110525

5月25日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第302回定期公演PH
指揮:アレクサンダー・リープライヒ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ミュンヘン室内管弦楽団正指揮者のアレクサンダー・リープライヒ・マエ ストロがオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指揮する。ペルト、ハルトマン等の金沢初 演の曲が並ぶ。期待して石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートは無し。
 コンサート1曲目は、ペルト:「レナルトの追憶に」。重厚なイントロ。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-2で、ヴィオラとチェロのみ位置を交替した通常配置。リープライヒ・ マエストロの指揮はダイナミックであり、しかも適切。中間部の第1ヴァイオリンの旋律は綺麗。プログラムにある通り「心に届くように語りかけて」終了した。
 2曲目はハイドンの交響曲第98番。OEKは対象配置に変更し、しかもチェロとコントラバスを除いた弦楽部門はソリスト同様起立して(ミュンヘン室内管弦楽団でも 行っているようだ)演奏。従って、第1楽章Adagio - Allegroは座って演奏するいつもと違って心なしか音が立体的に聞こえる。ハイドンの晩年の作だけに浪漫派に近い 楽章。第2楽章Adagio cantabileは、一転してハイドンらしい綺麗な旋律。第3楽章はMenuet: Allegro - Trio - Menuet。リープライヒ・マエストロは踊らず、厳粛な 指揮。第4楽章Finale: Prestoは、華やか。オーボエ・ソロ、ヤングさんのヴァイオリン・ソロが秀逸。綺麗に終了した。違和感ある箇所が1,2箇所感じられた。しかし、 これは起立して演奏の所為かどうかは不明。

   休憩を挟んで、コンサート3曲目は、ルトスワフスキ:「葬送曲(バルトークの思い出のために)」。OEKは弦楽部門のみで、ヴィオラとチェロのみ位置を交替した通 常配置。チェロのユニゾンで開始、これに第2ヴァイオリン、ビオラと続き、最後に第1ヴァイオリンが加わる。中間部では、コントラバスとヴィオラのピチカートによ るユニゾンが葬送の雰囲気を醸し出す。中間部は重量感あり。フィナーレはチェロと第2ヴァイオリンの交互演奏の後イントロに戻り、チェロの静かな演奏で終了。この 前NHKTVでppppppの話を聞いたが、この最後のチェロの強弱記号は何だったのか知りたいものだ。
 コンサート4曲目はハルトマン:交響曲第4番。これも弦楽部門のみ。第1楽章Lento assai - Conpassioneは、第1ヴァイオリンの高い音が印象的。私の所有するCDの解 説書には「抵抗する中国民衆の歌声」とある。多少東洋的旋律なのかもしれない。第2楽章Allegro di molto, risolutoは、躍動感溢れる楽章で、弓で叩く特殊音の後 終了した。この楽章は「反ファシズム闘争スケルツォ」らしい。第3楽章Adagio appassionatoは、チェロとコントラバスのピチカートで開始。これに第1、第2ヴァイオ リンが加わる。その後マーラ的となり、中間部はレクイエム。即ち、この楽章は「ファシズム犠牲者への哀悼」を表しているそうだ。この曲も静かにフィナーレ。リープ ライヒ・マエストロとOEKの熱演であった。

 アンコールは、時間の所為か無し。本日のプログラムを総括すると、どうも「東日本大震災の犠牲者への哀悼」がテーマだったようだ。東日本大震災被災者の皆様に は再度お見舞い申し上げたい。さて、本日の演奏ではOEK弦楽部門の優秀さを再確認できた。だが、金管部門では多少問題あるようだ。金管部門はレベルアップに努めて 欲しいものである。


Last updated on May 25, 2011.
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