2月24日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第236回定期公演PH
指揮:ロルフ・ベック、ソプラノ:カロリーナ・ウルリヒ、アルト:ウィーブケ・ レームクール
テノール:藤井雄介、バス:有馬牧太郎、合唱:オーケストラ・アンサンブル金沢合唱団
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 シュレスヴィヒ-ホルシュタイン音楽祭を指揮してきたロルフ・ベックが、オ−ケストラ・アンサンブル金沢(OEK)とOEK合唱団を率い、モーツァルト12 歳の時の作品といわれる「孤児院ミサ」を指揮する。「孤児院ミサ」は珍しいので石川県立音楽堂に出掛けた。

カレル橋袂にある公園よりプラハ城を望む
 プレ・コンサートはモーツァルトによる「音楽の冗談」というホルン七重奏曲。演奏者が音を間違えたのかと思ったら、モーツァルトの冗談らしい。面白い曲であった。
 コンサート1曲目はモーツ ァルトの交響曲第38番「プラハ」。所謂「メヌエットなし」である。第1楽章Adagio - Allegroは、出だしゆっくりで、故マエストロ岩城を髣髴とさせる雰囲気で開始した。勿論その後は、テンポも戻り、8-6-4-4-2の弦楽5部は得意の モーツァルトを颯爽と演奏。OEKはこれ位がBestなのかもしれない。マエストロ・ロルフ・ペックの指揮も的確で、安定感抜群。第2楽章Andanteは、厳かな雰囲気のイントロが印象的。第3楽章Finale.Prestoは、イントロのホルンのユニ ゾンがスピード感溢れる演奏で出色。フィナーレもOEKの絶好調な演奏で終了した。但し、「孤児院ミサ」の合唱団用の座席の所為か、ティンパニーを舞台右手に配置したのは良くなかった。ティンパニーは、やはり中央から聞こえた方が 安心感がある。
 2曲目はソプラノのカロリーナ・ウルリヒさんによるモーツァルトのアリア。最初の曲は、シェーナ「どうしてあなたが忘れましょうか」とロンド「恐れないで愛する人よ」。カロリーナ・ウルリヒさんのコロラトゥーラぶりが 発揮された一曲。尚、この曲の伴奏にピアノも共演したが、これはモーツァルの趣向なのだろうか。次の曲は、アリア「あなたは恋で熱くなっているから誠実だけれど」。余り聞いたことの無い作曲家ガルッピのオペラ「ドリーナの結婚」に追加挿入された曲とのこと。 この曲も、カロリーナ・ウルリヒさんの熱演であった。

 休憩を挟んでいよいよ、モーツァルトによる「孤児院ミサ」ハ短調。Kyrieでは、出だしのテンポはやはり遅め。しかし、このテンポがミサ曲では良く似合う。合唱団は良く声が出ていたが、人数が多すぎて、重厚すぎた。私の実感では、 半数で良かったと思う。4月29日から始まるラ・フォル・ジュルネ金沢では、同じくマエストロ・ロルフ・ベックがシュレスヴィッヒ・ホルシュタイン音楽祭合唱団も引き連れて来沢し、ベートーヴェンの「合唱幻想曲」を演奏する そうだ。そのときの合唱団人数は多分少ない人員だと思われる。尚、ソリストの配置がアルトとソプラノで反対(アルトが舞台向かって左手)であったが。これは問題無し。但し、合唱団も舞台に向かって左手にアルトが配置されていたのかは不明。
 Gloria中間の"miserere nobis"では、合唱団が「ミゼリィーレ」と発音したのは適格。Gloriaフィナーレにはソプラノソロがあったが綺麗で、しかもその後の「アーメン」に至るフーガが立派。12歳の作品とは思えない、モーツァルトの 堂々としたフーガに感心。
 Credoでは、合唱団が「クリィード」と発音した。これは奇異。やはり、ラテン語読みでは「クレド」だと思う。Et incarnatus estでは、ソプラノとアルトのデュオが綺麗。そして、キリストが復活するEt resurrexit tertia dieの部分は、ソプラノが歌う。これはモーツァルの独創なのだろうか。Credoも堂々たるフーガとアーメンで終了。
 Sanctusでは、イントロのトロンボーン・ユニゾンが綺麗。
Benedictusは、ソプラノ・ソロが綺麗。
 終曲Agnus Deiではテノール・ソロが出色。dona nobis pacem(我々に平安を)で、40分の大曲が終わった。合唱団員が多すぎたのを除けば、マエストロ・ ロルフ・ペックの指揮は的確、ソリストは立派。OEKの弦楽部門の演奏も素晴らしく、立派な「孤児院ミサ」に仕上がった。

 アンコールは、時間の関係か、無し。さて、私事で恐縮だが、最近エマーソン弦楽四重奏団によるメンデルスゾーンの四重奏曲全集を聞き、感服している。アルバン・ベルグ弦楽四重奏団が解散するそうだ。従って、エマーソン弦楽四重奏団来日の折には、 是非金沢招致を石川県の音楽プロモータにお願いしたい。


Last updated on Feb. 24, 2008.
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