5月10日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第241回定期公演PH
指揮:ジャン=ルイ・フォレスティエ、ピアノ:鶴見彩
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008の余韻未だ覚め遣らぬ中、オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)のフィルハーモニー・シリーズ定期公演である。今回は、 フランス音楽が取り上げられる。最近は、ドイツ音楽が多かったので、フランス音楽の洒脱さを味わおうと石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートの弦楽四重奏曲は短かい曲で、大澤さんが解説していたのだが、聞き取れず、曲名は不明。
コンサート1曲目は、ロッシーニ:歌劇「絹のはしご」序曲。OEKは8-6-4-4-2の対象配置。ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭 2008の連続演奏で鍛えられたのか、OEKの出足好調。しかも、プレ・トークで言及のあったロッシーニ・クレッシェンドが効果的であった。
 2曲目は、金沢市出身の鶴見彩さんをソリストに迎えてのサン=サーンス:ピアノ協奏曲第2番。第1楽章 Andante sostenutoは鶴見彩さんのドレスもさることながら、ソナタ形式の第1主題は厳か、第2主題は綺麗。しかも2、3オクターブであろう高音が綺麗。カデンツァも華麗。第2楽章Allegro scherzandは、ピアノ軽快。第3楽章Prestoは、日本的な 主題が現れ、ピアノ颯爽。アンコール曲はプーランクの15の即興曲より「エディット・ピアフのオマージュ(hommage, 敬意)」という曲。余りエディット・ピアフ的な感じはしなかったが、好演。

 休憩を挟んで、3曲目はラヴェルの組曲「クープランの墓」。第3-1曲Preludeは、オーボエが綺麗。第3-2曲Forianeは、洒脱。第3-3曲Menuetは、フルートが綺麗で、ハープが効果的。第3-4曲Rigaudonは、急遽指揮を依頼されたのであろう ジャン=ルイ・フォレスティエ・マエストロが体を折り曲げて、音量を落とすよう指示をした箇所があった。しかし、余り音量は下がらず、そのまま進行。ここは極端に音量を落とし、その後ffにすると更に曲を引き立てたと思われるので、残念。但し、 コーダの切れ味は中々のものであった。
 4曲目は、同じくラヴェルの組曲「マ・メール・ロア」、マザー・グースである。バレエ音楽と組曲では曲の順序が異なるらしく、プログラムは混乱。本レビューも順序が違うかもしれないが、悪しからず。第4-1曲「眠れる森の美女のパヴァーヌ」は、気だるさが前面に出た パヴァーヌ。パヴァーヌではラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」が有名であるが、この曲は、更にテンポが遅く、官能的。第4-2曲は、「親指小僧」。私のCDでは「一寸法師、Petit poucet」とあるが、「親指小僧」、「親指太郎(フランス童話の主人公)」、 「小男」の何れでも良さそうである。さて、この第4-2曲はpで演奏される弦楽が綺麗で、しかも木琴が印象的。第4-3曲「美女と野獣」では、ファゴットの演奏する野獣が凄い。一方、クラリネットの美女の方は、淡白美人。第4-4曲「パコダの女王レドロネット」では、 小鳥のさえずりであろうか、打楽器で綺麗な音が印象的。第4-5曲「妖精の園」ではコンサート・マスターのサイモン・ヴレンディスさんのソロとヴィオラ・ソロが綺麗。フィナーレは高揚感溢れ、厳然と終曲。ハープも含めて打楽器が活躍する曲であった。 ジャン=ルイ・フォレスティエ・マエストロはフランス人だけにラヴェルの曲を見事に仕上げたが、故岩城宏之マエストロに振らせて見たい気がしたのは私だけであろうか。

 アンコール曲は、もう一度「クープランの墓」のRigaudonが演奏された。ここでは前述の音量低下指示の箇所で、少々音量が低下した。しかし、これでも強弱の対比はいまいち。次回はもっと徹底したほうが良いと思われる。さて、今回のOEKは、 ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008を契機に更に飛躍したフランス音楽を聞かせてくれた。しかし、レコード芸術誌のオーケストラ・ランキングに選ばれるよう、更なる研鑽を望みたい。


Last updated on May 10, 2008.
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