090725

7月25日オ−ケストラ・アンサン ブル金沢第265回定期公演PH
リーダー&ヴァイオリン:安永徹、ピアノ:市野あゆみ、トランペット:藤井幹人
チェロ:ルドヴィート・カンタ、オーボエ:加納律子、ファゴット:柳浦慎史
石川県立 音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 歌劇「トゥーランドット」の余韻覚め遣らぬ中「ベルリンの哲学」と題した演奏会をオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)が安永徹さん の弾き振りで行う。シューベルトの交響曲第5番もさることながら、OEK得意なショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番に期待して 石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートは無し。コンサート1曲目は、シューベルト:交響曲第5番。第1楽章Allegroは歌劇「トゥーランドット」との落差を感じさせぬ本来の音色で、pのイントロを無難に演奏。但し、少々重い思い 感じがした。この原因はOEKの弦楽5部が8-6-4-4-2構成で、対象配置だが、チェロとコントラバスの位置を舞台向かって左に配置した所為かもしれない。fになると違和感は無し。ホルンは2人であり、トランペット は無し。これが後述するシューベルトの交響曲第5番を1曲目に設定した要因と思われる。第2楽章Andante con motoは、プログラムにあった2箇所の転調の妙を堪能。第3楽章Menuetto:Allegro molto:Trioは、指揮 者がいないのに、いきなり早めのメヌエット(プログラムにある実質スケルツォ)をリーダーの安永徹さんがリード。上手い弾き振りである。第4楽章Allegro vivaceは快調。リズムが素晴らしい。コーダの部分も しっかりした演奏で、分かり易く終了した。
 2曲目は、ピアノの市野あゆみさん、トランペットとしてOEKの藤井幹人さんを迎えてのショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番。第1楽章Allegro moderato-Allegro vivaceのイントロは成功。市野あゆ みさんのピアノも的確。トランペット・ソロの藤井幹人さんは緊張気味であったが、問題無し。第2楽章Lento-Piumosso-Largo-Lentoは、ショスタコーヴィチ流の夢見心地。中間部にはピアノの市野あゆみさんが 熱演。第3楽章Moderatoは、一転して躍動感溢れる短い楽章。第4楽章Allegro brio-Prest-Allegretto poco moderatoでは、トランペット・ソロの藤井幹人さんのもう少々スピード感がという箇所もあった。しかし、 総合的には無難に演奏。しかも、コーダのトランペットソロは的確であり、フィナーレはショスタコーヴィチらしく不自然で、突然に終了。ピアノの市野あゆみさん、トランペットの藤井幹人さん、OEKの熱 演であった。

 休憩を挟んで、3曲目はハイドン:「協奏交響曲〜ヴァイオリン、チェロ、オーボエ、ファゴットとオーケストラのための」である。トランペットの藤井幹人さんは奏者として後列に参加。第1楽章Allegroは、 安永徹さんのヴァイオリン・ソロが綺麗。それに続くOEKの加納律子さんによるオーボエ、OEKの柳浦慎史によるファゴット・ソロも上手い。第2楽章Andanteは、OEKのルドヴィート・カンタさんによる馥郁とした チェロの音色を堪能。ファゴットとの掛け合いも絶妙。続くヴァイオリン・ソロは夢見心地。第3楽章Allegro con spiritoは、フィナーレ近くで、安永徹さんのヴァイオリンによるカデンツァがあり、これも綺麗。 コーダも堂々として終了した。尚、ティンパニーのトーマス・ オケーリーさんの演奏は、昔が想い出され、懐かしく、しかも的確な演奏であった。

 アンコールは、プッチーニの歌劇「マノン・レスコー」に素材を提供したといわれるプッチーニ:弦楽四重奏曲「菊」(弦楽合奏版)。マーラーのアダージェットを想い起こさせる綺麗な弦楽曲であった。さて、 「ベルリンの哲学」と題したコンサートを聞いた訳だ。私個人としては3曲目のハイドン:協奏交響曲を1曲目とし、1曲目のシューベルト:交響曲第5番を3曲目にした方が良かったと思った。しかし、そのように 出来なかった原因が分かった。それは、1曲目にハイドン:協奏交響曲を設定すると、トランペットの藤井幹人さんが1曲目を演奏した後、2曲目のショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番のソリストとして連続出 演しなければならないからである。これが安永徹さんのPhilosophy(独 Philosophie)であったのである。


Last updated on Jul. 25, 2009.
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