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2月20日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第295回定期公演PH
指揮:ニコラス・クレーマー、 ソプラノ:小林沙羅、バリトン:与那城敬
合唱:オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団、石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)によるフランス作曲家シリーズ。ニコラス・クレ ーマー・マエストロがラヴェル、ラモーとフォーレの曲を指揮する。フォーレの「レクイエム」は、金沢では3度目になる。しかし、ニコラス・クレーマー流の「レ クイエム」をと思い石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはハイドン:弦楽四重奏曲第38番「冗談」。一旦停止有り、急にアップ・テンポという難しい曲。第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、 ヴィオラが女性、チェロのみ男性という編成で、テクニック的にも優れ、しかも綺麗な演奏であった。
 コンサート1曲目は、ラヴェル:「亡き王女のためのパヴァーヌ」。ウィキペディアによればパヴァーヌとは「16世紀のヨーロッパに普及した行列舞踏」とのこと。ラヴェルはバレー音楽「マ・メール・ロア」で「眠り の森の美女のパヴァーヌ」を書いている。しかし、こちらの方が有名。OEKの弦楽五部は8-6-4-4-2の通常配置。コン・マスはヤングさん。イントロのホルン・ソロは 少々乱れたが、中間部のフルート・ソロで持ち直し、最後はppで綺麗に締め括った。2曲目は、「クラブサン合奏曲集」、プロローグと5幕の抒情悲劇「ダルダニュ ス」等で知られているラモーの歌劇「プラテ(Platee)」組曲。Plateeとはフランス語で「一皿」、「一鉢」の意味。しかし、プログラムによれば「プラテ」は森の精 とのこと。序曲-パントマイムのアリア-バレエのアリア-嵐-陽気な馬鹿と哀れな馬鹿のアリア-メヌエット-リゴ−ドンと続いた。陽気な馬鹿と哀れな馬鹿のアリアは 何を意味しているのか良く分からなかった。但し、全体を通して中々の曲。更に、最終曲リゴードンではソプラノの小林沙羅さんがアリアを歌う。日本では余り知ら れていないラモーは、フランスのヴィヴァルディであり、フランス的洒脱さと華麗さを併せ持つ作曲家との再認識を得た。しかも、合唱指揮:本山秀毅さんの指導が 行き届いたのか、合唱はffのオペラ合唱団を目指さず、押さえた上品な歌声。これが効果的であった。又、フランス語の発音が中々のもの。最後のet bons jours(エ  ボ ジュール)も綺麗に発音され、ラヴェルと一味違った上品なパヴァーヌを聞かせてくれた。

 休憩を挟んで、4曲目はフォーレの「レクイエム」。パイプ・オルガンが入り、コン・マスはヤングさんよりニコラス・クレーマー・マエストロの関係らしき人に交代。 1.Introitus-Kyrie(入祭唱とキリエ)は、そのパイプ・オルガンが効果的で、今まで、何故小さなオルガンを使ってきたのだろうかと思わせる。中間部のffとpとの急変 をニコラス・クレーマー・マエストロは的確に指揮。尚、パイプ・オルガン奏者は指揮者に背を向けていたのだが、指揮者の停止合図にピッタリ終わったのには感心。 モニターが有ったのか、真実は不明。2.Offertorium(奉献唱)では、小林沙羅さんのソプラノ・ソロが綺麗。ラモーのリゴードンと異なりアラン・クレマンのボーイ・ ソプラノを髣髴とさせる歌声。この辺りだったか、私には涙が溢れてきた。それほど感動的だったといえる。最後のAmenも、ヴェルディの「レクイエムと名付られた歌 劇」とは全く異なる上品なAmen。3.Sanctus(サンクトゥス)は、やはりソプラノの押さえた声は上品。Hosannaの部分ではトランペットとトロンボーンが華麗。4.Pie Jesu(ピエ・イエズ)ではパイプ・オルガンとソプラノ・ソロの共演が秀逸。但し、ソプラノ・ソロである小林沙羅さんの"R"の発音は日本人的。もう少し巻き舌を使っ た方がと思った。しかし、ここは日本。5.Agus Dei(アニュス・デイ)においては、合唱のテノール部門がやはり押さえた上品な歌声。6.Libera Me(リベラ・メ)では、 与那城敬さんのバリトン・ソロが舞台前と最後には後ろにと立ち位置を変えて効果的に歌う。しかも、私はフォーレの「レクイエム」ではDies illa(怒りの日)は無い ものと思っていたのだが、Libera Meに有ることを発見。終曲7.In Paradisum(天国にて)は、ソプラノのユニゾンが感動的。pppの"Requiem"で終了した。今まで2度聞 いたフォーレの「レクイエム」はなんだったのかと思わせる。即ち、パイプ・オルガンを効果的に使いながら、しかも声楽を押さえて歌わせた上品さはニコラス・クレ ーマー・マエストロによって初めて実現した訳である。

 アンコールは、無し。さて、私は、ミシェル・コルボ指揮ベルン交響楽団、ボーイ・ソプラノとしてアラン・クレマンが歌うフォーレ:「レクイエム」のCDを 持っている。今回のレクイエムはそれに匹敵する演奏だったと言える。願わくばボーイ・ソプラノがビロードの歌声を持つOEKエンジェルコーラスから生まれ、可憐な 歌声を聞かせてくれる日の来ることを願うものである。


Last updated on Feb. 20, 2011.
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