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若きマエストロ・ケン・シェがオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)
を指揮する。ソリストに吉田恭子さんを迎えてチャイコフスキーのヴァイオリン協
奏曲である。所で、我等が郷土の生んだ偉大な哲学者西田幾多郎『思索と体験』岩波文庫に、「ベルグソンは万物を情味ある直観の流れの中に溶解
して、同一の思想を発揮しているようである。氏の哲学は実に音楽的である」とある。即ち、西田哲学における音楽とは「万物を情味ある直観の流
れの中に溶解して、同一の思想を発揮すること」だそうだ。これを確かめに石川県立音楽堂に出掛けた。
プレ・コンサートは、管楽器五重奏によるハイドン:管楽器のためのディヴェルティメント変ロ長調。第2楽章はどこかで聞いたことの有
る曲。そうだ、ブラームス:「ハイドンの主題による変奏曲」である。2曲目はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」から。これもバレーの1シー
ンを連想させる曲であり、フルート、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルンによる演奏の面白さを実感させた。
コンサート1曲目は、シューマン:序曲、スケルツォとフィナーレ。OEKは8-6-4-4-2の対象配置。チェロのカンタさんはお休み。イントロは暗い。
しかし、プログラム記載のとおり音楽が次第に膨張し、中間部で長調に転調したらしく、明るくなる。スケルツォは3拍子を感じさせない3拍子。
フィナーレは中々力強い。ffから一旦pにデクレッシェンドし、コーダに入る。コーダも綺麗に終了した。ケン・シェ・マエストロは若手だけにffは
実に力強い。後はpを如何に聞かせるか-これが課題かもしれない。
2曲目はソリストに真紅の衣装を着込んだ吉田恭子さんを迎えてのチャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲。第1楽章はAllegro moderato。
彼女のヴァイオリンはややヴィオラっぽい楽器の所為か低音が綺麗であり、演奏も上品である。OEKはホルンが4人となり、堂々たる演奏。コント
ラバスのピチカートとヴァイオリン・ソロの2重奏も綺麗。カデンツァは聞きなれない曲であったが、彼女はこれを巧みに演奏した。第2楽章
Canzonetta(Andante)は、AndanteというよりはAdagioに近い緩い曲想。優雅である。第3楽章Finale(allegro vivacissimo)は、Attaccaで繋が
るが、これもてきぱき、切れ味も鋭く演奏。フィナーレはOEK共々熱演で終了した。