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情熱的なスペイン交響曲と題するオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の定期公演。ラ
ロの名曲「スペイン交響曲」ではソリストとして高校生郷古廉君を迎え、井上道義マエストロが指揮する。郷古廉君のヴァイオリンと初めて聞くドビュッシーの「小組
曲」に期待して石川県立音楽堂に出掛けた。
プレ・コンサートはシューベルト:弦楽四重奏曲第9番とのこと。綺麗な曲であった。
コンサート1曲目は、ロッシーニ:歌劇「アルジェのイタリア女」序曲。イントロのクラリネット・ソロ、中間部のフルート・ソロが華麗。OEKの弦楽5部は8-6-4-4-
2の対象配置で、井上道義マエストロの踊りも健在。2曲目は、フランス近代音楽のエスプリ、ルーセル:「小組曲」。1.「朝の歌」は、グリーグ:《ペール・ギュン
ト》の「朝の気分」とは一味違う情緒ある曲。2.「田園曲」は、最初は少々騒々しい雰囲気だが、中間部以降はタイトル通り牧歌的。3.「仮面舞踏会」はMascarade
の雰囲気をファゴットが受け持ち、フランス風洒脱さ溢れる演奏。3曲目はドビュッシー(ビュセール編曲):「小組曲」。これは難しい曲で、1.「小舟にて」
Andantinoのイントロでは、不協和音が現れる。2.「行列」Moderatoはイントロでホルンが安定感ある演奏。3.「メヌエット」Menuetから4.「バレー」
BalletはAttaccaで繋がっていたようで、プログラムにある通り「新感覚」。即ち、ショスタコーヴィチ風。但し、ショスタコーヴィチは後の世代だから、ショスタコ
ーヴィチがドビュッシー風なのかもしれない。ワルツを挟み、一転して静かに終了した。
休憩を挟んで、2曲目はラロ:「スペイン交響曲」。宮城県多賀城市生まれの高校2年生郷古廉君がソリストを務める。第1楽章はAllegro non troppo。イントロのジ
プシー風部分では、少々OEKとの意思疎通が薄弱であったかなという印象はある。しかし、ダイナミックさ溢れる演奏で、若々しい。第2楽章Scherzando(Allegro molto)
では、スペインの民族色を郷古廉君が大人びた演奏で表現。第3楽章Intermezzo(Allegretto non troppo)は、哀愁を帯びた情緒豊かな演奏。第4楽章Andanteは、プログ
ラムにあるしみじみとした情感を上手く表現。出色であった。第5楽章Allegroは、難しい箇所も無難にこなし、高校生らしからぬ演奏を披露した。
アンコール1曲目は、井上道義マエストロが曲目を言ったのだが、聞き取れず不明。しかし、オーボエ・ソロが綺麗な、静かな曲であった。2曲目は郷古廉君に
よるバッハのソナタもしくはパルティータ。何番かは不明だが、彼のソロは相当上手い。即ち、大器であり、今後が楽しみである。将来、オーケストラとの共演を積み
重ねれば、出色のヴァイオリニストに育つものと思う。東日本大震災にめげず精進して欲しいものである。