11月30日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第232回定期公演PH
指揮:金聖響、ピアノ:清水和音
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

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 金聖響マエストロとオ−ケストラ・ アンサンブル金沢(OEK)によるブラームス・チクルス第3弾。ロマンチシズム溢れるブラームスの交響曲第3番とピアノ協奏曲第2番である。第1弾が凄かっただけに、第3弾も期待 すると共に、ピアノ協奏曲第2番第1楽章ホルンのイントロが成功すること、並びにN響のアメリカ公演でもあった第1楽章終了時の拍手が無いことを祈りつつ、 石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレコンサートは新団員であろう馴染みの無い楽団員の四重奏であり、1、2曲目の曲名は分からなかったが、3曲目はピアソラ。短いが、軽快な演奏で素敵であった。
 さて、コンサート1曲目はブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」。弦楽5部は8-8-6-5-4であったと思うが、少々遅いテンポでスタート。ffになると、固い感じで、第1ヴァイオリン 奏者を2人増員させ10-8-6-5-4とすればより良くなると感じられる演奏。しかも、新団員加入の所為か、乱れた箇所があったり、管楽器が最初の音を遠慮気味に演奏し、もう少し 堂々と演奏すればと思わせる箇所もあり、違和感少々。終曲のパッサカリアは、好演の部分と違和感の部分とがあり、コンサート当日のリハーサル不足を露呈する内容。
 2曲目は、ブラームスの交響曲の中で最も短い第3番。第1楽章Allegro con brioの最初のffは、固い出だし。ところが第1楽章中間部から急に良くなった。この理由は分からない。 しかし、弦楽5部のアンバランスが突如解消されたのである。第2楽章Andanteは順調。第3楽章Poco Allegrettoは、例の葬送行進曲にも似た旋律が綺麗。但し、ホルン・ソロの恐る恐る の出が違和感。第4楽章Allegroは、高揚する部分が中々であり、フィナーレ近くのトロンボーンのユニゾンも素敵。フィナーレは、pで余韻を残し、無事終了。第1楽章中間からなんとか 纏まったとはいえ、この前の交響曲第1番に比較すると、駄作であったと言える。

 休憩を挟んで、ブラームスのピアノ協奏曲第2番である。第1楽章Allegro non troppoは、イントロにおけるホルン・ソロの半音が成功。ffの部分は固かったが、後は順調。第2楽章 Allegro appassionatoは、プレトークで言及された清水和音さんによるピアノのsotto voceでの演奏箇所もスムース。第3楽章Andanteは、大澤さんのチェロが綺麗。大澤さんのチェロは ヨーヨー・マに似て明るい。夢見心地の箇所も素敵。第4楽章Allegretto grazioso - Un poco piu prestoは、モーツァルトの「春の憧れ」にも似た心地良さ。この楽章は、ブラームスの イタリア旅行の印象だそうで、明るく、フィナーレのしっかりとした終楽章。出色とは言えないが、好演であった。尚、第1楽章終了時の拍手は杞憂となった。

 アンコール曲は清水和音さんによるブラームスの間奏曲118-2とのこと。骨組のしっかりした曲を丁寧な演奏で聞かせてくれた。終了は9時20分頃となった。
 さて、総括である。日本のコンサートではドイツ式に交響曲で終わる例が多い。しかし、初期のイタリア・オペラ、オラトリオでは序曲(Sinfonia,伊)又は間奏曲(Symphony,英)として交響曲 を挿入することが一般的であった。例えばグルックの歌劇「パリデとエレナ」、ヘンデルの「メサイア」等がその例である。この序曲又は間奏曲がドイツで発展し、ハイドンによる4楽章構成 の交響曲に発展した訳である。以上の理由により、交響曲が先に来てフィナーレにピアノ協奏曲を設定した金聖響マエストロのプログラム構成は奇妙ではない。しかも、ブラームスの交響曲 第3番はpで終わること、及びピアノ協奏曲第2番は4楽章を有する交響曲に匹敵する曲だけに尚更である。
 但し、問題点は、(1)演奏会当日のリハーサルを入念に実施すること。(2)演奏時間が長すぎた。即ち「ハイドンの主題による変奏曲」は要らない。(3)第1ヴァイオリンの定員を2名増やす ことの3点を指摘したい。
 次回は、更にロマンチシズム溢れるブラームスの交響曲第4番である。第4番もさることながら、その後何を選択するのであろうか?ブラームスの第5番の交響曲といわれるシェーン ベルグ編曲ピアノ四重奏曲第1番管弦楽版を聞かせてくれるだろうか?興味津々の金聖響マエストロである。


Last updated on Nov. 30, 2007.
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