120205

2月5日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第315回定期公演PH
指揮・ピアノ:ラルフ・ゴトーニ、合唱:オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 北欧の名匠ラルフ・ゴトーニ・マエストロがオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を弾き振りする。チマローザ、サッリネン、 ケルビーニからの選曲。3曲とも金沢初演であり、特にケルビーニの「レクイエム」は、「荘厳ミサ曲」がよく知られているのに対し、プレミア。オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団にも期待して 石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはヴァイオリンとチェロによるハイドン:Duet ニ長調。難しいDuoをトロイ・グーギンスさんとソンジュン・キムさんが優雅に演奏。珍しいハイドンによるDuoであった。
 コンサート1曲目は、チマローザ:歌劇「秘密の結婚」序曲。OEKは8-6-4-4-2の通常配置。イントロのフルートとファゴットのソロが面白く、ロッシーに影響を与えた作曲家らしい躍動感溢れる曲想。これ から始まるコンサートに期待を抱かせたのは言うまでも無い。
 コンサート2曲目は、サッリネン:ヴァイオリン、ピアノ、管弦楽のための室内協奏曲。ラルフ・ゴトーニ・マエストロの弾き振りであり、ヴァイオリンはコンマス:アヴィゲイル・ヤングさん。管楽は勿 論OEK。第1部「6月の嵐」は、ラルフ・ゴトーニ・マエストロのピアノによる動機に対し、哀愁漂うメロディをヤングさんが演奏。第2部「ドルチェ」は不気味なファゴットのイントロ。中間部のホルン、オー ボエ・ソロが綺麗。第3部「はかないエピグラフ(epigraph:碑文)」へはattaccaで繋がるのだが、どこで繋がったかは特定困難。しかし、フィナーレ近くでのグリッサンドは印象的で、静かに終了した。二人の 完璧な演奏は、北欧のメランコリックな現代音楽を充分アピールし、終了した。

 休憩を挟んで、ケルビーニ:「レクイエム」。ケルビーニの「荘厳ミサ曲」はベートーヴェンに影響を与えたことで知られているが、「レクイエム」は初演。尚、この曲の声楽は合唱のみであり、ソリストの パートは無いようだ。第1曲はIntroitus(入祭唱)。イントロをチェロが受け持ち、モーツァルとは異なり、しかもベートーヴェン的でも無い、ケルビーニ風。合唱はオーケストラ・アンサンブル金沢合唱団だが、 残念なのはバス・パートが弱く、基礎である低音が聞こえない。第2曲は聞きなれないGraduale(昇階唱)。非常に短かく、しかもモーツァルトと異なる歌詞が新鮮。第3曲Dies Irae(怒りの日)はお馴染み。ト ロンボーンのイントロが効果的で、中間部はドラマティック。しかし、ここでもバスが聞こえないのは物足りない。フィナーレ近くのLacrimosaは、モーツァルト的涙に咽ぶ情感は薄く、さらりと進行。第4曲 Offertrium(奉献唱)で初めて、バスが聞こえて安心。バスが聞こえてくるとソプラノの綺麗さが引き立つ。すぐフーガになるが、フーガ部ではバスパートは埋もれてしまう。力強さが必要だ。第5曲Sanctusは明 るく、輝かしい。第6曲Pie Jesu(慈悲深き、主イエスよ)は、フォーレのレクイエムではソリストが印象的な旋律を歌う。しかし、ケルビーニではソリストは無し。合唱のみなのだが、男声合唱は自信無げ。終曲 Agnus Deiでは、フィナーレ近くのトロンボーンによるpの演奏が効果的。"luceat eis"で静かに終了。女声合唱は元気だったのだが、男声合唱は少々情けない。終了後合唱指揮者がステージに現れなかったのも、 その所為であろう。

 アンコールは無し。5時前だったので、時間的には余裕はあったと思う。だが、ラルフ・ゴトーニ・マエストロは不満であったのかも知れない。合唱団のレベルの高い石川県にあって、今日の演奏では恥ず かしい。更なるレベル・アップを図って欲しい。   


Last updated on Feb. 05, 2012.
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