5月3日ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008公演番号113
指揮:ロルフ・ベック、ピアノ:ウルリケ・バイヤー、
ソプラノ:カタリーナ・ライヘ、メゾソプラノ:ウィープケ・レームクール
ルチア・ドゥッチョノーヴァ、アルト:ウィープケ・レームクール
テノール: シュテファン・ツェルク、ペーター・ポツェルト
バス:有馬牧太郎、合唱:シュレスヴィヒ= ホルシュタイン音楽祭合唱団
管弦楽:オ−ケストラ・アンサンブル金沢
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008が賑々しく開催されている。本公演113は、シューベルトのミサ曲第4番とベートーヴェンの交響曲第9番に改変され、後のブゾーニに 影響を与えたであろうベートーヴェンの「合唱幻想曲」、正確には「ピアノ、合唱とオーケストラのための幻想曲」が取り上げられる。オ−ケストラ・アンサン ブル金沢(OEK)の2月のフィルハーモニーシリーズを指揮した、シュレスヴィヒ-ホルシュタイン音楽祭音楽監督のロルフ・ベック・マエストロがシュレスヴィヒ-ホルシュタイン音楽祭合唱団を率いて公演する。「熱狂の日」の雰囲気を味わ おうと石川県立音楽堂に出掛けた。

 金沢駅東口に着くと、もてなしドームでは埼玉栄高校のブラスバンド演奏が行われていて、ラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008の雰囲気は上々。
 コンサート1曲目は、シューベルトのミサ曲第4番。典礼通りKyrieから 始まった。OEKは、8-6-0-4-2、即ちヴィオラ抜きの対象配置。ヴィオラの代わりにオルガンが入る。その所為か、最初の部分でヴァイオリンに違和感あり(連続公演なのでリハーサル不足は仕方がない)。しかし、合唱団は男性28名、女性32名で、中々の出来。特にソプラノは、高く上昇する 伸びのある音質で好演。Gloriaは、ベートーヴェンの突っ走るGloriaと違い中庸で、簡潔。Credoでは、Et incarnatusの部分で合唱が好演。Benedictusは、モーツァルト、ベートーヴェンと異なる独自色が出て、しかも綺麗。Agnus Deiではソリ ストただ一人の日本人バス有馬さんが好演で、25分間のミサ曲が終了した。シューベルトのミサ曲も美しい。

 2曲目は、ベートーヴェンの「合唱幻想曲」。OEKは今度はヴィオラが入り、8-6-4-4-2構成。イントロのAdagioは、ピアノソロで開始される。ピアノソロが続く部分で違和感有り。但し、それ以降は完璧。ピアニスト・ウルリケ・ バイヤーさんは、どうも合唱団専属ピアニストではないかと思われる。だとすると、無難にこなしたと言えるのではないだろうか。さて、第3楽章Adagio ma non troppo、第4楽章Marcia, assai vivace - Allegroでオーケストラが入る。この部分 はモーツァルトの歌劇「魔笛」に出て来る旋律に似ている。第5楽章Allegro, ma non troppoと第6楽章Prestoでは、ソリストと合唱団が後の交響曲第9番になる旋律を歌う。最初の六重唱(女性三重唱か)が綺麗であった。フィナーレ近くでは 「第九」同様力強く、荘厳に歌われる。即ち、この曲はベートーヴェンがモーツァルトの影響から独自の「第九」へ至る過程を知る上で貴重な曲と言えるのである。尚、この曲はソリストが6人で、合唱団からの抜擢もあった。これは、海外では 普通で、日本でも自前のソリストを輩出できるよう合唱団のレベルアップを図って欲しいものである。
 さて、「合唱幻想曲」ではChristoph Kuffner(?)の歌詞が用いられている。その最後には"Lohnt dem Menschen Gottergunst"とある。「人類に神の恵みを」という意味である。

 アンコール曲は、終了が6時になり、無し。さて、今回のラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭2008には、3歳以上の子供達も入場できた筈である。しかし、本公演に来場した子供達は静かで、殆ど騒音は無し。料金を低減し、0才から入場 可でも良かったと思う(ヤングママには嬉しいサービス)。料金については、本公演はソリスト、シュレスヴィヒ-ホルシュタイン音楽祭合唱団を招待した関係か、2500円と高価であった。1500円の低料金を標榜したのである。経費を節減し、1500円を遵守すべき であった。最後に、外国の音楽祭では、フェスティバルの意味だと思われるf と染め抜かれたシンプルなバナーが登場する。今後の参考にして欲しい。


Last updated on May 03, 2008.
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