110513

5月13日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第300回定期公演PH
指揮:井上道義、ヴァイオリン:ボリス・ベルキン
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の祝300回定期公演。オール・ショスタコーヴィチ・ プログラムである。特に、ヴァイオリン協奏曲第1番、交響曲第1番は金沢初演である。期待して石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはあったようだが、到着が遅れ、不明。
 コンサート1曲目は、ショスタコーヴィチ:バレエ組曲「黄金時代」。OEKは弦楽5部が10-8-6-6-4の対象配置。定期公演300回記念であろう一回り大きくした中編成。第 1回定期公演の団員規模を思い興すと隔世の感である。第1楽章Introduction(Allegro non troppo)は、Overtureの雰囲気充分で、中間部から金管群の咆哮と共に、井上 道義マエストロも「のりのり」で、踊るマエストロの面目躍如。第2楽章Adagioは、イントロのオーボエ・ソロに続いてヤングさん、フルートのソロが綺麗。プログラム にあるサン=サ−ンス:「サムソンとデリア」等との比較については分からなかった。しかし、この部分がそれに近いのかなとの感触は感じられた。第3楽章Polka(Allegretto) は、イントロの木琴が新鮮。ショスタコービィチらしく、故岩城宏之マエストロ好み。中間部以降はプログラムにある通り「音楽の冗談」を感じさせる。第4楽章Danseは、 フルート、ピッコロ・ソロが際立ち、バレエ音楽のフィナーレを飾るに相応しい文字通りのDanseで締め括った。
 コンサート第2曲目はショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番。第1楽章Noctune(Moderato)は、チェロのユニゾンによるイントロにボリス・ベルキンさんの ソロが加わり、綺麗なDuo。ボリス・ベルキンさんのヴァイオリンはボローニャのロベルト・レガッツィとの事。この楽器はショスタコービィチと相性が良く、しかもボリ ス・ベルキンさんのMeisterとしての力量を十分発揮させる名器のようで、夜想曲は綺麗に纏まった。第2楽章Scherzo(Allegro)は、一転してヴァイオリン・ソロにテクニッ クが必要とされる難楽章。ボリス・ベルキンさんはヴィオラのような音を奏でたり、飛ばし弓の技巧等多彩。この楽章は主に弦楽で演奏されたが、フィナーレ近くでホルン のユニゾンが入る。これも綺麗であった。第3楽章Passacaglia(Andante)は、古い舞曲パッサカリア。イントロはホルンとティンパニーとのDuo。続いて、金管楽器、及び ファゴットとのDuo。続くトランペットのユニゾンは少々難点。OEKのトランペットは以前には問題なかった筈。修正して欲しい。終曲近くのロベルト・レガッツィさんによるカ デンツァは凄かった。誰のカデンツァかは分からないが、兎に角難曲を熱演した。フィナーレに至る高揚も充分で、パッサカリアを終了した。プログラムに無かったattaca で続く第4楽章Burlesque(Allegro con brio-Presto)は快速。Burlesqueは、フランス語で「道化た」、「滑稽な」という意味。一気呵成怒涛の演奏で終了した。ボリス・ ベルキンさんとこれを指揮した井上道義マエストロとの記念碑的演奏であった。
 
   休憩を挟んで、コンサート3曲目は、ショスタコーヴィチ:交響曲第1番。ショスタコーヴィチがレニングラード音楽院を卒業する際の卒業作品、事実上彼のデビュー 作品との事。第1楽章Allegretto - Allegro non troppoのイントロはトランペット。中間部から金管群が加わり咆哮。是ならチャイコフスキーも可能だと思わせる演奏。 第2楽章Allegroは、ピアノが加わる。高揚の後一旦停止し、ティンパニーで終了。第3楽章Lento - Largo - attaca:は、プログラムにある通り「浪漫の音像」。オー ボエ・ソロにチェロ・ソロが加わり、日本で言うと「大正浪漫」。小太鼓の連打中にattacaで繋がる第4楽章Lento - Allegro moltoは、確かに重々しい。金管群が咆哮し、 ヤングさんのソロも秀逸。一旦停止の後Codaにはカンタさんの綺麗なチェロ・ソロも挿入され、金管群の咆哮と共に一気にフィナーレ。OEKのサイズもかく有るべしと感じ させる熱演であった。

 アンコールは、チャイコフスキーの歌劇『エフゲニー・オネーギン』第3幕の「ポロネーズ」。金管楽器が重量感有る演奏で、井上道義マエストロは2階バルコニー 席の山出前金沢市長に会釈をして終了した。300回を契機にOEKの名称はその儘に、しかし構成は室内管弦楽団からの脱皮を目指すべきであることを印象付けたコンサート であった。


Last updated on May 13, 2011.
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