120524

5月24日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第321回定期公演PH
指揮:下野滝也、トランペット: カボール・タルケヴィ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「下野&タルケヴィ トランペット協奏曲」と題したオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演。今回はハイドンを除いては、金 沢プレミアの曲ばかり。下野滝也マエストロの指揮とトランペットのカボール・タルケヴィさんに期待して石川県立音楽堂に出掛 けた。

 プレ・コンサートはコダーイと聞こえたが、詳細は不明。しかし、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる綺麗な三重奏。これが今夜のコンサート後半に出てくる三重奏の予告であった。
 コンサート1曲目は、ボッケリーニ:交響曲≪悪魔の家≫。第1楽章は、プログラムにある通り悪魔の家を連想させる短調のイントロ。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2の通常配置。チェロのカンタさんはお休み。下野 滝也マエストロは情感的、しかも的確な指揮ぶり。第2楽章は休止符を挟んだバロック調。第3楽章はプログラムによれば第1楽章と同じ序奏とあるが、私には長調に変わっている様に聞こえた。この楽章は嵐であ り、OEKの熱演裡に終了。交響曲というよりは協奏曲に近いという印象。
 2曲目はタルティーニ:トランペット協奏曲。「悪魔のトリル」で有名なタルティーニのヴァイオリン協奏曲をトランペット協奏曲に編曲したらしい。OEKは弦楽のみで、カボール・タルケヴィさんのトランペット・ ソロが加わる。第1楽章はハイドン風の出だし。次いで、カボール・タルケヴィさんのトランペットが柔らかな主題を提示。この曲は装飾音符、特にトリルが豊富で、カボール・タルケヴィさんはこれを難なく熟す。 やはり、うまい。第2楽章はLargoだろうか、ゆったりした雰囲気。第3楽章は変奏曲風で、輝かしい。カデンツァもあり、トランペットに魅了された協奏曲は終了。ここで、休憩となったが、私には、次のトラン ペット協奏曲を続けて演奏したらと思った。しかし、下野滝也マエストロには「三重奏」というキーワードを後半に残したかったらしい。

 休憩を挟んで、ネルーダ:「トランペットと弦楽のための協奏曲」。ネルーダという作曲家は全く知らないが、第1楽章はどこかで聞いたことのある様な綺麗な旋律。トランペットは柔和で、しかもしなやか。第2楽 章はプログラムにある通りLargo。第3楽章のカデンツァは堂々として、気品に満ちた演奏。休憩を挟んだとはいえ2曲続けた所為か、少々疲れも感じられたが、そこはプロ。立派に演奏を終了した。アンコールは、 ヤングさんのヴァイオリン、ヴィオラとトランペットの三重奏で、ヴィヴァルディ:オーボエ協奏曲ヘ長調第4楽章グラーヴェ。これが又綺麗。本日の2曲目の三重奏であった。
 4曲目は、ハイドン:交響曲第55番≪校長先生(Der Schulmeister)≫。OEKは木管、金管楽器が加わる。第1楽章Allegro di moltoは厳格さはあるが、平坦な楽章。これを下野滝也マエストロは的確に指揮。第2楽章 Adagio ma semplicementeは、ペアで踊る舞踏曲風。第3楽章Menuetto con trio中間部では第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンとチェロによる三重奏。これも綺麗。尚、≪校長先生≫は前に聞いたことがある。しかし、 その時には三重奏は無かった筈。従って、本日3曲目の三重奏は下野滝也マエストロのOEK向けアレンジであった可能性が高い。粋な演出といえる。第4楽章Finale. Prestoは、第3楽章までの平坦さと打って変わっ て、フィナーレに向かって力強くクレッシェンド。威厳に満ち、しかも綺麗なハイドンの交響曲であった。

 アンコールは無し。さて、下野滝也マエストロによる斬新で、プレトークで池部晋一郎さんが言っていたように、「こった」プログラムを聞かせて貰った。今後、下野滝也マエストロによる更なるプレミアなプログラ ムによる演奏会を期待したい。   


Last updated on May 24, 2012.
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