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6月22日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第304回定期公演PH
指揮:山田和樹、ドラムス:デイヴィッド・ジョーンズ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ロジェ・ブトリー・マエストロは急病とのことで、山田和樹マエストロがオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK) を指揮し、渡辺俊幸さんによる打楽器のための新曲を披露するという。これに期待して石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートは無かったようだ。
 コンサート1曲目は、プロコフィエフ:交響曲第1番「古典」。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2で、ヴィオラとチェロのみ位置を交替した通常配置。第1楽章Allegroは重量 感溢れ、しかも軽快なイントロ。中間部で第2ヴァイオリンがメロデーを奏でる。これは珍しい。第2楽章Larghettoは、一転して緩徐楽章。第1ヴァイオリンが綺麗。日曜 日夜9時からの「N響アワー」のテーマ曲である第3楽章Gavotta(Non troppo allegro)は、N響より綺麗。第4楽章Molto vivaceは、一転して颯爽。切れ味も鋭く、分かり易 く終了した。
 2曲目は、ラヴェル:組曲「クープランの墓」。第1曲Preludeは、イントロからフランス的洒脱を感じる曲想。但し、音の繋ぎが多少乱れた様に感じたが、これは小編 成の室内オーケストラの所為かどうかは不明。第2曲Forlane(イタリアのフリウール地方の軽快な舞踏)は、地味な舞曲。第3楽章Menuetは、木管のイントロが秀逸。 第4曲Rigaudonは、重量感あり、金管も問題無し。一旦停止後のコーダではオーボエ・ソロ及びクラリネット・ソロが綺麗で、洒脱さを充分感じさせて終了。フランス曲は 纏めた方が良いとも考えられるが、フランス曲を挟むという山田和樹マエストロの意図も一興。

 休憩を挟んで、3曲目はソリストにデイヴィッド・ジョーンズさんを迎えての渡辺俊幸:Essay for Drums and Small Orchestra。デイヴィッド・ジョーンズさんは日本の 家庭の仏壇にある鐘を擦る摩擦音と共に入場。中間部ではジャズ風。続くコントラバス・ユニゾンも珍しい。緩徐部を挟み、再びアップテンポ。OEKの得意なジャンルである。 終了前にはドラムスのカデンツァ。途中イントロの鐘の摩擦音が入り、終了かと思わせた。しかし、再びOEKとの協演でドラム・ソロが炸裂し、終了。圧巻であった。アン コールは「打楽器即興曲」。先が青と赤に光る撥を用いての熱演で締め括った。
 4曲目は、プーランク:2つの行進曲と間奏曲。第1曲「行進曲1889年」は変わったイメージの行進曲。第2曲「間奏曲」もフランス風。第3曲は再び「行進曲1937年」。 不思議な感覚だが、これがプーランク流なのかもしれない。
 5曲目はファリャ:バレエ音楽「三角帽子」第1組曲。CDの解説によれば「権力のシンボルの三角帽子をかぶった代官が、美しい粉屋の妻に横恋慕し、一騒動を起こし、散々 な目にあうという2部からなる一幕物のバレエ」らしい。第1曲Introduction(La tarde)は、トランペットが堂々たるイントロを奏でる。第2曲Danza de la molinera(粉屋の 女房の踊り)ではスペイン風。シロフォンが効果的。第4曲は、プログラムでは「代官〜粉屋の女房」。これは「粉屋の踊りDanza del molinero」を指すのかは不明なのだが、 イントロのホルンのユニゾンに続いて、ファゴット・ソロが綺麗。リズムの変化も面白い。第5曲Las uvas(ぶどう)は、ワインの収穫祭を表すのか、高揚のうちに終了。スペ イン風の華麗な組曲であった。

 アンコールは、ドビュッシー:小組曲より「小船にて」。ドビュッシーらしい洒脱な曲想で、もう少し聞きたいと思わせる曲であった。さて本日の演奏を総括すると、ロジェ ・ブトリー・マエストロの急病における代役を務めた山田和樹マエストロの殊勲であったと思われる。彼に一度定期を総合Produceさせてみては、と感じたのは私だけではなか った筈である。


Last updated on Jun. 22, 2011.
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