100904

9月4日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第286回定期公演PH
指揮、 井上道義、ピアノ:加古隆、チェロ:ルドヴィート・カンタ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

English
スマホ版へ

 イワキ・メモリアルコンサートと題したオ−ケストラ・アンサンブル金 沢(OEK)2010-2011シーズン定期公演フィルハーモニーシリーズの第1回。井上道義マエストロが指揮し、ソリスト には我等がOEKのルドヴィート・カンタさんと加古隆さんを迎える。まだまだ残暑の厳しい本年だが、2ヶ月振りのOEKに期待して、石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはジャン=マリー・ルクレールによる2台のヴァイオリンのためのソナタ第3番。 ウィキペディアによれば「ジャン=マリー・ルクレール(Jean-Marie Leclair, 1697年5月10日 リヨン - 1764年10月22日 パリ)は、バロック 音楽の作曲家で、18世紀フランスにおけるヴァイオリン演奏の巨匠である。フランス=ベルギー・ヴァイオリン楽派の創始者と見做されている」 とのこと。コンサートマスターのサイモン・ブレンディスさんとトロイ・グーギンスさんは急-緩-急の3楽章を優雅に演奏した。
 コンサートの前にルドヴィート・カンタさんへの岩城賞授与式があった。さて、コンサート1曲目は、ハイドン:交響曲第103番「太鼓連打(Drum Roll)」。 OEKは8-6-4-4-2の対象配置。第1楽章Adagio-Allegro con spirito-Adagioのイントロは太鼓連打。但し、これは少々遠慮気味。その後チェロ、コン トラバスによるユニゾン。これは重量感たっぷりで、しかも井上道義マエストロの踊りも健在であった。第1楽章フィナーレ近くのDrum Rollは元気も出てきたようで、迫力あり。 第2楽章Andante piu tosto allegrettoでは、サイモン・ブレンディスさんのソロが綺麗。第3楽章Menuet-Trio-Menuetは、イントロの後ホルンのユニ ゾンがあるが、少々温和しい。しかし、これもフィナーレ近くの2度目には解消されていた。第4楽章Finale:allegro con spiritoは、フィナーレ らしく軽快で、颯爽と終了した。
 2曲目は、我等がOEKのカンタさんをソリストに迎えてのサン=サーンス:チェロ協奏曲第1番。第1部はAllegro non troppo-Animato-Allegro molto- TempoTは、馥郁としたカンタさんのソロ。テンポの速い箇所のテクニックは充分。遅い、聞かせる箇所も心に沁みる熱演。Attaccaで繋がる第2部 Allegretto con motoへの移行は、スムーズ。カンタさんのテクニックも冴え渡る。やはりAttaccaで続く第3部TempoT-Un peu moins vite-Piu allegro comme le premier mouvement-molto allegroは、イントロのクラリネット・ソロが印象的。カンタさんによるソロも怒涛の演奏。途中、オーケ ストラの音にかき消される箇所もあった。しかし、コーダのソロを華麗に演奏し、OEK首席奏者をソリストに迎えた協奏曲は立派に終了した。カンタさん には首席奏者の肩書きに「ソリスト」を加えなければならない。

 休憩を挟んで、加古隆シリーズの最初の曲は加古隆さんのピアノとサイモン・ブレンディスさんのヴァイオリンによるDuoで始まる「黄昏のワルツ」。 Duoの後OEKの演奏も加わり、しかもパイプオルガンに照明も入り、幻想的。続いて「ポエジー 〜グリーンスリーヴス」は加古隆さんとOEKによるピアノ 協奏曲。中間の変奏の部分では、現代的リズムによる加古節が披露され、印象的。「フェニックス」はダイナミックな加古節。次は、OEKの演奏による加古 隆さん作曲の「ヴァーミリオン・スケープ 〜朱の風景」、World Premiereである。T 暁光のイントロは珍しいコントラバスのユニゾン。U リトミコ (Ritomico)は、イタリア語Ritmico(律動の)の誤りか。フルート・ソロは綺麗。V ヴァーミリオン・スケープ(Vermilion Scape)は、将に打楽器の競演。 故岩城宏之マエストロ好みの曲である。W オスティナート(Ostinato)は、チェロとコントラバスによるffのオスティナート。オスティナートは何もpと 決まって居る訳ではないが、Ritmicoなオスティナートである。X 瑞雲は雰囲気がぴったりで、ppで終了した。ppで始まる曲はppで終わるのだが、fで始 まって、ppで終わる。将に加古隆さんの現代曲である。

 アンコールは、時間の関係か無し。岩城賞授与式などやらずにカンタさんによるアンコールの方が良かったと思った次第。時間配分には充分気を 付けて欲しいものである。


Last updated on Sep. 04, 2010.
2010年コンサート・レビューへ