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ギュンター・ピヒラー・マエストロによる「ウィーンの古典」と題したオ−ケストラ・アンサンブル金沢
(OEK)の定期公演。室内オーケストラに相応しい綺麗な選曲に期待して石川県立音楽
堂に出掛けた。
プレ・コンサートはベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番第1、2楽章。OEKの層の厚さを示す若手による軽快な演奏。特に第2楽章は機知に富み、上品であった。
コンサート1曲目は、ロッシーニ:歌劇「シンデレラ」序曲。プログラムにある通りイタリア語では「チェネレントラ(La Cenerentola)」。「シンデレラ(Cinderella)」は英
語である。OEK弦楽5部は、8-6-4-4-3のチェロとヴィオラの位置を入れ替えた通常配置。ロッシーニは歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲が有名である。しかし、この曲もファゴットのイントロ
で開始され、軽快で、演奏会の劈頭を飾るに相応しい曲想。これをギュンター・ピヒラー・マエストロは的確に指揮。マエストロの指揮も板につき、巨匠の雰囲気である。OEKもそれ
に充分応えた。
コンサート2曲目は、モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲。モーツァルトの若い頃の作品とのこと。OEKは8-6-4-4-2構成。第1楽章はAllegroで、イントロから優雅。
導入部が終わって高木綾子さんのフルート、吉野直子さんのハープが加わる。フルートはよく響き、典雅な趣を醸し出す。
フィナーレ近くのカデンツァはハープで始まるフルートとのDuo。二人の呼吸もピッタリと合い、熱演であった。第2楽章Andantinoは、Adagioに近い緩徐楽章。将に夢見心地。ここでも、
カデンツァでDuoを聞かせる。第3楽章Rondeau. Allegroは、軽快。後年引用したのかもしれない「魔笛」の音楽にも似たフレーズが登場。この曲はカンデンツァが3度あり、この楽
章でもDuoを聞かせ、華麗に終了した。アンコールはビゼー:歌劇「カルメン」より間奏曲。モーツァルトと異なった曲想をDuoで丁寧に演奏。これも秀逸であった。
休憩を挟んで、ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」。ギュンター・ピヒラー・マエストロらしい選曲である。OEKは8-6-4-4-3に戻り、第1楽章Allegro
ma non troppoは、チェロによる低音部をfで響かせた重厚なイントロで始まり、軽快に進行。中間部は叙情的雰囲気タップリで、綺麗である。ゲネプロではマエストロから種々指摘され、
修正したそうだが、その成果が充分発揮されたと感じられる楽章であった。第2楽章Andante molto mossoは、フィナーレ近くのクラリネッ
トによるカッコウも決まり、将にpastorale。第3楽章Allegroではホルンの熱演が光り、第4楽章Allegroの「雷と嵐」も迫力充分。嵐が収まった後の第5楽章Allegrettoは開放感が
見事に表現され、チェロとコントラバスのピチカートを伴奏としたヴァイオリンによる嵐の後の主題も効果的で、プログラムによる「陶酔的クライマックス」を築き
上げ、終了した。尚、ギュンター・ピヒラー・マエストロは迫力のみの演奏ではなく、ffの前の「ため」、つまり押さえるところはきっちりとpに落とす指示が適切であった。このため、
メリハリの効いた演奏になったと感じられた。
アンコールは無し。さて、ギュンター・ピヒラー・マエストロによる上質のコンサートを聞けた訳だが、プレトークで紹介されていたようにゲネプロでは相当綿密な練習が行われ
たようである。その成果は上述の通りである。OEKには今後もゲネプロ、演奏会当日のリハーサルを充分行い、更に上質の音楽を追求して欲しいものである。