11月5日オ−ケストラ・アンサンブル金沢第231回定期公演PH
指揮:ギュンター・ピヒラー、ギター:村治佳織
石川県立音楽堂コンサートホール

酢谷琢磨

English
スマホ版へ

 ギュンター・ピヒラー・マエストロによるバルトークのディヴェルティメントが演奏される。ディヴェルティメントではハイドンの弦楽三重奏曲、モーツァルト、ベートーヴェンの 七重奏曲などが有名である。しかし、バルトークは珍しい。オ−ケストラ・ アンサンブル金沢(OEK)にとってバルトークは得意な作曲家の部類に入るだろう。期待の裡に 石川県立音楽堂へ出掛けた。

 プレコンサートは、「プリムローズ弦楽四重奏団のチェロ奏者ハーヴェイ・シャピーロの思い出」と題して、モーツァルト:弦楽四重奏曲第19番「不協和音」の第1、4楽章が 演奏された。昨日(11月4日)、BSハイビジョンでギュンター・ピヒラー率いるアルバン・ベルグ弦楽四重奏団がハウベンストック・ラマティ:「弦楽四重奏曲第2番 “クリスティ・ ジンメールの思い出”」と題する曲を演奏していた。この曲は、現代的で、もう一度じっくり聞いてみたい感じの曲であった。これに反して、「ハーヴェイ・シャピーロの思い出」 に何故モーツァルトなのかよく分からない。バルトークがメインだけに、モーツァルトを事前に聞かせておこうという作戦だったのかもしれない。
さて、コンサート1曲目はロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」序曲。ギュンター・ピヒラー・マエストロは「ためを作る」指揮で中々綺麗。マエストロも板に付いてきた感じ。 2曲目のロドリーゴ「アランフェス協奏曲」は、村治佳織さんのギターが冴えわたる。第1楽章Allegro con spiritoは、8-6-4-4-2構成の弦楽5部とマッチし素敵。第2楽章Adagioは 例のイントロの哀愁を帯びたオーボエとギターのデュオが綺麗。しかも、終わり近くのギターのカデンツアも中々のもの。第3楽章のAllegro gentileはストリングスが絶妙。 アンコールは「アルハンブラの想い出」とディアン:「タンゴ・アン・スカイ」という曲。「アルハンブラの想い出」が出色であった。

 休憩を挟んでバルトークの小品「ルーマニア民族舞曲」。プログラムには第5曲「ボアルカ・ロネアスカ」、第6曲「マルンツェル」とあったが、第5曲から第6曲への移行箇所が 不明瞭で、曲の終わりがはっきりしない曲であった。しかし、フォークロアを感じさせる逸品ではあった。4曲目は同じくバルトークの「弦楽オーケストラのためのディヴェルティメント」。 第1楽章Allegro non troppoでは、ギュンター・ピヒラー・マエストロ指揮の成果であろうワルツの部分が優雅。第2楽章Molto adagioでは、第1ヴァイオリンとヴィオラのデュオが綺麗。 第3楽章Allegro assaiはCodaの部分を含めて迫力ある演奏。OEKにスピード感が備わってきたと思わせる演奏であった。

 アンコール曲は村治佳織さんが2曲演奏したためか、無し。尚、バルトークのディヴェルティメントはOEKと同規模のイギリス室内管弦楽団でも取り上げられている。しかし、イギリス室内管弦楽団では、この前のシューベルトの大編成用交響曲「グレート」等はプログラムに無い。 即ち、OEKは室内楽に徹するか、それともパイプオルガンを備えた大ホールにマッチする交響楽団に変身するのか、その岐路に立たされていることだけは 間違いないようである。


Last updated on Nov. 05, 2007.
2007年コンサート・レビューへ