120205

3月3日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第316回定期公演PH
指揮:井上道義、ソプラノ: アンナ・シャファジンスカヤ、バス:ニコライ・ディデンコ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ビゼー/シチェドリン:「カルメン組曲」とショスタコーヴィチの交響曲第14番。オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)では、キ タエンコ・マエストロによるショスタコーヴィチの交響曲第9番が記念碑的演奏であった。又、カルメン組曲はOEKのCDが発売され、これも故岩城宏之マエストロの記念碑的作品であった。今回は井上道義マエストロ指揮でのショスタコーヴィチ交響曲第14番。この交響曲は声楽(ソプラノ、バス)が入り、金沢プレミアである。しかも、両曲共パーカション の妙も堪能できる。これ等に期待して石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートは大澤さんによるチェロ・ソナタ。1曲目は途中で会場に入ったので曲名は不明。2曲目はショスタコーヴィチのチェロ・ソナタ。ショスタコーヴィチらしいジャズっぽい曲を大澤さんとピア ノ嬢(名前は分からず)が熱演。コンサートに期待を抱かせる演奏であった。
 コンサート1曲目は、ビゼー/シチェドリン:「カルメン組曲」。OEKは打楽器と弦楽器のみで、弦楽5部は8-6-4-4-2のチェロとビオラの位置を変えた通常配置。「序奏」イントロは通奏低音にベルがハバネラ を印象的に奏し、開始された。「ダンス」では井上道義マエストロも絶好調。第1間奏曲は活動的でリズミカル。「衛兵の交代」ではパーカッションの妙。即ち、木琴、ビブラフォン、小太鼓、大太鼓等故岩城 宏之好みの打楽器群が披露される。「カルメンの登場とハバネラ」では木琴、ビブラフォンの演奏が快活。有名な「情景」、第2間奏曲では弦楽が綺麗。「ボレロ」、「闘牛士」、「闘牛士とカルメン」ではエ スカミーリョの勇壮さが凛々しく演奏された。「アダージョ」、「占い」、「終曲」では悲劇的結末を暗示する重厚な曲想。尚、終曲だったと思われるが木琴を二人で連弾。これは珍しかった。フィナーレはベル のハバネラで静かに終了。カルメンの死を悼むレクイエムであった。

 休憩を挟んで、ショスタコーヴィチの交響曲第14番。バスは代役で、ニコライ・ディデンコさんの登場となった。OEKはやはり弦楽部門と打楽器のみ。第1楽章:De profundis(深き淵より)はニコライ・ディデン コさんが歌う。プログラムでは一柳富美子さん訳の歌詞が記載されていたが、実は各楽章はスペイン語、フランス語、ドイツ語、ロシア語と多彩なのである。この第1楽章はスペイン語の筈だが、"Andalucia", " Cordoba"を聞き取れたのみではっきりしない。つまり、彼はスペイン語版で歌ったのか、ロシア語版で歌ったのかは分からなかった。第2楽章はMalaguena(マラゲーニャ)で、ソプラノのアンナ・シャファジンスカ ヤさんが登場。スケールの大きなソプラノである。その後、Loreley(ローレライ)、Le Suicide(自殺)と続く。ニコライ・ディデンコさんは真面目な歌唱であり、途中カンタさんのチェロ・ソロとのDuo、及びコン トラバス・ソロとのDuoも有り、華麗。第5楽章はLes Attentives T(注意T)、第6楽章はLes Attentives U(注意U)で、木琴と小太鼓等の打楽器が目立つ。A la Sante(サンテ監獄にて)では声楽の間にコントラ バス・ソロの間奏曲が入り、斬新。Reponse des cosaques zaporogues au sultan de Constantinople(コンスタンティノープルにおけるイスラム王宛のコザックの回答)は諧謔的。第9楽章:O Delvig, Delvig!(おう、 デルヴィック、デルヴィック)には"soyuz(союз, 同盟)"という単語が出てくる。これを確認できたので、第9楽章はロシア語であったことは間違いない。この楽章はニコライ・ディデンコさんが朗々とロシア的 に歌っていたので、前述の第1楽章はスペイン語だったのかもしれない。第10楽章Der Tod des Dichters(詩人の死)では観客で退席する人がいたことにびっくり。第11楽章Schlusz-Stuck(結論)はソプラノとバスの 短いDuoでのフィナーレ。「死は計り知れない」が結論であった。

 アンコールは無し。打楽器と弦楽器のみの配置のため出来なかったものと思われる。さて、井上道義マエストロはプロとはいえ1週間内に、ブルックナー、ビゼー/シチェドリン、ショスタコーヴィチを振った訳 だ。しかし、ハードスケジュールを感じさせない的確な指揮であった。井上道義マエストロの益々の活躍に期待したい。   


Last updated on Mar. 03, 2012.
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