090306

3月6日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第257回定期公演M
指揮:井上道義、ヴァイオリン:神尾真由子
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 チャイコフスキー・コンクール一位の神尾真由子さんがブルッフのヴァイオリン協奏曲でオ−ケストラ・アン サンブル金沢(OEK)と協演する。私はフィルハーモニー会員なのだが、昨年末BSで放送されたチャイコフスキー・コンクールでの演奏が素晴らしかった為、彼女の演奏を聴いて みようとマイスターシリーズ3F席のチケットを入手し、石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレ・コンサートはコンサート・マスターの松井さんとチェロの大澤さんを含む弦楽四重奏曲。1曲目は2F到着時に拍手で終わった為不明。2曲目はモーツァルト弦楽四重奏曲 第16番第4楽章Allegro vivace。綺麗な曲で全曲聞きたい所だが、時間の所為で仕方が無い。

 コンサート1曲目は、ハイドン:交響曲第100番「軍隊」。第1楽章Adagio-Allegroは、イントロが少々遅めで、しかもpのためやや不安。OEKの弦楽5部はいまや定番となった8-6-4-4-2、対象配置。 オケーリーさんのティンパニーは小型を使用。その上、第1ヴァイオリンが遠慮気味だった為かオーケストラ自体の音量は不足。これは、OEKにおける例の1曲目イントロ不安定症候群が 再現された形。しかし、井上道義マエストロの踊りは健在で、中間部より第1ヴァイオリンも調子を取り戻し、徐々に良くなってきた。第2楽章Allegrettoイントロは、少々曲の感じが異 なる。これは、楽譜の版が異なるためか、マエストロの翻案か、ピリオド奏法の所為か良く分からなかった。しかし、どうも、ピリオド奏法の為らしい。ハイドンの時代にはこのように演奏 されたのかもしれない。第3楽章Menuet:Moderato-Trio-Menuetでもニュアンスを異にする演奏箇所が有った。但し、問題は無し。中間部のトランペット・ソロはしっかりした演奏。第4楽章 Finale:Prestoでは、第1楽章の不安定さも解消され、堂々とFinaleを締め括った。
 2曲目は、愈愈ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。第1楽章Vorspiel:Allegro moderato-attacca:は、やはり旬の神尾真由子さんの演奏で引き立つ。彼女は黒いドレス(流行なのかもしれな い)に身を包み、切れ味鋭く、しかも冴えがあり、ffで突っ走るでもなく、引きも弁えた「凛とした」演奏であった。OEKはホルンが4管、オケーリーさんのティンパニーは大型になる。中間 部ではマエストロが盛んに彼女とオーケストラに対してアジテートを行い、OEKも元気が出てくる。attaccaで続く第2楽章Adagioは、叙情的で夢見心地。第3楽章Finale: Allegro coergico-Prestは、一気呵成の音楽。彼女はこれを、見事に弾きこなした。アンコールはパガニーニ:カプリース(奇想曲)第13番Allegro。技術的に難しい曲をきっちり演奏、但し、 彼女は技術的にこだわった所為か、最初の叙情的部分では情感が多少不足したのは贅沢な要求か。

 休憩を挟んで、3曲目は、ビゼー:劇音楽「アルルの女」組曲。この曲は第1組曲と第2組曲がある。マエストロは演奏順序を編修し直した為、順不同。最初は、第1組曲第1曲前奏曲 Prelude:Allegro deciso。OEKはトランペット4管、トロンボーン3管と金管を増設。従って、迫力ある演奏。イントロにおけるホルンのユニゾンが綺麗。2番目は第2組曲第1曲Pastorale:Andante sostenuto assai-Andantino-Tempo T。イントロでは珍しいサクソフォンが田園風景を伸びやかに演奏、次いでハープのアルペジオも綺麗。続いて、第2曲Intermezzo: Andante moderato ma non moto- Allegro moderatoは中間部のフルート・ソロが素敵。次は、戻って第1組曲第2曲Menuetto:Allegro giocoso。ホルン等の金管が活躍し、OEKもボリュームを上げる。但し、金管部門が活躍し、曲が盛り 上がると、弦楽部門のボリューム不足は否めない。5番目は、メロドラマ(全曲版から)という曲。この曲は第1、第2組曲を更に纏めた曲らしい。フルートとヴィオラ主席の綺麗なデュオの後、アダー ジェット。弦楽4部が見事な演奏を披露。続いて、第1組曲第4曲Carillon:Allegro moderato-Andantino-Tempo T。金管部門が好演。7番目は第2組曲第3曲Menuet:Andante quasi allegretto。 有名なフルート・ソロが綺麗。最後にフルート・ソロが戻ってくる。長いソロに付き少々息切れ。しかし、無難に終了。最後は第2組曲第4曲Farandole:Allegro deciso。Farandoleとはフランス Provence地方に始まったといわれる8分の6拍子の快活な舞踏;踊り手はみな手をつなぎ、またはハンカチを持ちながら形を作って踊る(研究社新英和大辞典より)舞曲らしい。イントロから元気の 出る曲想で、フィナーレは迫力有り、堂々と終了した。OEKは室内オーケストラから管弦楽団、又は交響楽団へ変身したいとの意思表示であった。即ち、OEKの名前はその儘としても、弦楽5部を 10-8-6-4-4編成、トロンボーン部門を増設した方が良い。兎に角、ハイドンに始まって、ブルッフ、ビゼーと綺麗な曲を並べたプログラムは終了した。

 アンコールは、最後の曲Farandole。何回聞いても心躍る曲である。さて、久し振りにマイスターシリーズを聞いた訳だが、フィルハーモニーシリーズとは異なった雰囲気で、マイスターに 相応コンサートであったと言えよう。マイスターシリーズにおける、更なるプログラム作りに期待したい。


Last updated on Mar. 06, 2009.
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