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10月6日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第308回定期公演PH
指揮・クラリネット:ポール・メイエ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 クラリネット奏者ポール・メイエさんを迎えての オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)定期公演。ポール・メイエさんの名人芸に期待して石川 県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはメンデルスゾーン:弦楽四重奏曲第6番第1楽章。フレッシュなメンバーだったが、OEKの実力を誇示する中々の演奏であった。
 コンサート1曲目は、モーツァルト:付随音楽「エジプト王タモス」。OEKは8-6-4-4-2の対象配置。ポール・メイエ・マエストロは指揮のみで、手馴れた様子。曲は劇音楽から 4曲を抜粋し、組曲形式にしたもの。1曲はテンポ良く始まり、出だし好調。2曲はモーツァルトらしい緩徐楽章。3、4曲は活気に満ちた音楽で、分かり易く終了した。
 コンサート2曲目は、ポール・メイエさんの「吹き振り」によるモーツァルト:クラリネット協奏曲。第1楽章Allegroのイントロは弦楽のみで、クラリネットは中々出てこない。 イントロの後、クラリネットが登場した。しかし、やや押さえた表現。中間部以降はポール・メイエさんも乗ってきて、力強く、しかも名人芸を披露。第2楽章Adagioは、 2ヶ月後に迫った死を予感したかのような澄み切った、レクイエムに近い緩徐楽章。ここには修飾音符が沢山出てきたようだが、難なくこなす。さすが名人である。第3楽 章Rondo.Allegroは、一転してアップテンポ。中間部以降はポール・メイエさんの名演が続き、コーダも決まり、終了。名人芸は流石に凄いと実感した。アンコールはStephen Sondheim :《Send in the Clowns(道化師達の即興演奏(?))》。日本的で、哀愁を帯びた曲であった。

 休憩を挟んで、ベートーヴェン:交響曲第7番。第1楽章はPoco sostenuto - Vivace。OEKは8-6-4-4-3のコントラバスを一人増員した構成。ポール・メイエ・マエストロの力強い 指揮の所為か切れ味鋭く、迫力もある。中間部で金管が違和感。一瞬OEKメンバ−は蒼白の感であったが、フルートの先導で直ぐに立ち直った。しかし、これは実は第4楽章まで引 きずっていたのである。第2楽章Allegrettoは、チェロのユニゾンで綺麗なイントロ。フィナーレのチェロとコントラバスのピチカートも綺麗。第3楽章Prestoは、早いテンポを的 確に演奏。これは良かった。所が、第4楽章Allegro con brioでは、前述のミスを引きずっていたことが伺われた。即ち、中間部で聞きなれない音が演奏された。これはポール・ メイエ・マエストロの新解釈なのか、演奏ミスなのかは不明。但し、違和感があったことは事実である。ともかくイ長調の協奏曲と交響曲は終了した。

 アンコールは無し。所で、「交響曲はただうるさいだけ」という意見がある。これは、交響曲の原点は序曲Sinforniaであることを考慮するならば、弦楽5部を16-14-12-10-8で構成す ればうるさいだけとなろう。今回のOEKによるベートーヴェン:交響曲第7番はどうだったのだろうか。海外公演で絶賛された曲とはいえ、弦楽四重奏と比較するならば少々うるさい。 ボリューム感のみを目指し、頑張り過ぎる必要は無い。今回の少々のミスは頑張り過ぎた結果かもしれない。「交響曲はただうるさいだけ」という意見もあることを考慮すると、室内 オーケストラはボリューム感より、音の綺麗さを目指した方が良いのではないだろうか。但し、偶にはマーラー、ブルックナーも聞きたいものである。


Last updated on Oct. 06, 2011.
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