100709

7月9日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第284回定期公演PH
指揮、 高関健、ヴァイオリン:渡辺玲子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 高関健マエストロがオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)を指揮 する「玲瓏(れいろう)で知的な音楽性」と題したコンサート。五嶋みどりさんが弦を切りながら演奏したという伝説のバーンスタイン:「セレナード」に期 待して、石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートは打楽器での演奏が行われたらしいのだが、私の入場が遅れ、曲目は不明。コンサート1曲目は、ワイルの交響曲第2番。OEKは 8-6-4-4-2の対象配置。第1楽章Sostenuto - Allegro moltoのイントロは、ヴィオラが良く聞こえ、ドイツ的交響曲とは一味違う。最初のホルン・ ソロは硬かった。しかし、中間部で調子出る。高関マエストロは丁寧な指揮で好感。第2楽章Largoは、ティンパニーで始まる葬送行進曲。 カンタさんのチェロ・ソロ綺麗。第3楽章Allegro vivaceは唯一の快速楽章。スピード感と迫力があり、大オーケストラ並の演奏。中間部では、ホ ルンとトロンボーンの掛け合いがぴたりと決まり、第1ヴァイオリンのユニゾンも綺麗。余り山の無い曲を華麗に聞かせた高関マエストロは、小澤 征爾マエストロに師事したとの事。納得の指揮であった。
 2曲目は、バーンスタイン:「セレナード」(プラトンの『饗宴(ΣΥΜΠΟΣΙΟΝ)、共に飲む』による、独奏ヴァイオリン、弦楽オーケストラ、 ハープと打楽器のための)。各楽章はプラトンの『饗宴』に出てくる「愛(エロス、ερωζ)を賛辞する演説者の名前である。第1楽章は「序曲」の 役を勤めるファイドロス(Φαιδροζ)-パウサニアス(Παυσανιαζ)。渡辺玲子さんのソロで開始。現代風の序曲が終わり、テンポがやや 速くなる。ヴァイオリン・ソロは技巧が必要な曲であり、フィナーレ近くでは弦を擦り、弦が切れそうな演奏。しかし、弦は切れず無事終了。第2 楽章アリストファネス(Αριστοφανηζ)は、副題に有る如くヴァイオリン・ソロとハープの掛け合いが素敵。第3楽章エリュキシマコスでは、 打楽器がイントロを飾り、賑やかな饗宴と早口の演説を再現。第4楽章アガトンは、一転してpで、穏やかなイントロ。中間部は弦楽のみで、これ も綺麗。フィナーレ近くではヴァイオリン・ソロのカデンツァ。これは異次元空間に浮遊するかの如く、夢見心地。第5楽章ソクラテス(Σωκρα τηζ)-アルキビアデスは、イントロで鐘が鳴る。ソクラテスの登場か。曲想は第4曲と異なり荘厳。中間部で渡辺玲子さんのヴァイオリンとカンタ さんのチェロによるデュオがあった。これは超綺麗。コントラバスとのデュオを含む多彩な内容の後、圧倒的フィナーレで終了した。高関マエスト ロによる華麗な演奏を引き出した名演であった。

 休憩を挟んで、3曲目はハイドンによる交響曲第90番。第1楽章はAdagio - Allegro assai。ホルンとトランペットを舞台向かって右側に集めた 配置。右半分に重心が移動したかと思わせた。ところが、金管を集めた効果か、却って安定感。中間部のフルート・ソロ綺麗。高関マエストロは1、2曲と異 なり、落ち着いた演奏を披露。ハイドンはこうであるとの主張。第2楽章Andanteでは、イントロの第1ヴァイオリンのユニゾンが 綺麗。ここでも、フルート・ソロは出色。第3楽章Menuetto - Trioでは、オーボエ・ソロが綺麗。フィナ−レ近くで、コントラバスを含む五重奏が あった。ハイドンは交響曲も凄いけど、四重奏曲、五重奏曲も綺麗だ。第4楽章Allegro assaiは軽やかに始まる。3分辺りの一旦終了したかと思わ せる箇所で、拍手があった。しかし、これは仕方が無いであろう。ところが、終曲の部分で拍手をしたところ、高関マエストロはまだあるとの事。家 に帰ってCDを聞いてみると、高関マエストロの勘違いらしく、やはり終了していたのだと思う。しかしながら、ハイドンを綺麗に演奏させた手腕に感 心させられた演奏だったと言えよう。

 アンコールは、同じくハイドンによる交響曲第90番第4楽章の一旦停止まで。今度は、3分で終了した。クラシック演奏会は拍手のしどころ が難しい。間違ったら、こりごり。従って、コンサートにはもう行かない等と言わず、間違っても愛嬌だと思い、色んな人がコンサートに来てくれる ことを祈りながら会場を後にした。


Last updated on Jul. 09, 2010.
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