120622

6月22日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第322回定期公演PH
指揮:秋山和慶、ヴァイオリン: 戸田弥生
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の「アメリカ音楽の夕べ」と題した定期公演。バーバーの甘美な音楽を聞けることに 期待して石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはフルート・ソロ。2曲目から聞いたが、どこかで聞いたようなアメリカ音楽。しかし、曲目はのど元迄出ているのだが結局不明。
 コンサート1曲目は、バーバー:「弦楽のためのアダージョ」。OEKは弦楽のみの8-6-4-4-2で、チェロとヴィオラを入れ替えた通常配置。イントロから哀愁漂う曲想を弦楽4部で演奏。コントラバスの演 奏は中々始まらない。クライマックス後一旦停止し、コントラバスが加わる。音に厚みが出てくる。秋山和慶マエストロはがっしりした指揮。盛り上がりも適切。甘美さは余り感じられず、ペーソス感のみの内に消 え入るようにppで終了した。
 2曲目はバーバー:ヴァイオリン協奏曲。第1楽章Allegroは、プログラムにある通り、前ぶれも無く、いきなり戸田弥生さんのヴァイオリンで開始。戸田さんのヴァイオリンは音域がそうだったのか、ヴィオラっぽい音色(3曲目 はそうでなかった)で、ジャズの雰囲気を醸し出す。オーケストラのffの箇所にヴァイオリン・ソロが重なると、ヴァイオリンは聞こえない。OEKの音量が強力になったことが原因か。第2楽章Andanteは、オーボエがイン トロを飾る。この楽章は甘美な曲想と思っていたのだが、秋山和慶マエストロの解釈か、ジャズの雰囲気。ここでもオーケストラとヴァイオリン・ソロが重なる。第3楽章Presto in motoは、技巧を感じさせる 曲想。しかし、戸田さんのテクニックを堪能する暇もなく、慌ただしく3分間あまりで終了した。現代音楽としてのバーバーであった。

 休憩を挟んで、ジョン・ウィリアムズ:映画「シンドラのリスト」から。戸田弥生さんのヴァイオリンが加わる。彼女は見違えるようなエスプレッシヴォ。伸び伸びと表情豊かに演奏し、短い曲を終了した。まだ聞 きたい気がしたが、残念。
 4曲目は、コープランド「劇場のための音楽」。第1曲は「プロローグ」。イントロはトランペットでいかにも序曲らしい曲想。中間部からは一転してテンポが速くなる。秋山和慶マエストロの テンポも良好。長くて、綺麗なオ−ボエ・ソロ有り、木琴も効果的に挿入され、アメリカ音楽らしい盛り上がり。第2曲「舞曲」は金管が熱演し、ジャズっぽく、OEKの得意なジャンル。第3曲「間奏曲」は、オーボエ・ ソロが綺麗であり、鉄琴だと思うが、これも効果的。第4曲は、コントラバスのffで開始。中間部でチェロ、コントラバス、トロンボーンの3重奏あり。これは中々秀麗。第5曲は「エピローグ」。プログラムによれ ば「既出楽章の素材回帰」。つまり、第1曲からの回顧。フルート・ソロで開始し、pでしっとりと進行。フィナーレはppで、静かに終了。私には、第1曲、第2曲でせっかく盛り上がったのだから、ffで終了した方がと感 じられた。しかし、ここはコープランドの哲学。仕方がない。

 アンコールは無し。さて、秋山和慶マエストロによる「アメリカ音楽」は、普段聞いているドイツ、フランス音楽とは異なり、独特の雰囲気を感じさせてくれた。アメリカ音楽では、コープランドの「アパラチ アの春」を2度聞いた。聞いていない曲としてはファーディ・グラーフェによる組曲「グランド・ キャニオン」もある。次回に期待したい。   


Last updated on Jun. 22, 2012.
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