4月26日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第240回定期公演M
指揮&ピアノ:ラルフ・ゴトーニ
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 3月のオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)フィルハーモニー・シリーズ定期公演と出張がぶつかって、出席できない旨メールを入れたら本日のマイスター・ シリーズ定期公演の振替チケットが送られてきた。この振り替えサービスは非常にうれしい。但し、欠席したチケットを廃棄してしまい、迷惑を掛けてしまった。欠席する場合は欠席チケットを保管しておき、振り替え券と交換し なければならないのだ。欠席者は充分注意して頂きたい。さて、今回のマイスター・シリーズは珍しいシュニトケの曲も演奏される。従って、何はさておき 石川県立音楽堂に出掛けた。

 プレ・コンサートはベートーヴェンの弦楽四重奏曲第4番第1楽章Allegro ma non tanto。この曲がブラームスの弦楽六重奏曲に影響を与えたことが分った。2曲目は、同じくベートーヴェンの弦楽四重奏のためのソナタ第20番。聞いた ことの無い曲である。しかし、ヤングさん、カンタさんを含む弦楽四重奏曲は上品で、華麗。
 
 コンサート1曲目は、エルガーの弦楽のためのセレナード。弦楽は8-6-4-4-2で、通常配置。対象配置が続いただけに、却って新鮮。第1楽章イントロはチェロから始まり綺麗。ラルフ・ゴトーニ・マエストロの指揮も歌うような指揮で、 pに抑える箇所での指揮も的確で、上手い。第2楽章は、「愛の挨拶」を書いたエルガーらしい曲想で、綺麗。第3楽章は民謡風との解説である。スコットランド風か、アイルランド風か分らなかったが、これも綺麗。フィナーレはppで消え入る ように終了。先ずは無難。
 2曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲第14番。ラルフ・ゴトーニ・マエストロの弾き振りである。第1楽章Allegro vivaceは、出だし荘厳で、素敵。ラルフ・ゴトーニはピアニストなのである。私は、ザルツ ブルグで、バレンボイムの弾き振りを聞いたことがある。ラルフ・ゴトーニの弾き振りはバレンボイムに比較しても遜色が無い、いやそれ以上である。カンデンツァはベートーヴェンのように聞こえたが、中々の演奏。第2楽章Andanteは、 ラルフ・ゴトーニのピアノと弦楽の掛け合いが的確。第3楽章Allegro ma non troppoは、ヘンデルの「メサイア」の41曲LET US BREAK THUNDER BONDS ASUNDERに似ている事が分った。しかし、勿論モーツァルトらしく軽やかに、コーダも 大げさでなく、突然に終了した。アンコール曲はラルフ・ゴトーニ・マエストロのピアノによる「イスラエルのメロデーによる即興曲」との曲。ほんの僅かであったが、もう少し聴きたい曲であった。

 休憩を挟んで、シュニトケのピアノと弦楽のための協奏曲。これは凄かった。イントロはピアノの可憐な独奏で開始され、程なく不協和音が入る。現代曲である。その後綺麗なアルペッジオが挿入され、オーケストラはブルックナー風断続音を奏でる。 続いてピアノがプリペアード・ピアノのような打楽器音で高揚させる。その後、コントラバスによる弓でコントラバスの胴を叩く音(これは当日発売されていたラルフ・ゴトーニのCDで聴き直すと別の打楽器音が入っているので、コントラバスは 代用であったらしい)が効果的に挿入される。中間部のピアノソロは情緒的な部分もあり、強弱の対比が妙。フィナーレ近くになると、コラール風となり、最後は、哀愁を帯びた旋律にイントロのピアノソロが再現され、静かに終了。現代曲がうまい OEKならではの演奏で、名演奏としてOEK史に燦然と輝くであろう、素晴らしい演奏であった。
 コンサート最後の曲は、モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」。第1楽章Allegro con spiritoは、クラリネットの先導が綺麗。第2楽章(Andante)は、 今度はヴァイオリンが先導し、これも綺麗。尚、プログラムには、「この楽章は貴族趣味の瀟洒な合奏の典型」とある。成る程、モーツァルトの時代には協奏曲、交響曲は貴族の音楽であり、市民の音楽になったのは歌劇「魔笛」なのである。さて、 第3楽章Menuettoは、前回モーツァルトによる交響曲第38番「プラハ」のメヌエットなしを聞いただけに、メヌエットは新鮮。第4楽章Finale. Prestoは、トランペットと大太鼓が熱演で、OEK得意のモーツァルトの交響曲は終了した。

 アンコール曲は、マンフール・ゲオルグ(間違えているかもしれない)による「マルムステンウェルレター(これも間違えているかもしれない)」という聞きなれない曲。ラルフ・ゴトーニ・マエストロの母国フィンランドの民謡かとも思える、 ヴァイオリンのピチカートが綺麗な曲であった。さて、私は通常石川県立音楽堂におけるOEKのコンサートは、2階席で聞いているが、今回は振り替え席で、1階の前列に座ることが出来た。この席から舞台を見ると、パイプオルガンがすごく壮麗 に見えた。ラ・フォル・ジュルネ金沢もさることながら、早くN響のオルガン協奏曲を聞きたいものである。


Last updated on Apr. 26, 2008.
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