100505314

5月5日ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2010公演番号314
パリ室内管弦楽団、指揮:ジョセフ・スウェンセン、ピアノ:ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2010公演番号314としてパリ室内管弦楽団によるメンデルスゾーンの交響曲と シューマンのピアノ協奏曲。イ短調とイ長調の競演である。オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のモデル といわれるジョセフ・スウェンセン指揮パリ室内管弦楽団(Ensemble Orchestral de Paris)の演奏に期待して、公演番号334の開催ホール金沢市アートホールから石川県立音楽堂へ移動した。

 コンサート1曲目は、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」。第1楽章Allegro vivaceのイントロは透明感溢れる演奏。パリ室内管弦楽団の弦楽5部は8-7-6-5-3だったと思 うが、軽やかでも有り、しかもフィルハーモニー管弦楽団並みの ボリュームもある。OEKも斯く有るべきと思わせる演奏である。指揮者のジョセフ・スウェンセン・マエストロは、盛 り上げるように、体を大きく使い、しかも的確な指揮を披露。公演番号334は全てAm(イ短調)だっただけにイ長調は心地良い。Amの交響曲第3番「スコットランド」を選択しなくて良か ったと思われる。第1楽章と第2楽章の間に聴衆が入場し、スウェンセン・マエストロはしばし中断して待つという事態が発生し、興ざめとなった。今後途中入場は禁止して欲し い。第2楽章Vivace non troppoは、ホルンの出も滑らか。若手が多いパリ室内管弦楽団の構成だ。しかし、各パートの実力は凄いと実感させられる演奏である。この楽章は、短調に転調して いるようだが、音色は明るい。第3楽章Adagioは、ファゴットのファンファーレのようなユニゾンが綺麗で、印象的。第4楽章はSaltarello. Presto。サルタレロはローマやナポリで流 行した急速な民俗舞曲らしい。イントロは「真夏の夜の夢」に似た曲想で流麗。コーダには、「スコットランド」のテーマが挿入され、華やかに終了した。

 2曲目は、シューマンのピアノ協奏曲。第1楽章Allegro affettuosoは、いきなりピアノ・ソロが入る。ピアノ・ソロは若手のジャン=フレデリック・ヌーブルジェさん。今回の座席は舞 台向かって左側2階バルコニー席。このお陰でヌーブルジェさんのピアノ演奏が良く見える。細い指をしたピアニストで、指がしなる。第1楽章終了前のカデンツァでも技巧派ぶりを 発揮し、華麗に終了。短い第2楽章Intermezzo(Andante grazioso)では、シューマンの音の構成がピアノ演奏で良く分かる。即ち、ピアノ演奏では、あまり高い音、低い音は 少なく、中音域で終止している。シューマンの特徴といえるのだろうか。尚、この楽章におけるオーボエとピアノとの掛け合いは絶妙であった。何処から第3楽章かは分かりにくい。し かし、いつの間にかattaccaで続く第3楽章Allegro vivaceである。ボリューム感溢れる楽章で、ピアノ・ソロのテクニックも素晴らしく、盛り上がりは最高潮。将に「熱狂」裡に終了し た。

 アンコールはヌーブルジェさんによる、ショパン(だと思う)。アルペジオ奏法が綺麗な曲であった。アンコールをもう1曲と思ったが、クロージング・コンサートがあるらしく時間 切れ。今度はゆっくり聞いてみたい気がする演奏であった。さて、パリ室内管弦楽団を聞いた訳だが、やはり素晴らしい。OEKも多少の増員と演奏技術の向上を図り、パリ室内管弦楽 団に迫って欲しいものである。尚、公演番号314の演奏順序について、ドイツ音楽に慣れた日本では疑問の向きが有るかもしれない。しかし、ロッシーニの歌劇では第1幕前の前奏曲を "Sinfonia"と書いてある。つまり、"Symphony"は声楽の無い演奏のみの音楽で、歌劇の最初に演奏された訳であり、協奏曲の前での演奏は問題無いと思われる。


Last updated on May 05, 2010.
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