12月10日ベートーヴェン弦楽四重奏曲連続演奏会
ヴァイオリン:松井直、 竹中のりこ、ヴィオラ:石黒靖典、チェロ:大澤明
金沢市アートホール

酢谷琢磨

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 あのベートーヴェンのカヴァティーナがオ−ケストラ・ アンサンブル金沢(OEK)メンバーにより演奏されるということで、久し振りの金沢市アートホールへ出掛けた。

 コンサート1曲目はベートーヴェン:弦楽四重奏曲第5番。第1楽章Allegroは、ソロになると少々乱れも感じられたが、第2ヴァイオリン竹中のりこさんの内助の功あって上手く纏 まる。第1ヴァイオリンの松井直さんは高音のテクニックが素晴らしい。第2楽章Menuetto & Trioは、大澤明さんのチェロが快調。第3楽章Andante cantabileは、チェロと石黒靖典 さんによるヴィオラ・ソロが綺麗であり、瞑想的フィナーレも素敵。第4楽章Allegroは、快適で、華やかさが有り、弦楽4重奏の醍醐味を感じさせてくれる演奏であった。
 2曲目は、当初弦楽四重奏曲第13番の終楽章として作曲され、長大なため独立楽曲となった「大フーガ」変ロ長調。力感溢れるフーガで、これが13番の第6楽章に演奏されたら 弦楽四重奏に慣れた聴衆はさぞ驚いたと思われる曲想であり、力強い演奏であった。尚、中間部には綺麗な箇所もあり、カヴァティーナに期待を抱かせた。

 休憩を挟んで、弦楽四重奏曲第13番である。第1楽章Adagio non troppo - Allegroは、極端な強弱の変化が印象的。第2楽章Prestoは第1ヴァイオリン・ソロが中々のテクニックを披露。 ただし、違和感ある箇所も存在した。第3楽章Andante con moto, ma non troppoは、ピチカートが綺麗。第4楽章Alla danza tedesca. Allegro assaiは、舞曲風で軽やか。いよいよ ベートーヴェンが作曲した曲中で最も美しい曲の一つと言われる第5楽章Cavatina. Adagio molto espressivoが始まる。イントロは第2ヴァイオリンだったようだ。優雅で、たっぷり とした演奏であり、中間部への以降もスムース。祈りにも似た崇高な情感を体感できた。第6楽章Finale. Allegroはイントロでヴィオラ、チェロがリズムを刻み、ヴィオラの存在感 溢れる演奏であった。フィナーレも力感があり、堂々と終了した。

 アンコール曲は大澤さんの解説が良く聞き取れなかったが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第2番の第3楽章Scherzoらしかった。大フーガと比較 して纏まった、綺麗な曲であった。さて、総括である。ソロで少々乱れがあったものの、地元のオーケストラ団員でこれだけの弦楽四重奏曲を聴けることは僥倖であると感じたのは私だけでは あるまい。しかし、ソロの乱れについては、OEK団員にソリストが誕生するよう今後更なる研鑽を望みたい。


Last updated on Dec. 10, 2007.
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