081009

10月9日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第248回定期公演PH
指揮:ドミトリ・キタエンコ、ピアノ: 小山実稚恵
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 久し振りのプリンシパル・ゲストコンダクター:ドミトリ・キタエンコ・マエストロ。オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)による今や伝説となったショスタコーヴィチ:交響曲第9番の夢をもう一度と思い、 石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートは有ったような、無かったようなで不明。コンサート1曲目はヴィラ=ロボスによるバッキアーナス・ブラジル(ブラジル風バッハ)第9番Preludio e Fuga。OEKは弦楽のみで8-6-4-4-2編成。コントラバスだけ中央後ろの対象配置。OEKの弱点=コンサート1曲目の イントロも無難に通過。ドミトリ・キタエンコ・エストロは背筋をピンと伸ばし、指揮は的確。イントロに続く第1主題だと思うが、ヴィオラ・ソロが綺麗。フーガの後半とコーダの部分は少々ボリューム不足気味であった。しかし、第1ヴァイオリン、ヴィオラが好演で綺麗に纏ま った。尚、プログラムにあった11/8拍子がどこからどこまで11拍なのか分からなかったが、これもドミトリ・キタエンコ・エストロの指揮の旨さの所為であろう。
 2曲目は有名なグリーグのピアノ協奏曲。第1楽章Allegro molto moderatoは、小山実稚恵さんのピアノの出だしが 力強く、しかも迫力、スピード感有り。途中夢見心地の部分も有り、小山実稚恵は勿論力強さだけで無く、優雅さも持ち合わせていることを証明。金管のユニゾンで多少の乱れがあったものの、フィナーレ近くのカデンツァは好演。第1楽章フィナーレはチャイコフスキー風で、 一見全曲が終了したかの感がある。この部分のffをfに落として演奏するかと思いきや、ドミトリ・キタエンコ・マエストロは細工をせずffで終了。聴衆から拍手が起こるかと思ったが、拍手は無し。ホッ。第2楽章Adagio前半はショパン風で、夢見心地。第3楽章Allegro moderato molto e marcatoは果敢な攻めの演奏で、やはり好演。アンコールは、スクリャーピンの「左手のための2つの小品 2.ノクターン」。綺麗な演奏であった。「左手のためのピアノ協奏曲」としてはラヴェルが有名である。次の機会に聞きたいものだ。

 休憩を挟んで、3曲目は、オーソドックスなベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。私は何故ドミトリ・キタエンコ・マエストロが田園を選んだのか分からなかったのだが、聞いているうちに理解できた。即ち、現在のOEKにベストな曲なのである。第1楽章Allegro ma non troppoは 綺麗。OEKはコントラバスを1人増やし、弦楽8-6-4-4-3構成。金管は2管編成。第2楽章Andante molto mossoは、プログラムにあった「しみじみ心を癒す旋律」そのもの。尚、フィナーレ近くのカッコのところで、客席からノイズ。これでOEKの演奏が少々不安げになったのには恐縮。OEKの コンサートでは楽章中、楽章間でのノイズが酷すぎる。依然指摘したように、ウィーン・フィルのライブ録音を聞いてみると、一切ノイズは無い。カットしてあるのかもしれないが、聴衆のマナーの良さは充分窺い知れ る。OEKのコンサートでも斯くありたいものだ。第3楽章Allegroでは、ホルンの演奏が綺麗。第4楽章Allegroは、第1曲のようにボリューム不足かと心配していたが、心配無用であり、大型のティンパニーも問題なし。第5楽章Allegrettoはチェロのピチカートが綺麗で、全体的にも 充実感溢れる演奏となった。

 アンコール曲は、シベリウスの「悲しみのワルツ」。綺麗な曲で、ドミトリ・キタエンコ・エストロの意図(OEKにベストな選曲)の明確な締め括りであった。さて、今回分かったことはOEKがモーツァルトからベートーヴェンへと進化したのである。その進化を、ブランクは 有ったものの、如実に示してくれたのがドミトリ・キタエンコ・エストロであったと思われる。1月にも振るらしいが、次回も期待したい。


Last updated on Oct. 09, 2008.
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