5月28日NHK交響楽団金沢公演
指揮:小泉和裕、オルガン:シルヴァン・エリ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ホンダのロボット、アシモがデトロイト・フィルハーモニーを指揮して「見果てぬ夢」を演奏したらしい。一方、N響 石川県立音楽堂のパイプオルガンを用いて、ロボットには指揮できないであろうヘンデルのオルガン協奏曲を演奏する。久しくパイプオルガンを聞いていないので、重厚さを味わおうと石川県立音楽堂に出掛けた。

 コンサート1曲目は、モーツァル:歌劇「フィガロの結婚」序曲。N響はモーツァルト用に、編成を縮小し、弦楽は10-8-6-4-4の対象配置。オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)程度の構成で、聴衆 も聞きやすい。但し、N響は慣れないのか、やや不安気。この曲は良く突っ走る指揮者がいるが、小泉マエストロは中庸。
 2曲目は、ヘンデルのオルガン協奏曲作品4第6番。N響の弦楽は8-4-4-2-2編成と更に縮小。オルガニストのシルヴァン・エリは、指揮者の見えない 舞台上部のパイプオルガン鍵盤を用いて演奏した(アシストが一人付いていた)。パイプオルガンは、サブ鍵盤としての小型オルガンを指揮者の見える舞台上に設置できる筈。石川県立音楽堂にも早く設置して欲しいものだ。さて、ヘンデルのオルガン協奏曲は、パイプオルガン の荘厳さは余り強調されない作品であり、急緩急の3楽章編成。シルヴァン・エリの演奏は、少々違和感ある箇所もあったが、第3楽章Allegro moderatoでは華やかさを演出。協奏曲自体は短く、あっさり終了した。もう少し聴きたい気がした。しかし、ヘンデルのオルガン 協奏曲は全て短く、15分程度なのだから仕方がない。尚、シルヴァン・エリは、札幌コンサートホールKitaraの専属オルガニストだそうだ。石川県立音楽堂にも宝の持ち腐れにならぬよう、厳選した専属オルガニスト を配置して貰いたい。
 3曲目は、ヘンデルの水上の音楽(ハーティ版)。N響の弦楽は10-8-6-4-4編成。水上の音楽は、第1組曲から第3組曲まで計22曲からなるが、これを6曲構成にしたものとの事。3-1曲目は、序曲ではなく第1組曲Allegroから始まった。ホルンは 4本であったが多少遠慮気味。3-2曲目は、第1組曲のAir。シチリアーノに似た優雅な旋律で、 弦楽が好演。3-3曲は第1組曲のMinuet。この辺りで、N響も少人数編成に慣れてきて、華麗な演奏。3-4曲目は、私も確認が出来なかった(この辺りから何曲目か分からなくなった)。しかし、ピチカートの綺麗な曲であった。こうなったら3-6曲目は、Alla hornpipeと当たりを つけていたら、その通り。最終曲はトランペットが花を添えた華麗なAlla hornpipe。コーダでは小泉マエストロが大きく手を振り上げフィナーレを暗示。6曲終わったのだと明確に分かる指揮であった。

 休憩を挟んで、4曲目は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」。N響はフル編成の弦楽12-10-8-6-6構成。第1楽章Adagio - Allegro moltoは、編成が本来の大きさに戻り、迫力ある演奏。第2楽章Largoは、オーボエの「家路」が綺麗。又、途中一旦停止も効果的。 但し、この楽章のpの部分における客席のノイズがひどく、興ざめ。自粛して貰いたい。第3楽章Molto vivaceは、フルート、ピッコロが熱演で、華麗な舞曲を演出。第4楽章は、金管部門、即ちトロンボーン、トランペットが迫力ある、それでいて規律ある演奏を披露。 チャイコフスキーの交響曲を演奏したらロシアの交響楽団に引けを取らないのではと思わせる演奏であった。
 
 アンコール曲は、ドヴォルザークのスラブ舞曲集作品72第2番。弦楽が綺麗に演奏し、「新世界から」の金管部門の迫力ある演奏に加え、弦楽部門も綺麗であることをアピールした。さすが、 レコード芸術5月号におけるオーケストラ・ランキングに入るだけの実力はある。但し、次回は選曲をグレードアップし、サン・サーンスの交響曲第3番、ブルックナーの交響曲等の演奏を要望したい。


Last updated on May 28, 2008.
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