090626

6月26日オ−ケストラ・アンサン ブル金沢第263回定期公演PH
指揮:ギュンター・ピヒラー、ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 「モーツァルトとリヒャルト・シュトラウス」と題した演奏会をオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)がギュンター・ピヒラー指揮の 下で行う。モーツァルトのセレナーデ第12番もさることながら、ベートーヴェンの英雄交響曲からの「葬送行進曲」がその骨格をなすR. シュトラウス:「23の独奏弦楽器のためのメタモルフォーゼン(変容)」 がメインプログラムである。この曲に期待して石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートは無し。コンサート1曲目は、モーツァルト:セレナーデ第12番「ナハトムジーク」。第1楽章Allegroイントロは、ホルンも伸びやかに加わって成功。OEKは舞台向かって左からクラリネット、 ファゴット、ホルン、一番右にオーボエ各二人という配置。中間部から力感溢れる演奏を披露。ギュンター・ピヒラー・マエストロの厳格な指揮も好感。第2楽章Andanteイントロは、オーボエで、ユニゾンが 綺麗。艶も出てくる。第3楽章Menuetto in Canoneイントロはクラリネットで、クラリネット奏者の演奏は上手い。第4楽章Allegroは、クラリネット、オーボエが好調。ファゴットは余り目立たないが、引き立 て役で好演。フィナーレ近くでホルンのpでの演奏があった。これも良好。フィナーレも盛り上がり、華麗に終了した。

 2曲目は、ラドヴァン・ヴラトコヴィチさんをソリストに迎えたR. シュトラウス:ホルン協奏曲第1番。第1楽章Allegro-は、ラドヴァン・ヴラトコヴィチによるホルンの音色が違う。深みの ある、それでいて力強くもある。プログラムによるとロンドン・バックスマン製のダブルホルンを使用とのこと、。兎に角いい音である。バックのOEKも8-6-4-4-2対象配置で、力強い。ギュンター・ピヒラー ・マエストロの厳格さによるオーケストラ・コントールの良さが光る。第2楽章Andanteは、第1楽章よりテンポが遅くなるが、ここでの演奏も、伸び伸びした好演奏。第3楽章Allegro-Rondo. Allegroは、テン ポが速くなる。しかし、各音符を漏らさず的確に演奏するのには感心。凄いソリストである。アンコール曲は、モーツァルト:ホルン協奏曲第3番第3楽章Allegro。モーツァルトによるロンドである。ラドヴァン・ ヴラトコヴィチさんは反復音を巧みに演奏。ホルン奏者の名演に酔いしれたひと時であった。

 休憩を挟んで、3曲目は正確にはR. シュトラウス:「23の独奏弦楽器のためのメタモルフォーゼン(変容)」。この曲は、ミュンヘン、ドレスデン、ウィーン歌劇場が灰燼に帰したことへの哀悼の曲であるらしい。ヴ ァイオリン10、ヴィオラ5、チェロ5、コントラバス3の23人の弦楽奏者のための曲である。第1部Adagio ma Non Troppイントロは、チェロの荘厳な響きで開始された。チェロ5、コントラバス3であるだけに低音部 がよく響く。中間部はOEKに艶さえ感じる素晴らしさで、23人とは思えぬ演奏であった。5分53秒辺りからAttaccaで始まる第2部etwas fliessenderは、文字通り流れるような演奏で、 sfによるアクセントも効果的。コンサート・ミストレス・ヤングさんのソロも流麗。18分18秒辺りからAttaccaで始まる第3部Adagio -Tempo primoは、チェロのユニゾンが綺麗で、コーダ前の一旦停 止もぴたりと決まり、消え入るよう終了した。尚、最後のpppだが、CDで聴くと本当に消え入る音量である。しかし、石川県立音楽堂コンサートホールで聞くと音響の良さであろう、pppが少々大きく聞こえたのは 皮肉だろうか。

 アンコールは、無し。さて、「モーツァルトとリヒャルト・シュトラウス」と題したコンサートを聴いた訳だ。R. シュトラウスの「変容」終了後、ギュンター・ピヒラー・マエストロとコンサート・ミス トレス・ヤングさんの抱擁のシーンがあった。これはよく考えると、ミュンヘン、ドレスデン、ウィーン歌劇場を灰燼としたのはヤングさんの英国を含む連合国側であり、この抱擁は第2次世界大戦の和解を意味 していたのである。Dona nobis pacem.


Last updated on Jun. 26, 2009.
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