立音楽堂に出掛けた。

 遅く音楽堂に着いたのではっきりしないが、プレ・コンサートは無かったらしい。
 コンサートに先立ち第6回岩城浩之音楽賞授賞式があり、第6回岩城浩之音楽賞に田島睦子さんが受賞した。毎年、新しい受賞者が出ることは新人発掘の点でも続けて欲しいものである。
 さて、コンサート1曲目は、池部晋一郎:悲しみの森。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の対象配置。久しぶりの天沼裕子マエストロの指揮。彼女の指揮は以前と同じ「キリッ」とした明晰な指揮。曲想は武満徹ばりの尺八を イメージしたと思われる文字通り悲しみの曲想。強弱の変化が乏しく、クライマックスがない曲。これも池部晋一郎さんの何らかの意図か。とにかく悲しみの内に終了した。
   2曲目はプーランク:ピアノ協奏曲。指揮は井上道義マエストロ。第1楽章Allegrettoは、フランス風洒脱なイントロ。岩城浩之賞を受賞した田島睦子さんのピアノは的確。フィナーレは劇的に終了。第2楽章Andante con motoは牧歌的か、セレナード風か。第3楽章Rondeau a la francais - Prest giocosoは、めまぐるしく変化する風景。ここで、マエストロの踊りが復活。小気味よい2音で終了した。カデンツァは無く、田島睦子さんのテク ニックを聞けなかったのは残念であった。しかし、ドイツ音楽と違う爽やかなフランス的協奏曲を堪能できた。次回には田島睦子さんのカデンツァを聞きたいものである。

 休憩を挟んで、池部晋一郎、西村朗さんによる「中トーク」を挟み、前N響アワーの司会者であった西村朗:ベートヴェンの8つの交響曲による小交響曲。指揮は山田和樹マエストロ。彼の指揮は少々おとなしいが、丁寧な 指揮。この曲には題名の通りベートヴェンの交響曲の断片が随所に出てくる。第1楽章はオーソドックスな展開。第2楽章のイントロは鐘で始まる。第3楽章は木琴のイントロで、第3楽章第4楽章はAttaccaで繋がって いるらしい。ベートヴェントの交響曲第3番、第5番、第6番が主であり、第6番田園の第5楽章からの引用で終了。
 4曲目は、前曲で演奏されなかったベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章Presto - Allegro assai。OEKの弦楽5部はコントラバスが一人増えて、8-6-4-4-3。指揮は井上道義マエストロ。この曲は、合唱が入るまではレク イエムに聞こえたのは「岩城浩之メモリアルコンサート」と題するコンサートの所為か。ところで、中間部にコントラバスのユニゾンがあるが、この部分は楽譜ではpであり、普通のホールではどこから聞こえるのか探さねば、 その音源を探知することはできない。ところが、石川県立音楽堂ではfに聞こえるのは音響の良さを示す好例であろう。この曲では彼はアジル指揮で、これに応えてOEKと合唱も盛り上げる。フィナーレ前のソリストによる4重 奏は綺麗であり、「交響曲と名付けられたレクイエム」は圧倒的なボリュームでもって終了した。第9は年末だけに限らない。

 アンコールは無し。カーテンコールで、井上道義マエストロより来シーズンからマイスター・シリーズを金・土曜日と2回連続公演を目指したいとのこと。これはマイスターシリーズのみではなく、フィルハーモニーシリーズ でも公演内容によっては連続公演を実施して欲しいものである。しかし、最初の公演か2度目の公演か、すなわち曜日の選択を自由化をすることが条件である。期待したい。   


Last updated on Sep. 08, 2012.
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