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1月17日金沢大学フィルハーモニー管弦楽団第69回定期演奏会
指揮:齋藤一郎、 金沢歌劇座

酢谷琢磨

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 金大フィルがブルックナーを演奏する。金沢でブルックナーは中々聞けないので、金沢歌劇座に出掛けた。

 1曲目は、C. サン=サーンス:「バッカナール」(歌劇《サムソンとデリラ》から)。金大フィルの弦は16-16-13-12-9構成、管は3管編成と大編成であり、ヴィオラが右手前という配置。この曲はテンポの速い曲であり、切れ味を心配した。しかし、若さ溢れ、 スピード感ある演奏で安心。クレッシェンドも綺麗、ffの部分は金管が咆哮し、ボリューム感ある演奏。ホルン部門は少々上がった所為か、音の出だしが不安定。しかし、齋藤一郎マエストロの指揮は的確であり、それに応えた学生オーケストラとしては まずまずの出来だったといえる。
 2曲目はA. ハチャトゥリアン:組曲「仮面舞踏会」。第1曲Waltzは、下品ではなく、ロシア風マスカレードの雰囲気を上手く演奏。第2曲Nocturneは、イントロの弦が多少弱いのが気に掛かる。チェロに少々欠陥ありと思われた。しかし、コンサート ミストレス津田真里さんのソロは綺麗であった。第3曲Mazurkaは、テンポが速く演奏も的確。ところが、第4曲Romanceでテンポが遅くなると、弦に違和感が生じ、このオーケストラはテンポの速い曲に向いていることを証明した。第5曲Galopはテンポ が早くて、的確。木琴の演奏も出色であった。

 休憩を挟んで、いよいよA. ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」、ノヴァ−ク版である。弦は15-14-15-9-6(プログラムによる)編成。第1楽章Bewegt, nicht zu schnellは、ff部分におけるトロンボーン、トランペット、チューバの金管楽器の 咆哮が素晴らしい。しかし、ffの後に来るpの部分に少々問題あり。従って、このffの後のpの部分をもう少し丁寧に演奏すれば立派なオーケストラになると感じられた。第2楽章Andante quasi Allegrettoは、pの部分でチェロのユニゾンに少々問題あり。第 3楽章Scherzo(Bewegt) & Trio(Nicht zu schnell. Keinesfalls schleppend)は、ホルンが例の狩の音楽を奏でる。最初の狩の音楽には違和感有り。但し、2度目は上手くクリア。第4楽章Finale(Bewegt, doch nicht zu schnell)は、やはりff部分は一流 オーケストラに負けぬ演奏だが、pになると欠点が見えてくる。しかし、コーダでは。マーラの交響曲第1番第4楽章のようにホルン奏者が起立して演奏し、これは大成功。曲が終わっての印象は、ホルンとチェロに少々練習不足を感じたものの、金管が咆哮 するff部分は立派なブルックナーの交響曲に仕上がったと感じられた。

 アンコール曲は、時間が無かった所為か無し。さて、金沢にブルックナーを啓蒙した母校金大フィルの演奏だが、問題は沢山有る。しかし、ブルックナーを演奏した意義は大きく、しかもチケット代が前売り800円と低額であり、以前同志社女子大 によるサン=サーンスの交響曲第3番をチケット代1000円で聞いたことがあるのと同様、800円でブルックナーを聞けたのは僥倖と言えよう。但し、金大フィルに更なる研鑽を望むのは私だけではないだろう。


Last updated on Jan. 17, 2009.
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