110422

4月22日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第299回定期公演PH
リーダー&ヴァイオリン:安永徹、 ピアノ:市野あゆみ、神永睦子
ヴァイオリン:サイモン・ブレンディス、江原千絵、ヴォーン・ヒューズ、チェロ:ルドヴィート・カンタ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 音楽の友誌4月号「あなたが好きな日本のオーケストラは?」の13位に入ったオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演。お馴染みの元ベルリンフィル・コンサート・マスター安永徹 さんによるヴィヴァルディとモーツアルトの協奏曲第10番シリーズ。OEKも一流オーケストラ級の演奏を聞かせるようになったが、基本は室内楽である。 典雅な室内 楽に期待して石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはあったようだが、到着が遅れ、不明。
 コンサート1曲目は、モーツァルト:2台のピアノのための協奏曲(ピアノ協奏曲第10番)。第1楽章Allegroは、イントロが少々乾いた感じ。OEKの弦楽5部は8-6- 4-4-2の対象配置だが、ヴィオラは舞台向かって右。チェロとコントラバスは左という配置。この所為か、コンサート第1曲イントロ不安定症候群の再発かは分からな い。しかし、二台のピアノの演奏開始によってこの難点は解消された。ピアノTは市野あゆみさん、ピアノUは神永睦子さんらしい。石川県立音楽堂にはスタインウェイ& サンズ、ヤマハ、河合製の3台のグランドピアノが有る筈。誰がどのピアノを使用したかについて、耳を凝らして聞いてみたが、分からなかった。中間部におけるホ ルンのユニゾンは問題無し。第2楽章Andanteは、2台のピアノが効果的で、しかも夢見心地。中間部でオーボエも加わって典雅。第3楽章Rondo(Allegro)は、2台の ピアノの掛け合いの妙。モーツァルトはどのように作曲したのか気になるところ。2台のピアノによるカデンツァの後、tuttiで軽快に終了した。
 
   休憩を挟んで、コンサート2曲目は、ヴィヴァルディ:協奏曲集「調和の幻想」より4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲第10番。弦楽合奏版を使用したらし くOEK全員が加わる。但し、ソリストは4人のヴァイオリニストと1人のチェリストである。第1楽章Allegroは、リーダーの安永徹さんとヴァイオリンのサイモン・ブレンディス さんの技巧が際立つ。第2楽章Largoは、安永徹さんとカンタさんのチェロのデュオが綺麗。第3楽章Allegroは、どこから第3楽章になったのか分かりにかったが、ヴ ィヴァルディらしく軽快に終了。
 3曲目はウェーベルン:弦楽四重奏曲「緩徐楽章」。この曲は「弦楽四重奏のための緩徐楽章」が原題。しかし、これも弦楽合奏版を用いたため「緩徐楽章」という タイトルになったものと思われる。ウェーベルンはウィキペディアによれば「シェーンベルクやベルクと並んで新ウィーン楽派の中核メンバーであり、なおかつ20世紀 前半の作曲家として最も前衛的な作風を展開した」とある。いわゆる12音技法である。しかし、聞いてみるとウェーベルンの代表作ではあるが、12音技法らしくな い。即ち、まだ12音技法に到っていない「無調音楽」らしい。これをOEKの弦楽部門が丁寧に演奏。終わりはチェロのピチカートで終了。秀逸であった。
 4曲目はハイドン:交響曲第10番ではなく、92番「オックスフォード」。彼がオックスフォード大学から名誉博士号を授与された時に作曲したもので、イギリスで は有名な音楽とのこと。第1楽章Adagio - Allegro spiritosoは、イントロがAdagioだけに静かに、そして優雅に始まる。もう、イントロ不安定症候群は解消されている。 安永さんの弾き振りも的確で、中間部からのAllegro spiritosoも重厚で、格調高い。第2楽章Adagioは、オックスフォードの伝統を表すのか荘厳である。ホルンも無難。 この曲は一旦停止が多く、この楽章で4回あった。第3楽章Allegrettoは、プログラムで「密度の高いメヌエット」とあるやや早めのメヌエット。第4楽章Presto は、出だし快速。ティンパニーも切れ味鋭い。一旦停止3回で、颯爽と終了した。

 アンコールは、メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲(シンフォニア)第10番。安永徹さんが言ったようにメンデルスゾーンの若き日の作品らしい。従って、静 かなイントロから溌剌とした中間部に変わり、後半部ではヴィオラのユニゾンが印象的。フィナーレはヴィヴァルディ風に終了した。さて、今回はウェーベルンという作 曲家を紹介してくれた訳だが、ウェーベルンには「パッサカリア」、交響曲等日本では余り知られていない作品が多い。同時代のベルク(難解ではあるが)の作品も含めて、 機会があれば紹介して欲しいものである。


Last updated on Apr. 22, 2011.
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