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1月7日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第274回定期公演PH
指揮:井上道義、ソプラノ:メラニー・ホリデイ、テノール:ズリンコ・ソチョ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 2010年オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のニューイヤー・コンサートである。 最初の曲ショスタコーヴィチ:ジャズ組曲第2番より「第1ダンス」に期待し、 石川県立音楽堂に出掛けた。

 到着が遅くて、プレ・コンサートは聞けずじまい。
 1曲目は、ショスタコーヴィチのジャズ組曲第2番より「第1ダンス」。OEKの弦楽は5部は8-6-4-4-2の対象配置で、ホルンが4管、トロンボーン、チューバ付という編 成であり、最初の曲としては華麗な出だし。中間部はピアノとシンバルが効果的で、OEKの得意なジャンルだけに軽快な演奏。2曲目はR.シュトルツ:「プラター 公園は花ざかり」。余り聞いたことの無い曲だが、ソプラノのメラニー・ホリデイさんの熱唱。井上 道義マエストロのワルツも素敵。続いてショスタコーヴィチに戻りジャズ組曲第2番より「リリック・ワルツ」。サクソフォンのデュオが綺麗で、 中間部はOEKの音の伸びが印象的。
 4曲目はJ.シュトラウスU:オペレッタ「ヴェネツィアの一夜」から「心から挨拶を贈ろう」。テノール:ズリンコ・ソチョ さんの熱演。ソチョさんはクロアチア出身との事。赤と白のチェック模様を思い出す。それはさておき中々の声量。オペラで聞いてみたい気がした。5曲目はオッフェン バック:オペラ「ホフマン物語」から「舟歌」。この曲は、オペラ「ホフマン物語」では、二重唱と合唱が入る。この二重唱は女性二重唱なので、今 回はOEKの演奏のみ。ハープが綺麗だった。

シェーンブルン宮殿、ウィーン
6曲目は、ジーツィンスキー「ウィーン、我が夢の街」。メラニー・ホリデイさんとズリンコ・ソチョさんの二重唱。デュオで聞くの初めてだ。しかし、 息の合ったデュオで、綺麗であった。
 次は、J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲第2楽章Largo, ma non tanto。この曲は、コレッリ風で、綺麗なパ ストラル。何故この曲が選択されたかと思うに、パストラルとして中間に挿入されたと思われる。不思議ではない。しかし、この曲は第2楽章のみでなく、最初の チラシにあった第3楽章までの協奏曲全曲演奏をしても善かったと思われる。即ち、OEKには後半のチャイコフスキーよりバッハが似合うのである。続いてJ.シュトラウ スUによるオペレッタ「ヴェネツィアの一夜」から「アンネン・ポルカ」。演奏のみとメラニー・ホリデイさんに声楽入りの2曲が披露された。メラニー・ホリ ディさんのコミカルな歌唱が素晴らしい。前半最後は、同じくJ.シュトラウスUによるオペレッタ「こうもり」から「シャンパンの歌」。本年のウィーン・フィ ルによるニューイヤー・コンサートで聞いたような曲だ。こちらは二重唱が加わり、華麗。

 休憩を挟んで、10曲目は、J.シュトラウスUの無窮動。例の「オーケストラがやってきた」の部分は4管から2管、再び4管に戻ったホルンのユニゾン。こ れは綺麗であった。続いて「メリー・ウィドウ」で有名なレハール:オペレッタ「ほほえみの国」から「私たちの心にだれが恋を沈めたのか」。二重唱が素敵で、 コンサート・マスター:マイケル・ダウスさんのソロも綺麗。12曲目はスッペのオペレッタ「美しいガラテア」序曲。最初はスッペらしく行進曲風であった が、ホルン・ソロ、チェロのピチカートからワルツとなる。トロンボーンを含む金管は華麗な演奏を披露した。再びレハールに戻り、オペレッタ「ほほえみの国」 から「君はわが心のすべて」。テノールソロ:ズリンコ・ソチョさんの堂々たる歌唱。
 14曲目は、オペレッタ「ジュディッタ」から「私の唇にあなたは熱 いキスをした」。メラニー・ホリデイさんの2度目の「お色直し」で、青の衣装。中間部に「ハバネラ」が入りスペイン風。カスタネットが効果的であった。15 曲目はチャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」第2楽章Allegro con grazia。この曲が問題であった。最初の部分では5拍子に乱れが生じ、低音が聞こえないと いう、惨憺たる演奏。チャイコフスキーによる「ワルツに成れない」5拍子を選択したのは善い。しかし、この曲を演奏するには最低でも弦楽5部を10-8-6-4-4構 成にする必要がある。しかも演奏はメリハリが無く、平坦であった為余計「悲観的」。即ち、室内楽団と交響楽団の「2兎を追う者は1兎をも得ず」を如実に示し ている。但し、後半は持ち直し、ヴィオラ・ユニゾンが綺麗な演奏を披露したことを付記する。最後の曲は、余り知られていないカールマン:オペレッタ「チャー ルダーシュの女王」より「踊りたい」。二重唱が素敵な、フィナーレであった。

 アンコール曲は、J.シュトラウスUの「美しき青きドナウ」。定番である。2曲目は、レハールの「メリーウィドウ」から「ワルツと二重唱「私の友、理性」 らしい。華麗なニューイヤー・コンサートは終了した。さて、上述の「悲愴」である。OEKが今後室内オーケストラとして生きていくにはバッハの2つのヴァイオリン のための協奏曲を全曲演奏とし、チャイコフスキーの「悲愴」は外すべきである。チャイコフスキーを演奏したいのならOEKの名前は其の儘とし、弦楽5部を10-8-6-4-4 構成に増員する。そのどちらかを選択すべきと思う。尚、コンサート終了後金沢市弥生茶菓工房たろう製どらやきのプレゼントがあった。餡が上品な一品で、美味し く頂いた。ご馳走様でした。


Last updated on Jan. 07, 2010.
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