3月7日金沢歌劇座館名改称記念歌劇「カルメン」
指揮:本名徹次、管弦楽: オーケストラ・アンサンブル金沢
金沢歌劇座

酢谷琢磨

English
PC版へ

カルメン・プログラム表紙
 確か、ビゼー:歌劇「カルメン」が旧金沢市観光会館で上演されたのは、ジプシーの本場チェコ共和国ブルノ歌劇場の引越し公演であった思う。今回は、ソリスト を除き、自前であるオ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)、金沢カペラ合唱団並びに子供達によるOEKエンジェルコーラスで歌劇「カルメン」が上演される。今後に期待を 込めて金沢歌劇座へ出掛けた。

 第1幕前奏曲のイントロは、スピード感溢れる演奏で開始された。しかし、前奏曲中間部は金沢歌劇座に慣れていない所為か、音色が希薄で、不安。この不安感は第3幕で解消する。OEKの弦楽は8-6-4-4-2編成だったと 思う。金沢歌劇座は低音が響かないホールであり、しかもオーケストラ・ボックスに余裕があった筈だ。従って、弦楽を10-8-6-4-4、もしくは10-8-6-6-4、即ち弦楽部門を一回り増やし、しかも低音部を強化すべきだった。第1幕 第2番「行進曲と街の子供たちの合唱」は、子供たちのOEKエンジェルコーラスが小気味良く、爽やか。合唱の金沢カペラ合唱団も、ボリューム感満点で最高。愈々、第1幕中間部の「ハバネラ」。石川県出身のメゾ・ソプラノ(だと思うが)小泉詠子さんの アリアは、OEKの最初の不安感を払拭。続くミカエラとドン・ホセの二重奏も中々の出来で、第1幕を終了。

 15分の休憩を挟んで、第2幕。舞台装置が第1幕と全く一緒には落胆。しかし、第2幕への間奏曲はファゴットが好演し、期待感を抱かせる。第2幕13番はエスカミーリョの「闘牛士の歌」。金沢大学准教授の安藤常光さんのソロ。 しかし、安藤さんは上がったのか、フランス語の発音が不鮮明。しかも、合唱団に押され気味で、よく聞こえない箇所もあり、少々不安。これも、第3幕には解消する。その後の第14番五重唱は出色。次いで、志田雄啓さん演じるドン・ホセによる 「花の歌」。これは、素晴らしいアリアで、圧巻。

 20分の休憩の後、第3幕が開始。舞台装置はやはり同じ。しかし、最初の間奏曲はフルート・ソロが凛とし、綺麗。中間部には第21番ミカエルのアリアがある。ソプラノの岩田志貴子さんのソロで、コロラトゥーラというより、 それを越えたベル・カント唱法が冴え、華麗。尚、第3幕フィナーレで遠くからエスカミーリョの「闘牛士の歌」が聞こえるが、ここは安藤さんも復調し、音吐朗々であった。
 小休止を挟み、第4幕が開始。カルメンとドン・ホセの熱演で、フィナーレはカルメンが倒れ、悲劇は終了。最初は多少不安感の内に始まった「カルメン」であったが、終わってみると地元主体のオペラにしては、指揮の本名徹次マエストロの指揮も的確で、 中々のレベルのオペラに仕上がったと感じさせる公演であった。

 尚、舞台・衣装は金沢美大、照明は北陸先端科技大学院大学、ヘアメークは金沢ビューティーアカデミーの学生が担当したとの事。その為か、若々しく、現代的で、しかも深みのある舞台に仕上がった。しかし、彼らの所為ではないのだが、第1幕から第4幕 まで舞台装置は全く同一は、如何なものであろうか。予算の都合であろうが、折角、15分と20分の休憩を取ったのだから、舞台装置を変えて気分転換すべきであった。これが唯一の欠点。12月にはプッチーニの「ラ・ボエーム」が公演されるそうである。 今回のレベルより、もう少しレベルアップを図れば、入場料をS, A, B席共1000円ずつupしても適わないと思われる。舞台装置が切り替わる次回の公演に期待したい。


Last updated on Mar. 07, 2008.
2008年オペラ・レビュー2008年へ