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11月28日オ−ケストラ・アンサン ブル金沢第271回定期公演PH
指揮:井上道義、共演:新日本フィルハーモニー交響楽団
メゾ・ソプラノ:バーナデット・キューレン
合唱:金沢・富山 マーラー特別合同合唱団
OEKエンジェルコーラス、AUBADEジュニア・コーラス
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)は、今回新日本フィルハーモニー交響楽団 (NJP)と共演でマーラーの交響曲第3番を演奏する。金沢では、リッカルド・シャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボ ウ管弦楽団で"The best"な演奏を聞いたことがある。今回は、日本のオーケストラと日本の指揮者井上道義マエストロによるマーラーの交響曲 第3番である。歌劇「トゥーランドット」で見せた大曲に強い井上道義マエストロに期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

 90分の大曲だけに、休憩無しでマーラーの交響曲第3番が始まる。第1楽章Kraftig.Entschieden(力強く決然と)は、イントロにおけるホルンのユニゾンで8人のホルン奏者間で少々ずれがあり、違和感。但し、 次のトロンボーン・ソロは素晴らしく、ここで持ち直す。OEKとNJPの弦楽5部は16-14-12-10-8らしく、対象配置で、音響は大迫力。井上道義マエストロの踊りも益々冴え、鳥の声を模したクラリネット(だと思う) の演奏も的確。チェロとコントラバスのユニゾンも綺麗。フィナーレ近くでイントロの主題が再現される。違和感は少々改善。チェロのユニゾンも綺麗で34分の大曲である第1楽章は終了した。ミスはあった。 しかし、中々の出来栄えである。
 ここまでが第1部であり、第2部は第2楽章以降である。ここで、第1パートはNJPに交代。即ち、コンサート・マスターはマイケル・ダウスさんから崔文洙さんに交代。第2楽章Tempo di Menuetto(Sehr massig) は、緩徐楽章。Jointオーケストラにしては弦が超綺麗。第3楽章Comodo. Scherzando(Ohne Hast)は、ポストホルン(ヨーロッパにおける郵便馬車のラッパ)のソロが良。ポストホルン奏者はプログラムに拠ればOEK のオッタビアーノ・クリストーフォリさんとのこと。聞きなれない名前。しかも、遠くから聞こえる音を表しているらしく舞台上に奏者は不在。終了後分かったのだが、舞台2Fパイプオルガンの裏辺りで演奏して いたらしい。音符を1つ飛ばしたようにも聞こえた。しかし、先ずは無難。第3楽章終了近くで合唱団とソリストが入場。ピッタリと第4楽章Sehr langsam(きわめてゆるやかに)は始まった。ソリストのバーナデッ ト・キューレンさんは、アルトではなく、メゾ・ソプラノ。従って、O Mensch!のOの音が少し高め。但し、その後持ち直し、中間部以降は歌唱力の片鱗を遺憾なく発揮し、ニーチェのEwigkeit(永遠)を歌い上げた。 第5楽章Lustig im Tempo und keck im Ausdruck(活発な速度で、表出は大胆に)は、子供達の合唱と女性合唱。ペテロの罪は神に祈ることにより、Seligkeit(至福)が齎されると軽やかな合唱を披露。将に癒しの楽 章であった。第6楽章Sehr langsam(きわめてゆるやかに)は、陶酔と耽美の極みとか、壮麗壮大とか色々評論される楽章である。私には、中間部のクレッシェンドした頂点における付点音符が、マーラー自身の「そ うなんだ、その通りだ」と自分自身で確信している感じが伝わって来て心地よい。再び戻ってくるトロンボーン・ソロ、クラリネット・ソロは綺麗。コーダ近くの頂点での音響も大迫力で、しかも感動的であった。 但し、第5楽章から第6楽章へはAttaccaで繋いだため、合唱団とソリストは起立のまま。子供達には少々きつかったようである。第5楽章終了後、合唱団とソリストへの着席の指示が欲しかった。又、第6楽章フ ィナーレの最後のティンパニーの音はfffの筈。前の音と同じに聞こえたのは、ティンパニーを壊さないためなのかもしれない。しかし、最後の音は最大にして欲しかった。
 
 さて、大曲は終了した。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏と比較すると、本日の演奏は少々のミスはあった。しかし、迫力の点ではロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を上回ったといえる。今後も、 室内楽ばかりでなく、本日のような重厚な交響曲も定期演奏会で取り上げて貰えると有り難い。但し、マーラー、ブルックナー等の交響曲と室内楽とのギャップには注意しなければならない。何故ならば、OEK本来 の構成に戻った場合、バランスを取り戻すのに時間が掛かることである。本日のような大曲の後のコンサートでは特に入念なゲネプロ、リハーサルを切望するものである。


Last updated on Nov. 28, 2009.
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